毎年、春になると体調不良になりやすいので憂うつ……そんな人も多いのではないでしょうか。本コラムでは、春の季節の変わり目で体調不良になる原因と症状、体調不良を予防する対策などについて解説します。
目次
春の季節の変わり目で体調不良になる原因は?
季節の変わり目で体調不良を訴える人は多いですが、その原因は体質や生活環境などによってさまざまです。主な原因としては、次の5つが挙げられます。
- 寒暖差
- 気圧の変化
- 日照時間の変化
- 生活環境の変化
- 花粉症
※参照:日本調剤「季節の変わり目は要注意!「春バテ」に気をつけよう【栄養だより2020年4月号】」、山梨県厚生連「季節の変わり目にご注意を!~春の体調不良の予防と対策~」
●原因1:寒暖差
春の季節の変わり目は、寒い日と暖かい日を繰り返しながら徐々に気温が上がっていきます。また1日で見ても「昼間は暖かいのに朝と夜は冷える」ということも少なくありません。このような寒暖差に対応するため、私たちの交感神経(体を活発にする神経)が活発に働きやすくなる傾向です。その結果、普段より多くのエネルギーが必要となり、疲れやだるさを感じやすくなります。
●原因2:気圧の変化
気圧の変化が頻繁に起こることも春の気候の特徴です。特に低気圧のときには、頭痛がしたり気分がすぐれなかったりする人も多いのではないでしょうか。気圧の変化が激しいと自律神経の切り替えがスムーズにいきにくくなります(自律神経については詳しくは後述)。加えて低気圧のときは、血液中の酸素濃度が低くなりやすいため、眠気や体のだるさを感じやすくなる傾向です。
●原因3:日照時間の変化
春になって日照時間が急激に増えると、生活のリズムが狂って体調不良を起こしやすくなります。例えば気象庁が公表している東京都の1ヵ月あたりの日照時間を見てみると2023年3月は164.1時間、同年4月は197.2時間と30時間以上も増えています。これだけ日照時間に変化があると、起床時間や就寝時間が影響を受けやすく睡眠時間が短くなると体調不良を起こしやすくなります。
●原因4:生活環境の変化
春は「変化の季節」といわれます。自分や家族の生活に大きな変化(入学、卒業、就職、引っ越しなど)があると緊張感やストレスを感じやすく、それが自律神経の乱れにつながりがちです。また賃貸オーナーであれば、春は入居者の入退去が発生しやすい時期のため、多忙で体調を崩すこともあるかもしれません。
●原因5:花粉症
春の体調不良といえば、国民病と呼ばれる「花粉症」が原因ということも多いのではないでしょうか。花粉症の3大症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」です。このほかの症状として、アレルギー性結膜炎、せき、喉のかゆみ、肌荒れ、頭痛などを訴える人もいます。花粉症は、花粉を異物と体が誤って認識することで発生するアレルギー反応です。
さまざまな植物の花粉が症状を引き起こしますが、春に多いのはスギ花粉症です。鼻アレルギーの全国疫学調査(2019年)によると、スギ花粉症の有病率の割合は全体の38.8%を占めます。気になるのは、同調査のスギ花粉症の有病率が急激に増えていることです。スギ花粉症の有病率を1998年と2019年で比較すると約2.4倍にも増加しています。
【スギ花粉症の有病率の割合】
・1998年:16.2%
・2008年:26.5%
・2019年:38.8%※出典:一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「花粉症の治療最前線」
春の体調不良を予防するために、自律神経を整えることを意識しよう!
春の変わり目の体調不良を予防するには「自律神経の働き」に着目するのが効果的です。そもそもよく耳にする「自律神経」とは何でしょうか。自律神経とは、私たちの意思とは関係なく365日24時間働き続ける神経のことです。自律神経は全身に張り巡らされており、生命活動を維持するための呼吸、体温、血圧、心拍、消化などを支えています。
この自律神経に乱れがあると、上述したような体調不良が起きやすくなるといえるでしょう。自律神経は、アクセルの役目を果たす「交感神経」とブレーキの役割を果たす「副交感神経」のバランスで成り立っています。それぞれの主な働きは、次の通りです。
神経 | 役割 | 働き |
---|---|---|
交感神経 | 活動をするときに働く | 心拍数増加、汗を出す、脳血管を収縮させるなど |
副交感神経 | リラックスするときに働く | 心拍数減少、脳血管を拡張させる、排尿・排便促進など |
春の季節の変わり目で体調不良を予防する方法とは?
各機関や医療法人などでは、自律神経を整えて体調不良を予防するための方法として、以下の内容を挙げています。春に体調を崩しやすい人は実践してみましょう。
バランスのよい食生活を心がけよう
食事を取ること自体が自律神経によい影響を与える傾向があります。食事をすると消化のために副交感神経が活発に働き、リラックスしやすくなります。ダイエットなどで食事を抜くと逆に交感神経が優位になって自律神経が乱れやすくなるため、注意しましょう。
せっかく食事をするなら、自律神経の働きにプラスの効果が期待できる栄養素を摂取すると効果的です。おすすめ栄養素には、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンE、カルシウムなどがあります。
おすすめの栄養素 | 左記の栄養素を多く含む食材 |
---|---|
ビタミンA | 豚肉、鶏肉、うなぎ、鮭、人参 |
ビタミンB1 | 豚肉、かつお、卵、玄米ごはん、にんにく |
ビタミンC | イチゴ、柑橘類、キウイ、パプリカ、ブロッコリー |
ビタミンE | 大豆製品、ナッツ類、ほうれん草、ブロッコリー |
カルシウム | 大豆製品、乳製品、小魚、小松菜 |
有酸素運動をムリなくしよう
有酸素運動をすると、自律神経のバランスを整える成分「セロトニン」が分泌されやすくなります。
<代表的な有酸素運動>
- ランニング
- サイクリング
- 水泳 など
とはいえ、普段運動していない人が負荷のかかる運動をいきなりすると体を傷めやすいため、まずはウォーキングから始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、だらだら歩いても有酸素運動の効果が少ないため、「歩幅を広げる」「早足で歩く」「坂道を歩く」などを意識して実行することが大切です。
※参照:山梨県厚生連「季節の変わり目にご注意を!~春の体調不良の予防と対策~」
毎日、一定の睡眠時間を確保しよう
食生活や運動に加えて睡眠の質も自律神経に大きな影響を与えます。理想的な睡眠時間については個人差がありますが、一般的な目安は6~7時間程度です。ただしこれは、あくまでも目安のため、自分にとってベストな睡眠時間を確保することが大切です。
また毎日一定の睡眠時間を確保することも重要です。例えば、休日は十分寝ているけれど平日は寝不足気味……このようなライフスタイルだと睡眠を十分取ったとはいえません。
※参照:社会医療法人 博友会「自律神経を整える5つの方法!カギは睡眠に有り」
浴槽で体を温めよう
入浴する際、シャワーだけで済ませるよりもバスタブにつかって体を温めるほうが自律神経によい影響が期待できます。なぜなら、お風呂でしっかりと体を温めると以下の流れで理想的な眠りにつきやすくなるからです。
皮膚温度が上がる 手足の毛細血管から熱が発散される 体の深部の体温が下がって入眠しやすくなる
入浴するタイミングと温度も意識しましょう。就寝する90分前に40度のお湯のバスタブに約15分つかるとリラックスの効果が期待できます。
※参照:社会医療法人 博友会「自律神経を整える5つの方法!カギは睡眠に有り」
花粉症の症状にも自律神経が影響を及ぼす
花粉症の症状を和らげるには、接触する花粉量を減らしたり家に入る前に花粉を払い落としたりするのが有効です。
自律神経も症状に影響を与える可能性があります。特に要注意なのが起床直後に花粉症のひどい症状が現れる「モーニングアタック」です。自律神経は、目覚めたあと「副交感神経」優位から「交感神経」優位へと徐々に切り変わっていきます。交感神経は、血管を収縮させて鼻水を抑える働きがありますが、起床直後はうまく働いていないため、モーニングアタックが起きやすいと考えられます。
モーニングアタックを緩和する対策としては、目が覚めてもすぐに起き上がらず、布団の中で指先などを動かすのが有効とのことです。これにより交感神経の働きが活発になるでしょう。
もちろん以下のような基本的な花粉症対策をしっかりと行うことも大切です。
- マスクをする
- 加湿器や空気清浄機を使う
- 部屋のお掃除をする など
※参照:医療法人かくいわ会 岩野耳鼻咽喉科サージセンター「くしゃみが止まらない原因と治療法」
早めの行動で季節の変わり目を乗り切ろう!
本コラムで紹介した春の体調不良を予防するための対策は、具合が悪くなってから行っても効果は限定的です。そのため具合が悪くなる前から食事・運動・睡眠・お風呂などの対策を心がけましょう。
また毎年決まった症状の体調不良が発生する人は、放置せずにかかりつけ医への早めの相談も欠かせません。