1月28日、ニジェール、マリ、ブルキナファソの3か国は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)について「特定の外国勢力が背後にある」と欧米を牽制し、ECOWASからの脱退を表明した。3国はいずれもクーデターによる親ロシア政権下にあり、サヘル地域の不安定化と更なる強権化が懸念される。31日、タイの憲法裁判所は王室に対する不敬罪法の改正を訴えた最大野党の主張を違憲と判断、これにより王室改革に関する議論は封じられる。タイにおける言論の自由は実質的に後退したと言って良いだろう。
今年は世界で重要な選挙が相次ぐ。問われているのは民主主義の未来だ。1月、野党が棄権する中で行われたバングラデシュの総選挙は独裁色を強める与党が圧勝した。続く台湾の総統選挙は中国と一線を画す民進党候補が勝利、民主主義の牙城は守られた。2月はインドネシアの大統領選挙だ。庶民派として人気の高い現政権であるが、親族主義への回帰や政権批判に対する統制強化といった側面も指摘される。自由で公正な選挙が実施されることを願う。3月には “結果ありき” とは言え、ロシア大統領選挙がある。翌4月~5月にはインド総選挙が控える。ヒンズー至上主義を掲げる与党の排他的な動向が気にかかる。そして、11月のアメリカ大統領選挙、懸念は言わずもがなである。
昨年11月、スウェーデンに本部を置く国際NGO「民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)」が173ヵ国の民主主義のパフォーマンスを指数化したThe Global State of Democracy Initiativeを発表した。レポートは「民主主義は世界で停滞し、多くの地域で後退している」としたうえで、選挙、議会、独立した裁判所など民主主義を守るべき機能が綻びをみせており、法の支配の維持に支障が生じている、との懸念を表明する。
さて、日本の衆議院の任期満了は来年10月だ。解散総選挙は年内との見方もあるが、目下の課題は政策以前、「政治とカネ」に端を発する政治改革だ。とは言え、問題の本質は単に “政治家” とカネの問題であり、要するに政治家による組織的な脱税である。また、政治資金収支報告書への不記載は、民間であれば有価証券報告書の虚偽記載であり金融商品取引法違反に相当すると言っていいだろう。法を作る者が、法の精神を蔑ろにし、自らの責任を回避し、また、それが看過されるのであればまさに政策以前、民主主義以前と言える。IDEAは民主的な健全性を示す指標は「市民空間の規模」であるという。果たしてそうした空間はどこまで広がっているのか。試されているのは私たち主権者である。
今週の“ひらめき”視点 1.28 – 2.1
代表取締役社長 水越 孝