相続サポートセンター
(画像=相続サポートセンター)

相続が発生したとしても必ずしもプラスの遺産ばかりというわけではありません。

相続は被相続人の権利義務の一切を承継するわけですから、マイナスの遺産を背負うことにもなりかねないのです。

このような負債を相続する方法から逃れるにはどのようなものがあるのでしょうか?主立ったものとして相続放棄と限定承認という手続があります。

この記事では、2つの手続について比較していきたいと思います。

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の相続する対象は資産より負債の方が多い、または被相続人や相続人と関わりを持ちたくないような場合に利用される制度です。

被相続人が死亡したことを知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。

以下、具体的な手続について見ていくことにしましょう。

管轄

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 (注意点)相続人の住所地の家庭裁判所ではありません。

申立人

相続放棄をする相続人 (注意点)未成年者の場合は、親権者が法定代理人として相続放棄を行います。

必要書類

誰が相続放棄をするかで、必要となる書類が変わります。

必ず求められる書類

①相続放棄の申述書
②被相続人の住民票除票又は戸籍付票
③放棄する人の戸籍謄本

放棄する人が配偶者の場合

④被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、原戸籍含む)

放棄する人が子、孫の場合

①から④に加えて

⑤孫が放棄する場合は、本来の相続人である子の死亡の記載のある戸籍謄本(出生から死亡まで。除籍、原戸籍含む)

放棄する人が直系尊属の場合

①から④に加えて

⑥子や孫で死亡している人がいる場合、その旨の記載がある戸籍謄本及びその子や孫の出生から死亡までの記載のある戸籍謄本等(除籍、原戸籍含む)

放棄する人が兄弟姉妹の場合

①から④、⑥に加えて

⑦被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等(除籍、原戸籍を含む)

⑧放棄する人が甥、姪の場合は、本来の相続人である兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本等(除籍、原戸籍含む)

引用元:裁判所ホームページ「相続放棄申述書」http://www.courts.go.jp/vcms_lf/2019_souzokuhouki_m.pdf

手数料

①収入印紙800円分
②切手管轄家庭裁判所によって切手の内訳が変わります。

申立を窓口でする場合は、受付時にその内訳を教えてくれます。

郵送で家庭裁判所に申立する場合は、管轄の家庭裁判所に事前に確認して下さい。

注意点

必ず被相続人の死亡を知った時から3ヵ月以内にする必要がある?

必ずしも被相続人死亡を知った時から3ヵ月以内である必要はありません。

自分が被相続人の相続人であることを知ったときからになります。

例えば、先順位の相続人が相続放棄をすると、相続の順位が変わってきます。

もし、子どもが相続放棄をし、親が死亡していて自分(兄弟)に相続権があることを知ったという状況であれば、自分が相続権を引き継いだ事実を知った時からカウントします。

被相続人死亡が3月1日、子どもが相続放棄を4月1日にして、8月1日に子どもが相続放棄をしていたことを知ったというのであれば、その8月1日から3ヵ月をカウントすることになります。

この際、被相続人の死亡から3ヵ月が経過しているので、その知った理由を家庭裁判所に説明しなければなりません。

相続放棄をする場合、被相続人の兄弟に伝えるべき?

法的な義務はないですが、伝えておいた方が良いでしょう。

もし相続放棄をして次順位の相続人に相続権があるとわかると、大抵の方はあわてふためきます。

また、上記の必要書類を見てもわかるように、兄弟姉妹が相続放棄をするとなると準備する書類の量も多くなってきます。

これを短い期間で集めるとなるとなかなか困難を伴いますので、事前に相続放棄する旨を伝えるか、あるいは一緒に相続放棄の申立を行う方が後々のトラブル防止に繋がります。

限定承認とは

これまで相続放棄の手続について見てきました。

この手続は専ら負債が多くて相続したくない場合に利用されるものです。

とはいえ、相続の中にはプラスの財産の方が多いのか、それともマイナスの財産の方が多いのか判然としない場合があります。

このように、プラスの財産は相続したいけれどマイナスの財産は相続したくないといった場合に、利用できる手続はあるのでしょうか? 以上のような状況で利用する形態としては限定承認という方法があります。

それでは、限定承認とはどのような手続なのか解説します

手続方法

この手続をするには、家庭裁判所で申述しなければいけません。

申述人

相続人全員で行う必要があります。

相続放棄をした人がいれば、その放棄をした人以外の全員です。

期間

相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内

管轄

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

必要書類

必ず求められる書類

①限定承認の申述書
②被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)
③被相続人の住民票除票又は戸籍付票
④申述する相続人全員の戸籍謄本
⑤被相続人の子で死亡している人がいる場合は、その子の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)

申述する人が直系尊属の場合

①から⑤に加えて

⑥被相続人の直系尊属で死亡している人がいる場合、その直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)

申述する人が兄弟姉妹の場合

①から⑤に加えて

⑦被相続人の父母の出生時から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)
⑧被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)
⑨被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)
⑩代襲者の甥姪で死亡している人がいる場合、その死亡の記載がある戸籍謄本(除籍・原戸籍含む)

費用

①収入印紙800円分
②切手

相続放棄同様、家庭裁判所によって異なります。

各家庭裁判所で確認する必要があります。

その後の流れ

家庭裁判所で申立を行うと、限定承認したことなどを官報に公告しなければなりません。

その後、管理人を選任して弁済等の手続に進んでいきます。

さいごに

ここまで相続放棄と限定承認について見てきました。

相続をするかしないか、この局面で重要になるのは遺産がどれだけあるのかです。

ここをまず把握して、相続放棄を行うか、限定承認を行うかを検討していきましょう。

限定承認は相続人全員でしなければならず、話がまとまらない可能性があります。

もし負債があることがわかっているのであれば、プラスの財産を相続できないデメリットはありますが、相続放棄をするのも一つの方法になるのかもしれません。
(提供:相続サポートセンター