会社,買うメリット,デメリット
(画像=PIXTA)

1990年初頭にバブルが崩壊し、日本経済の低迷は「失われた10年(あるいは20年)」という言葉で形容されてきた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉も、今は死語になっている。高度経済成長期の成功体験を忘れられない人々は、世界で日本の存在感が薄くなっている現実をどのように受け止めているのだろうか。

目次

  1. 会社を買って事業を拡大するトレンド
  2. 会社を買う3つのメリット
    1. 1.事業規模を効率良く拡大できる
    2. 2.事業構造の多角化
    3. 3.企業文化の刷新
  3. 会社を買う3つのデメリット
    1. 1.売り手企業とのミスマッチ
    2. 2.想定外の債務処理
    3. 3.予算が超過するリスク
  4. 会社の買い方と手続きの方法は?
    1. 1. 購入する会社を探す
    2. 2. 売買交渉を申し込む
    3. 3. 秘密保持契約を締結する
    4. 4. 企業情報を精査する
    5. 5. トップ面談を行う
    6. 6. デューデリジェンスを行う
    7. 7. 最終契約を締結して代金を支払う
  5. 実は個人で会社を買うこともできる?
    1. 社会問題化する事業承継
    2. 個人で会社を買う方法とは?
  6. 世界を見据えた会社買収が重要
  7. 監修者紹介

会社を買って事業を拡大するトレンド

企業経営を取り巻く環境は、目まぐるしいスピードで変化している。人口減少・少子高齢化、GAFAの台頭、第三次AIブーム、ロボティクスをはじめとする新技術の誕生など、市場は息つく間もなくトレンドの転換を繰り返している。

このような激動の時代において、経営判断もまた複雑化している。チャンスとリスクの境界線は極めて曖昧であり、中長期的な展望を語ることは不可能と言っていいだろう。

しかし不確実性に屈することは、経済競争に敗れることを意味する。この厳しい現実の中で、事業を拡大するための戦略をどのように考えていけばいいのだろうか。

事業拡大には、大きく分けて2つの方法がある。新しい市場の開拓と既存ビジネスの買収だ。スピードだけを考えれば、現時点で収益を上げているビジネスを買収するほうが圧倒的に速い。

この記事では、会社買収のメリットとデメリットについて考察する。不確実性の時代を生き抜くための参考になれば幸いである。

会社を買う3つのメリット

会社買収は、極めて重要な経営判断だ。ゆえに、費用対効果を正確に算出しなければならない。ここでは、会社買収で得られる3つのメリットについて解説する。

1.事業規模を効率良く拡大できる

事業規模の拡大は収益の増加だけでなく、ブランディングや新規市場の開拓など複数の目的をもって行われる。市場の不確実性を理解している経営者なら、常に事業規模を拡大する方法を考えているはずだ。

事業規模を拡大する手段の一つに「新規事業の創出」があるが、事業をゼロベースで構築するには膨大なコストがかかる。資金に余裕があったとしても、自社の限られた人的資源を投下するに値する成果を得られる保証はない。

新しいビジネスは、軌道に乗ってはじめて収益を生み出す。それまでは高いモチベーションを維持しながら、忍耐強く情熱と資金を注ぎ続ける必要がある。

また、サンクコストが膨れ上がりやすいというリスクもある。サンクコストとは、投下済みで回収不能な費用のことだ。新規事業の黒字が見込めないことがわかっても、投資した金額や時間、労力を惜しむあまり撤退の決断が遅くなれば、損失が膨らんでしまう。

このように、新規事業の創出は明確なビジョンと勝算がないと難しい。そこで検討すべき手段が「会社買収」だ。

新規事業の創出と違い、会社買収は既存の会社の経営権を取得する方法なので、「0から1を作る」過程がない。将来の収益モデルを徹底的に調査した上で成長期の会社を買収すれば、黎明期のコストを負担することなく事業規模をスピーディーかつ効率良く拡大できる。これは、会社買収の大きなメリットと言えるだろう。

2.事業構造の多角化

事業構造の多角化とは、自社の既存事業を超えて他分野に進出することだ。「経営の多角化」も意味は同じだ。多角化には、事業間のシナジー効果や経営資源の有効活用などのメリットがある。市場の不確実性を前提とすれば、複数の収益源を持つことによるリスク分散は不可欠だろう。

スマートフォンが誕生したことで、デジタルカメラの需要は一気に冷え込んだ。インターネットショッピングが当たり前になった今日、わざわざ地域の商店に買い出しにいく必要はない。現時点で収益を生み出している事業も来年、再来年はどうなるかわからない。想定外のリスクに備えるためにも、多角化は有効な戦略と言えるだろう。

競合他社に対して優位性を持つ会社を買収できれば、自社の負担を最小限に抑えつつ事業構造を多角化できる。

3.企業文化の刷新

会社が継続すると、良くも悪くも「企業文化」が形成される。ここで言う企業文化とは、経営者を含めて会社で働く人々の間で無意識的に共有されている習慣やルールのことだ。

経営者の意思決定がスムーズに反映される組織は、変化に柔軟に対応できる。しかし現実は、複雑な社内政治や従業員とのミス・コミュニケーションなどによって、経営者のビジョンが共有されていないことが多い。

社内の人間関係が良好でない場合、社員の心を動かすことには限界がある。日本の組織には「本音と建て前」の文化が色濃く残っており、社長や上司の前で本音を言う人はほとんどいない。しかし、自分より役職が上の人に対して率直な意思伝達ができなれば、会社全体が適切に機能しなくなる。

このような状況を打破する手段として、会社買収が有効になることがある。M&Aは会社にとって大きな決断であると同時に、会社組織としての在り方を根本的に見直す機会でもある。経営者として、大きな変化をどう受け止め、どのようなビジョンを描くのか。それに従業員を巻き込むことで、経営者との心理的距離を縮めることができる。

売り手企業が加われば、企業文化を改善できる可能性がある。売り手企業で働く社員が、企業内のコミュニケーションを変えるきっかけになるかもしれない。

会社を買う3つのデメリット

会社買収には、デメリットもある。一歩間違えれば会社が危機に見舞われるので、十分注意しなければならない。

1.売り手企業とのミスマッチ

売り手企業の従業員が、買収後の環境になじめないケースは少なくない。M&Aが成約すれば、売り手企業のリソースを自社の経営資源として活用できるようになるが、買収された側の企業で働く従業員は、心理的な不安を覚えることがある。

「経営陣の変化によって、社内環境はどうなるのか」「親会社と子会社の力関係が、社内コミュニケーションに影響するのか」「給与や待遇は変わるのか」。M&Aを機に、進退を考える従業員もいるだろう。

これらの不安を解決しなければ、売り手企業の従業員が大量に退職するおそれがある。属人性の高い業務が多い場合、従業員の流出は事業の存続を脅かすリスクとなる。したがって、売り手企業の従業員との信頼関係を構築する人材の選定と、コミュニケーションに関するアクション・プランを事前に定めておかねばならない。

2.想定外の債務処理

会社買収によって経営権を取得した企業の税務や財務上の問題は、あらかじめ契約書で責任関係を明確にしておかなければ、買い手が負う可能性がある。

特に注意したいのは、簿外債務と偶発債務だ。これらは貸借対照表には計上されない債務であり、見落とすと大損害に発展するおそれがある。

M&Aには、いわゆる「売り逃げ案件」が存在する。事前の調査では見抜けないこともあるので、買い手側が率先してリスクを確認しなければならない。

3.予算が超過するリスク

会社買収には、莫大な費用がかかる。売り手企業の買収価格だけではなく、M&Aの仲介会社・アドバイザリー会社に支払う手数料もある。交渉期間が長引くと仲介会社・アドバイザリー会社のコンサルティング料などが高くなるため、予算を意識しながらM&Aを計画的に進めることが大切だ。

また、仲介会社・アドバイザリー会社の報酬体系は会社によって異なるので、契約内容をしっかり確認して、負担の少ないところを選ぶようにしたい。

会社の買い方と手続きの方法は?

マッチングサイトを利用して会社を買う場合の買い方と、手続きの方法を紹介しよう。

1. 購入する会社を探す

最初に、マッチングサイトを見て買収する会社を探す。マッチングサイトは多くあり、サイトによって扱う案件は異なる。まずは、自分が買収したい会社の条件や予算などと合ったマッチングサイトを見つけよう。その上で、買収する候補の会社を絞っていくことになる。

2. 売買交渉を申し込む

買収候補として適当な会社が見つかったら、売買交渉を申し込む。売買交渉の申し込みは、マッチングサイトでできるようになっている。M&Aのアドバイザー会社を利用する場合は、この時点でアドバイザー会社に連絡を入れる。

3. 秘密保持契約を締結する

買収候補の会社に詳細な財務情報などを開示してもらうためには、秘密保持契約を締結する必要がある。秘密保持契約では、開示された相手企業の情報を第三者に開示しないことを約束する。会社の情報が第三者に漏洩した場合、その会社にとって大きな損害につながる可能性があるからだ。秘密保持契約に違反すると、損害賠償を請求されることもあるので気をつけよう。

4. 企業情報を精査する

秘密保持契約を締結すると、買収候補の会社の企業情報が詳細に開示されることになる。マッチングサイト上ではわからなかった財務上の詳しい数字も明らかになる。開示された企業情報を精査して、買収にふさわしい会社であるかどうかをチェックしよう。買収にはふさわしくないと判断すれば、この時点で買収をやめても何ら問題はない。

5. トップ面談を行う

企業情報を精査して「買収にふさわしい」と判断したら、トップ面談を行う。開示された情報だけではよくわからなかった点について質問できるよう、事前に準備しておこう。

買収を成功させるためには、買収する企業と自社の社風が合うことも重要だ。社風が合わない企業を買収した場合、買収後の企業統合がうまく進まないことがあるからだ。相手企業の社風については、経営者の人柄や考え方からある程度つかめるだろう。

6. デューデリジェンスを行う

トップ面談を行い、「この会社を買おう」という気持ちが高まったら、相手企業に対してデューデリジェンスを実施する。デューデリジェンスとは、相手企業の財務や法務などにリスクがないかどうかを、税理士や弁護士、公認会計士の力を借りて調査することである。特に簿外債務や偶発債務などがないか、しっかり確認しよう。

7. 最終契約を締結して代金を支払う

最終的に買収を決断したら、契約を締結して買収代金を支払う。これで会社を買う手続きは完了だ。

実は個人で会社を買うこともできる?

実は、近年では個人が会社を買うこともできるようになってきている。会社の規模にもよるが、300万~1,000万円程度で買える会社もあるからだ。個人でも会社を買えるようになってきたのは、事業承継の問題や、アフィリエイトサイトの増加が理由として挙げられる。

社会問題化する事業承継

近年では、中小企業の事業承継が社会問題になっている。経営者が高齢化したが事業承継ができないために、経営は健全でも廃業に追い込まれる中小企業は少なくない。このような理由で、経営は健全で利益も上がっている企業を比較的安く買うことができるようになってきたのだ。

アフィリエイトサイトも、近年大きく増加している。アフィリエイトサイトは、成功しているものについては大きな売上を生み出している。このアフィリエイトサイトの売買も、近年は活発に行われている。アフィリエイトサイトは、小規模なものは法人化されていないため、その場合は「会社を買う」とはいえないが、「事業を買う」という意味では同じだろう。

個人で会社を買う方法とは?

個人で会社を買う方法を見ていこう。

・予算を決める
会社を買うにあたって、まず決めなければならないのが予算だ。生活に支障が出ないよう、生活費をきちんと確保した上で使えるお金を計算しよう。会社を買う場合、方法によってもかかる費用が変わってくる。手数料が異なるからだ。ネットを通じて会社を買えば手数料はおそらく最も安いが、M&Aのアドバイザー会社や仲介会社を利用した場合は、購入金額に応じた手数料がかかる。

・業種を決める
予算を決めたら、次に買う会社の業種を決める。購入した会社は、手放しで利益を生み出してくれるわけではない。会社のオーナーとして経営にきちんと関わっていく必要があるので、自分の経験と関わりのある業種を選ぶといいだろう。

・購入する会社を探す
予算と業種を決めたら、いよいよ買う会社を探していくことになる。買う会社を探す方法として最も手軽で費用も安いのは、前述したマッチングサイトの利用だ。多少の費用をかけても構わないから優良な会社を探したいなら、M&Aの仲介会社やアドバイザー会社を利用するのもいいだろう。

商工会議所が運営する「事業引継ぎ支援センター」を利用する手もある。事業引継ぎセンターでは、売りに出ている会社の価格相場や、実際に会社を買う際の手続きの流れを教えてもらえる。希望すれば、予算や業種の希望に応じた買い手候補となる会社を紹介してもらえるだろう。

世界を見据えた会社買収が重要

世界経済の中で、日本企業のプレゼンスは確実に低下している。IT革命以後、日系企業でグローバル経済をリードしているところはほとんどないと言っていいだろう。

中国やインドはIT分野の人材育成を進めており、その結果が出始めている。今後は、アジアにおいても日本企業が首位に返り咲くことは難しいかもしれない。

しかしながら、会社買収という手段は国内に制限されるものではない。外国企業を買収することで、新技術の獲得や新規市場の開拓を実現できる可能性はある。国内需要は今後さらに低迷することが予想されるからこそ、世界を見据えた会社買収を検討して、事業の拡大を模索していくことが重要なのだ。

文・THE OWNER編集部

監修者紹介

斎藤弘樹
株式会社日本M&Aセンター 地域金融1部 部長
斎藤弘樹 (さいとう・ひろき)
一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。 2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。
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