相続というと、遺産がどれくらいもらえるのかということを気にする人も多いですが、もうひとつ気にすべきことがあります。
それは、相続税がいくらになるのかということです。
相続税がいくらになるのかという点のほうを気にしているという人もいるくらい、相続税の問題は深刻です。
今回は、相続税に関する予備知識と課税対象財産について解説します。
相続税の概要
相続税とは
相続税とは、亡くなった人の遺産を引き継いだ場合にかかる税金です。
ただし、どのようなときでも相続税がかかるのではなく、相続税は基礎控除額を超えたところからかかります。
ケースによって相続税の基礎控除額はさまざまで、個人との関係(配偶者なのか、子なのか)と法定相続人の人数によります。
相続税はいつまでに申告・納付すればよいか
相続税は、相続が起こったことを知った日から10ヵ月以内に申告しなければいけません。
また、申告期限内に納税も行うことになっています。
延納、物納を希望する場合は、申告書の提出期限までに税務署に申請書などを提出して、許可を受けるという流れです。
お葬式などでばたばたしていると、あっという間に申告期限が来てしまいます。
相続税の基礎控除額内なら申告は不要
相続税の基礎控除について解説します。
基礎控除を超えない金額の遺産であれば、特に税務署に報告する必要はありません。
ただし、本当にないのかどうかという点が問題になります。
つまり、借金がどこにどれくらいあるのかを調べたが本当に何も出てこなかったという証明が必要です。
相続に詳しくない一般の人の場合、何をもって証明するのでしょうか。
実際に、ないと思っていたのに見落としていて実はほかの資産があるというケースも散見されます。
もし、ないとおもっていたのに遺産がたくさん出てきてしまったら、修正申告が必要です。
遺産を隠していたと認定されれば、追徴課税をされてしまうこともあります。
一般の人の場合は、相続税の計算に慣れていない人の場合が多いでしょうから、計算間違いもあり得ます。
故人の遺産の全体像がわからなくても不思議はありません。
相続税の基礎控除額を計算してみよう
まず相続税の基礎控除を算定する段階で、どれくらいの相続税額がかかるのかシミュレーションしておくといいです。
相続税の基礎控除の計算は、自分たちにもできます。
計算式は、
3,000万円+法定相続人の人数×660人=相続税の基礎控除額
になります。
先ほどご説明したように、相続財産は現時点ではまだわからないので、あくまでも目安になります。
配偶者が相続する場合は、最高で1億6千万円まで税金がかかりません。
目立った資産は家と土地くらいであって、しかも配偶者が家と土地を相続するのであれば、相続税がほとんどかからないということもあるかもしれません。
相続税を事前に試算しておくべき理由
大まかでもいいので、相続税を事前に計算しておくべき理由とは何でしょうか。
たとえば、大きな資産はほぼ家だけというご家庭の場合、土地と家屋を相続するときの相続税を準備しておかなければ、相続が起こったときに相続税が払えず、財産を手放さざるを得なくなります。
事前に計算しておけば、相続税分を用意しておくことが可能です。
相続税が課税される財産について
原則として人が生きていくために最低限必要な財産は非課税
税法の基本的な原則ですが、人が生きていくために最低限必要とされる財産については、課税当局は課税することができません。
憲法で健康で文化的な暮らしを規定しているため、それをうけて、生活に必要な最低限の財産や、故人の宗教にかかわる財産などについては課税してはいけないということになっています。
遺産の中で課税対象となる資産
遺産の中で課税対象となる資産について検討します。
まずは、現金や預貯金といった資産、さらに、土地や家屋、金融商品なども課税の対象となります。
◼︎ みなし相続財産
少し変わっているのがみなし相続財産という概念です。
みなし相続財産とは、相続財産ではないけれども、ほとんど似たようなものを言います。
◼︎ 生命保険金
例えば、生命保険金と偶然な事故により支払われる損害保険金は、相続財産ではありません。
というのも、被相続人が生きているうちには入ってこないお金だからです。
しかし、被相続人の死亡とともに支払われる金銭であるため、生命保険金や損害保険金は実質的には相続財産と同じと考えます。
生命保険金や損害保険金はみなし相続財産ですが、控除額があるので、現金や預金といった資産よりも実質的には税金が安くなります。
このような仕組みを用いて、生命保険で将来の相続税を節税する人もいます。
◼︎ 3年以内に生前贈与した財産
被相続人が、亡くなる3年前以内に生前贈与した財産は、みなし相続財産にカウントされます。
こちらも、実質的には相続財産であるからという理由です。
みなし相続財産には相続税がかかりますが、贈与税を相続税額から控除することができます。
◼︎ 遺産の中で課税対象とはならない資産
遺産の中で課税対象とはならない資産の代表格といえば、仏壇です。
豪華な仏壇は、実は節税対策になります。
というのも、仏壇は個人の信じる宗教のための道具です。
これに課税するというのは、税法の方針と合わないので、墓所や霊廟、祭具といった宗教関連の道具には課税されません。
◼︎ 相続財産の評価について
相続税を課税するとき、現金や預金という資産だったら額面がわかりやすいです。
一方、相場が上下する資産(不動産など)については、高い時の評価で税金を計算してしまうと、実際の価格よりも多い相続税をかけてしまうことになるかもしれません。
そこで、不動産を評価するときは路線価などを用いて、相続税を計算するための評価額を算出します。
実際の土地の値段よりも割安に計算される傾向にあります。
土地といっても色々な土地があります。
まず、宅地の場合は路線価をもとに計算するか、固定資産評価額に一定の倍率をかけて算出します。
算出した金額に税率をかけて税を計算します。
死亡前3年以内に取得した土地建物に関しては取得価格によって評価します。
農地、山林、借地、貸地はそれぞれ別の規定があります。
地域によってもルールが違います。
ちなみに、家屋は固定資産税評価額を使って相続税を計算します。
◼︎ 小規模宅地等の特例を使いこなす
小規模宅地等とは、被相続人の事業用・居住用の宅地のことを言います。
特定住居用宅地の場合は、330平方メートル以下であれば評価額に8割、5割を乗じた金額が軽減されます。
この規定を使えば、宅地にかかる相続税をかなり節税することができます。
◼︎ 株式について
株式も相続財産の中に入ります。
土地と同じで、価格が上下する性質のある資産です。
株式の場合は、上場株であれば相続が起こったときの時価により評価します。
ところで、家業を株式会社にしてある場合の株は一体いくらとして評価されるのでしょうか。
この場合は、未上場の株式ということで、少々複雑な計算方法を取ります。
自分で計算するのは大変なので税理士に頼むことをおすすめします。
相続税の簡単な計算方法について
相続税の計算方法について、流れをご紹介します。
とはいえ、実際の評価などは難しいところもあるので、だいたいこのような流れで計算するのだというところまで、わかれば大丈夫です。
まず、遺産総額を把握します。
後から出てきたりしないように、徹底的に探しましょう。
遺産総額がわかったら、相続財産から、葬式費用と相続債務を引きます。
これが課税価格です。
相続は、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぎます。
相続税に関して言えば、マイナスの財産である負債については課税しないという決まりになっています。
課税価格が出たら、法定相続人それぞれの課税価格を足します。
これらから、基礎控除を引いて、課税される遺産総額を計算します。
そして、まずは法定相続分にしたがって、法定相続人にそれぞれ分けます。
そこに税率をかけ、法定相続人全員分の相続税を出します。
実際は、法定相続割合通りに分割していないこともあります。
そこで、相続税総額を、各人の実際の課税価格に基づいて按分し、各人の納付する金額を出すことができます。
期限内に申告することのメリット
各種控除などは、期限内に申告することで使える制度です。
つまり、期限を超えてしまうと使えなくなってしまうので、各種控除を適用したい場合はもちろん、期限内に申告するようにしましょう。
いろいろと忙しい時期ではありますが。
期限を守って申告すれば、各種控除などの恩恵を受けることができます。
困ったときは誰に相談すればよいか
資産の内訳がシンプルな人の場合は、相続人たちの手で相続税申告をすることも不可能ではありません。
例えば、土地・建物と、いくらかの現金預金しかないというパターンであれば、計算はそこまで難しくありません。
自分の相続税申告を自分ですることについては何ら問題はありませんが、懸案事項は間違って申告してしまうリスクがあるということです。
非常にわかりやすい資産構成ではない限り、税理士に依頼して計算してもらったほうが安心といえます。
まとめ
今回は、相続トラブル解決への糸口として、相続税に関する予備知識と課税対象となる財産についてご紹介しました。
課税対象となる財産のほうが多いので、まずは課税対象とならない財産を覚えておくといいでしょう。
さらに、課税対象となったとしても、額面よりも安く評価されがちな資産(土地など)や、みなし相続財産(生命保険)という存在を覚えておけば、生前の相続税対策も打ちやすくなります。
(提供:相続サポートセンター)