クレジットカード市場は2017年度58兆円突破、2023年度には100兆円を超える見通し
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、クレジットカード市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
クレジットカード市場規模推移と予測
1.市場概況
日本政府は経済産業省の「日本復興戦略」をはじめ、様々な場面でキャッシュレス推進の方針を打ち出してきた。2025年頃まで、日本国内で様々な国際イベントが開催される予定であり、インバウンド(訪日外国人客)対応の観点も含め、2027年までに国内におけるキャッシュレス比率を倍増させる目標を設定している。
また政府は、2020年までに訪日外客数を4,000万人まで拡大するという目標を掲げており、訪日外国人客にとっても利便性の高い決済インフラが求められている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定以降、自国でクレジットカード決済をする習慣が根付いている訪日外国人客が、日本においてもストレスなく支払いが出来るよう、決済インフラの整備が進められている。
2017年度のクレジットカード市場規模(クレジットカードショッピング取扱高ベース)は、約58兆円まで拡大した。主要クレジットカード会社における入会と利用をセットにした各種キャンペーンや、利用金額や回数に応じたポイントや特典の付与などを実施したほか、特定の加盟店での利用に対するインセンティブを与えるなどの施策を展開し、利用機会の拡大に取組んだことが主たる拡大の要因となっている。
2.注目トピック
スマートフォン決済の進展とともにクレジットカード市場も拡大基調へ
クレジットカードは認証手段により主に、①従来のカードリーダーを介するコンタクト(接触型)決済、②非接触IC規格(NFC)を活用したコンタクトレス(非接触型)決済、また③QRコード決済のようにアプリを介した決済がある。なおQRコード決済はアプリに紐づけられる形で、クレジットカードが使用される決済である。
日本におけるコンタクトレス決済の取扱高は急速に拡大し、なかでもスマートフォンを活用したスマートフォン決済(モバイルコンタクトレス決済)が市場を牽引している。
スマートフォン決済については、特にiDやQUICPayの認知度の高まりとともに、加盟店数が急速に拡大している。Apple Payの日本展開もあり、2023年度のコンタクトレス決済における取扱高の大部分はスマートフォン決済になると予測する。
また、スマートフォン決済の拡大に加え、QRコード決済の普及および利用拡大により、クレジットカードの使用も進むことから、市場は拡大基調で推移するとみる。
?なお、QRコード決済に関しては、今までクレジットカード決済が進まなかった中小零細企業での導入が進むことに加えて、ハウスマネー領域における顧客の維持獲得のためのマーケティング施策と連動したQRコード活用が進むことから、徐々に拡大していくと考える。
3.将来展望
2023年度のクレジットカード市場規模(クレジットカードショッピング取扱高ベース)は約100兆円を超えると予測する。
市場が拡大する要因としては、政府主導によるキャッシュレス化の推進により、クレジットカード決済環境の整備が進むこと、納税や教育費などの生活関連分野におけるクレジットカード決済領域が拡大すること、Apple PayやQRコード決済をはじめとしたスマートフォン決済(モバイルコンタクトレス決済)の拡大により、ユーザーの利便性や利得性が向上することなどが挙げられる。
また今後はAPI(Application Programming Interface)の公開により、新たな決済事業者の参入を促し、ユーザー向けに高付加価値決済サービスが創出される可能性のあることや、IoTの進展による新たな決済サービスの機会創出が期待されるほか、無人コンビニエンスストアの普及なども想定されることから、クレジットカード市場は拡大基調にあるものと考える。
?国内におけるキャッシュレス決済は着実に進んできており、クレジットカードはポイントプログラムなどの周辺サービスと連携しながら、キャッシュレス決済の拡大を牽引していくものと考える。