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遺産分割協議で相続財産についての分配の方法を定めた場合には、遺産分割協議の内容を書面として残さなければなりません。

これを「遺産分割協議書」と呼びます。

遺産分割協議書は、相続人同士の契約書の役割と、相続人以外の人に対する証明書の役割を果たします。

さまざまな相続手続で必要になるとても重要な書面で、その作成方法についても決まりがあります。

この記事では、遺産分割協議書の作成方法のポイントについてまとめます。

遺産分割協議書を作成する前に知っておきたいこと

遺産分割協議書を作成する前に、遺産分割協議の内容に漏れがないか見ておきたい点があります。

遺産分割協議書の作成のときになって、「ここを見落としていた!」と後々トラブルになることがないよう、この時点で改めて確認しておきましょう。

相続人から寄与分の主張はないか?

「寄与分」とは、相続人の中に、被相続人の生前にその財産の増加や維持に寄与(貢献)した者がいれば、相続の際にその分の権利を反映しようという制度です。

一般的にどういったものが寄与になるかですが、「被相続人の事業に関しての、労務の提供あるいは財産上の給付」「被相続人の療養看護」が挙げられます。

また、ただ単にこういった行為を行っただけではなく、「①その行為によって被相続人の財産の維持又は増加があり」「②寄与行為のお陰で財産が維持し又は増加したといえ」「③その行為が特別の寄与である(通常期待されている以上の行為であった)こと」が必要となります。

相続人の特別受益を考慮する必要はないか?

「特別受益」とは、複数いる相続人の一部が、被相続人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益のことです。

「特別受益の持戻し」を行うと、特別受益を受けた相続人が遺産分割協議によって相続できる価額から特別受益で得た財産の価額が差し引きされます。

特別受益となるものには、「遺贈」「死因贈与」「生前贈与のうち、婚姻・養子縁組・生計の資本のいずれかのために受けたもの」があります。

なお、この特別受益の持戻しに関しては、被相続人の遺言等があれば免除することができます。

遺産分割協議書はこうやって書けば大丈夫!

遺産分割協議書には、最低限、以下の内容を記載する必要があります。

  1. 被相続人の氏名・死亡日・死亡時の住所・死亡時の本籍地

  2. 相続財産のうち、何を、誰が、どのように取得するのか(具体的に)不動産に関する記載内容:登記事項証明書の表題部の記載を引用して特定(土地であれば、所在・地番・地目・面積等。建物であれば、家屋番号・構造・面積等)銀行預金に関する記載内容:金融機関名・支店名・口座の種別・口座番号・口座名義人を引用して特定

  3. <代償分割をする場合>誰がいくらの代償金を支払うのか、代償金の支払期限(具体的に)

  4. 相続人全員の署名(自筆)

  5. 相続人全員の実印の捺印

また、遺産分割協議書が2枚以上に及ぶ場合には、合綴し、2枚以上あることの証として書面と書面のつなぎ目に契印を押します。

契印を行うことで、遺産分割協議書が勝手に差し替えられたり抜かれたりしてしまうことを防ぎます。

誤字・脱字等の訂正方法に要注意

遺産分割協議書の記載に誤字・脱字があった場合の修正方法も厳密に決められています。

以下の2通りのどちらかの方法で訂正してください。

(1)訂正箇所の近くに訂正内容を記載する

  1. 訂正箇所に二重線を引く
  2. 二重線を引いた箇所の上に直接訂正印を押印(相続人全員の実印)
  3. 訂正箇所の近くに修正後の文言を記載する

(2)欄外に訂正内容を記載する

  1. 訂正箇所に二重線を引く
  2. 訂正箇所の近くに修正後の文言を記載する
  3. 欄外に訂正印を押印(相続人全員の実印)
  4. 訂正印の近くに「〇字削除〇字加入」と記載する

変更したい箇所に線を引いたり、修正後の文言を追記しただけでは変更部分は無効になってしまいますので要注意です。

修正箇所が多い場合には作成し直す方がよいでしょう。

遺産分割協議がまとまらないときの対処方法は?「遺産分割調停」

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。

そのため、相続人のうちの一人でも協議内容に合意しない場合は遺産分割協議が永遠に成立しないことになります。

このような場合に取る手段として、家庭裁判所による「遺産分割調停」があります。

遺産分割調停では裁判官と調停委員が各々の相続人から事情を聴取し、提示させた関係資料の確認や相続財産の鑑定を行いながら合意を促す話し合いが執り行われます。

遺産分割調停は申立書の提出から

遺産分割調停を行うには、まず家庭裁判所へ申立書を提出するところから始まります。

申立書の提出先 調停の相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
提出できる者 相続人、包括受遺者等
必要書類等 1.申立書(裁判所窓口、裁判所のウェブサイトからダウンロード) 1通及びその写しを調停の相手方の人数分
2.被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
3.相続人全員の戸籍の謄本
4.相続人全員の住民票、または戸籍の附票
5.遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写しまたは残高証明書,有価証券写し等)
手数料等 収入印紙1,200円分、返信用の郵便切手

以下に申立書のサンプルを載せます。

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引用:裁判所ホームページ「遺産分割調停申立書」 http://www.courts.go.jp/vcms_lf/2019_isan_mousitate_538kb.pdf
また、遺産分割調停のスケジュールですが、おおよそ1ヵ月に1回ほどのペースで調停の期日が設けられます。

調停期日に合意内容がまとまらなければ次回の期日が開催される、といった流れになるため、調停が終了するにはある程度の時間がかかります。

一般的には終了するまでに1年前後と言われているため、長期化することを想定しておいたほうがよいでしょう。

また、相続税の申告期限には注意を払っておきましょう。

遺産分割調停もまとまらない場合は……

遺産分割調停を行っても一向にまとまらない場合には、裁判官が裁定する審判手続へ移行します。

審判においては、相続財産の性質や権利の種類、状況等の一斉の事情をもとに裁判官が分配方法を決めていきます。

まとめ

遺産分割協議書は、相続人同士にとっては契約書の役割を、相続人以外の人に対しては証明書の役割を果たす非常に重要な書面です。

遺産分割の内容に抜け漏れはないか、財産の特定は明確か、書面として有効に成立しているか等慎重に進めていく必要があります。

後々のトラブルを抑止したい場合や、相続人全員の協力を取り付ける手間を省きたい場合には、最初から相続の専門家にお任せしてしまうのも一つの手です。
(提供:相続サポートセンター