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相続税には、相続財産から直接的に評価額の減額をおこなうものや、税額を控除するものなど、さまざまな特例や控除があります。

相続時における相続財産がこれらの特例や控除額を上回っていなければ、相続税が発生することはありません。

自分で資産評価などを概算でおこない、特例や控除額を差し引いた結果、相続税が発生しないと思い税務署に申告をしない方も多いようですが、特例や控除のなかには相続税の申告書を税務署に提出しなければ適用を受けられないものもありますので、適用できる特例や控除について申告が必要なのかどうかも確認しておく必要があります。

相続税の負担が軽くなる特例

相続税を計算するうえでのそれぞれの特例のなかには、相続税の負担を大きく軽減させるものがあります。

相続税を計算する際は、下記の特例や控除の適用漏れがないように注意して確認しましょう。

配偶者及び、未成年者・障害者の税額軽減と控除

所得税の計算と同様に相続税の計算においても、配偶者などには個別の税額控除が設けられています。

所得税と異なるのは、未成年者も控除の対象になるということです。

配偶者の税額軽減

配偶者が財産を相続した場合は、配偶者の法定相続分と1憶6,000万円のうち、どちらか大きい方までの金額は相続税がかかりません。

したがって、配偶者が法定相続人に含まれている場合には配偶者の法定相続分が50%であることから、実際にかかる相続税を半分以下に圧縮することができます。

この税額軽減の背景には、配偶者の場合、配偶者本人の今後の生活の保障やこれまでの財産形成などの貢献度を配慮したことがあげられます。

また、この配偶者の税額軽減を適用する場合は、相続税が0円の場合でも税務署に相続税の申告書を提出しなければなりません。

未成年者控除・障害者控除

相続人が、20歳未満の未成年者である場合は、20歳に達するまでの期間(年単位)×10万円が相続税から控除されます。

また、相続人が、障害者に該当する場合は、85歳に達するまでの期間(年単位)×10万円(特別障害者に該当する場合は20万円)が控除されます。

これらの控除額を本人の相続税から差し引くことができない場合は、本人の扶養義務者の相続税から差し引くことができます。

配偶者の税額軽減・未成年者控除の計算例

ここでは、配偶者の税額軽減と未成年者控除を適用した場合の計算方法を、事例を挙げて解説します。

【例】
被相続人:夫
法定相続人:妻(60歳)・長男(25歳)・次男(18歳)
遺産総額:1憶6,000万円

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1.相続税の総額の計算(法定相続分に速算表の税率をかけ、控除額を差し引く)
【妻】  6,000万円 × 30% - 700万円 = 1,100万円
【長男】 3,000万円 × 15% -  50万円 = 400万円
【次男】 3,000万円 × 15% -  50万円 = 400万円
【合計】 1,100万円 + 400万円 + 400万円 = 1,900万円

2.各人の相続税額(法定相続分どおりに分割した場合)
【妻】  1,900万円 × 1/2 = 950万円
【長男】 1,900万円 × 1/4 = 475万円
【次男】 1,900万円 × 1/4 = 475万円
【合計】 950万円 + 475万円 + 475万円 = 1,900万円

3.配偶者の税額軽減と、未成年者控除を適用する
【妻】  950万円 - 950万円(配偶者の税額軽減) = 0円
【長男】 税額軽減及び未成年者控除の適用外のため 475万円
【次男】 475万円 - 20万円(未成年者控除) = 455万円
【相続税合計額】 0円 + 475万円 + 455万円 = 930万円

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、被相続人が所有する土地を自宅や店舗などとして使用していた場合に、その土地を相続する際は相続する土地の面積に応じて評価額から最大で8割が減額される特例です。

贈与税額の控除

被相続人から生前に資産の贈与を受けていた場合、その贈与が相続発生前3年以内におこなわれていたのであれば、贈与財産は相続財産に加算しなければなりません。

また、その贈与によりすでに支払っている贈与税は相続税から控除することができます。

相次相続控除

1回目の相続が発生し、1回目の相続以降10年以内に2回目の相続が発生した場合は、1回目の相続税の一部を2回目の相続税から控除することができます。

相続税の負担が重くなる特例

相続税の特例には、上記のような相続税の負担を軽くする特例の他にも、逆に相続税の負担を重くする特例もあります。

相続税の2割加算

配偶者・親・子以外の人が相続により財産を取得した場合は、算出された相続税額にその税額の2割を加算した金額が最終的な相続税となります。

なお、養子の場合、子の場合は2割加算の対象とはなりませんが、孫が養子の場合は2割加算の対象となります。

まとめ

相続税の計算については、上記の計算例でわかるように、相続税の総額と相続税の納付額は異なります。

そのため、遺産分割の割合が変わっても相続税の総額が変わることはありません。

最終的な相続税額は各相続人の状況によって大きく金額が変わることがありますので、自分が適用できる控除がどれぐらいあるのかを把握しておくことが大事です。
(提供:相続サポートセンター