相続が発生したとは言うものの、何から手をつけたらいいのかわからない、そもそも亡くなる前は病院を行ったり来たりするなど、することがいっぱいあって遺産が何処にあるのかなど聞き出す余裕はほとんどないのが実情です。
それでは、相続する財産を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?そして相続する(相続しないを含む)場合はどのような手順で手続等が進んでいくのでしょうか?
この記事では、前半で相続財産を探す手がかりを、後半で相続手続についてチャートを用いて解説していきます。
相続財産の探し方
相続財産はどこにあるのか
まず、相続財産の探し方について見ていきましょう。
相続財産となるものはいろいろありますが、主立ったものは現金、預金、株式、保険、不動産、高額な動産等が挙げられます。
被相続人からその所在場所等を聞いていたような場合は問題がありません。
問題となるのは、そのような遺産がどこにあるのかわからない場合です。
成年後見人が就いていた場合
このような場合でも、故人に成年後見人が就いていたような場合は比較的問題は早期に解決することでしょう。
というのも、成年後見人は成年被後見人の財産等を管理する立場にあり、財産の所在等を把握しているからです。
成年被後見人が死亡した場合は後見人の任務終了となりますので、財産目録等を受け取り、また経過の報告を受けて後見人が保管していた財産を引き継ぐ形になります。
ただ、このような場合は手続的な問題ではありますが、相続人全員の同意を得る、または相続人全員の署名押印を求められるような場合があります。
成年後見人が就いていない場合
では、成年後見人が就いていないような場合で財産の所在がわからないといった場合、何を手がかりに探せばいいのでしょうか?
(1)自宅のどこを探せばいいか?
この場合、まずは被相続人がどこに生活の本拠を有していたのかを把握する必要があります。
まずは自宅。
被相続人の自室をくまなく探してみましょう。
可能性が高いのは、被相続人の机の引き出しや鞄の中、あるいは仏壇の引き出しです。
預金通帳やキャッシュカード、クレジットカード、そして実印等が出てくる場合があります。
また、郵便物はどこから来ているのか把握しておいて下さい。
金融機関等から来ているものの年数の経った古い郵便物等は、意味のない可能性がありますが、休眠口座になっている、あるいは本人も忘れていた財産である場合もありえます。
亡くなった前後に来ている本人宛の郵便物は、本人が保有又は利用している可能性が高くなりますので、それを手がかりに相手先に電話をして確認するのも有効でしょう。
仏壇の引き出し等には権利証が入っているかもしれません。
(2)自宅以外の場所
自宅ではありませんが、貸金庫を利用していれば貴重品が置かれている可能性が高いです。
貸金庫を開けて中を確認しましょう。
ただこの場合は、利用者以外の方が貸金庫を開ける形になりますので、相続の書類(戸籍等)が必要になります。
加えて、銀行によっては相続人全員の立会いを求める所がありますので、貸金庫を開ける場合は事前に銀行や相続人の方と連絡を取るようにして下さい。
その他としては、市役所の固定資産税課が挙げられます。
毎年来る市役所からの納税通知で被相続人の所有不動産を把握することは可能ですが、評価の低い不動産はそもそも税金がかかりませんので、納税通知だけでは見落とす場合があります。
名寄せ帳の写しなどを請求して見落としている不動産がないのか確認して下さい。
名寄せ帳で物件の所在を確認したら、次は法務局で登記事項証明書を取得してみましょう。
その際、「共同担保目録付き」という形で不動産の登記事項証明書を請求して下さい。
もし、その不動産に抵当権等の担保が付いていた場合は、他に担保となっている不動産がこの共同担保目録に記載されます。
名寄せ帳はその自治体で所有している不動産しか把握できないので、この目録を付けることで他の自治体にある物件を発見できるかもしれません。
さらに、証券会社や自宅近くの金融機関で確認することも場合によっては必要です。
可能であれば前住所の近くの金融機関にも当たってみましょう。
そこで開設した口座がまだ残っているかもしれません。
ポイント(社内メモ:背景色を変えるなど目立つようにお願いいたします。)
・自宅の机の引出・鞄の中・仏壇の引出等を探してみよう
・故人宛に届いた郵便物の中身をチェック
・不動産調査の場合、市役所で名寄せ帳の写しを、法務局で登記事項証明書を取り寄せよう
・場合によっては、前住所の近くの金融機関も調べてみよう
相続手続について
ここまで、相続する財産の有りそうな所について検討してきました。
それでは、上記で見つけた遺産を取得する又は取得しないと決めた場合、事後の手続はどのようにしていくのでしょうか?ここでは、相続手続の概要について見ていくこととします。
相続するか放棄するか
最初の判断は、被相続人の遺産を相続するのか放棄するのか、です。
故人の遺産が資産よりも負債の方が多ければ、相続する実益は乏しいでしょう。
このような場合は被相続人の死亡を知った時から3ヵ月以内であれば家庭裁判所に相続放棄を申し立てることが可能です。
この手続が受理されると相続人ではなかったものとみなされるので、資産も負債も相続することはありません。
ただし、自分が相続人であることを知りながらプラスの遺産を隠して相続放棄したような場合、相続放棄は認められませんのでご注意下さい。
この相続放棄をするかしないかの判断材料としては、不動産の登記事項証明書や金融機関から来る通知で残債務が記載されたようなものが一つの目安となります。
不動産の権利関係を見て抵当権や根抵当権、または差押えがついていたらマイナスの遺産が多いことがわかります。
金融機関の通知だけでは判断が難しい場合、信用情報機関で照会をかける方法があります。
消費者金融系・銀行系・信販系と大きく3つに分かれていますが、そこで故人の残債務を把握するのも有用でしょう。
遺言はあるのか確かめよう
次に相続するとして、遺言があるのかを確かめなければなりません。
遺言がない場合は法定相続人全員で共同相続するか遺産分割の協議をして遺産分けする流れとなりますが、遺言はそれらの手続に優先しますので、まずはその有無を確認する必要があります。
生前に遺言を書いていたという話があればその所在場所を確認しましょう。
なければ前段で紹介した机の引き出しや貸金庫等を調べることになります。
公正証書遺言の場合でしたら、たとえ故人が無くしていても公証人役場に保管されていますので、公証人役場から取り寄せます。
2020年7月以降では自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度がスタートしますので、法務局で確認する作業が一つ増えることになります。
遺産分割協議
遺言がない、遺言はあるけれど書かれている遺産以外に財産がある、このような場合は法定相続するか遺産分割の話し合いをして遺産を分ける手続に進みます。
この遺産分割協議は全員でしなければいけません。
遠方である、または仲が悪い、というような事情からその相続人を外した協議は無効になります。
この遺産分割協議でこの預金をAが、この株式をBが、不動産をCがというように決めていき、協議したことを証明するために書面にまとめます。
この協議書が遺産分割協議書と呼ばれる書類で最後に実印を押印して印鑑証明書を付けます。
なお、遺産分割協議が話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割の調停手続を行います。
調停でまとまらなければ審判に進みますが、この過程で決まったことが遺産分割の内容となります。
相続手続スタート
以上の手順を踏んで、具体的な相続手続に進んでいきます。
銀行や証券会社、保険会社等の金融機関や法務局、その他の役所で戸籍や遺産分割協議書等の書類を提出して名義変更や口座の解約手続等をしていきます。
また相続税の申告は被相続人が死亡したのを知ったときから10ヵ月以内となります。
下記のチャートを参考にして下さい
さいごに
ここまで相続手続の概要についてみてきました。
手続の中には期限のあるものがあり、その場合は限られた時間の中で判断をしなければいけません。
手順を間違えずに綿密に調査していけば、誤った判断をする可能性が減ります。
このチャートを参考に、期限内に手続を済ませるようにしましょう。
(提供:相続サポートセンター)