「心の病」が「増加傾向」と回答した割合は、過去最低を記録した前回(2021年)の22.9%から急増し45.0%となったことが、日本生産性本部が発表した第11回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果で明らかとなった。
自社における「心の病」が「増加傾向」と回答した割合は45.0%となった。
近年は、2006年の61.5%をピークに2019年を除いて減少が続き、前回調査(2021年)では22.9%と過去最低となっていた。しかし、今回調査では「増加傾向」の回答が45.0%となり、前回調査(2021年)時と比較して大幅に増加する結果となった。
また、「横ばい」と回答した割合が45.0%と前回調査(2021年)の59.7%より低下しただけではなく、「減少傾向」と回答した割合も11.1%から5.9%に低下した。
これについて生産性本部では、「ストレスチェック等着実に積み上げてきたメンタルヘルス対策の効果を上回る大きな変化があったと推察される。たとえば、コロナ禍を発端とする働き方や職場の在り方の変化、そしてそれらの変化への順応プロセスによる影響の可能性が考えられる」と指摘する。
【「心の病」の増減傾向】
増加傾向 45.0%(2021年調査22.9%)
横ばい 45.0%(同59.7%)
減少傾向 5.9%(同11.1%)
分からない 4.1%(同6.3%)
【連載】人事担当が押さえたいメンタルヘルス推進のポイント
第1回:ストレスチェック形骸化が36%…社員が定着しない企業の実態
第2回:メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、社内カウンセリングをどう機能させるか
第3回:人的資本経営に必要な組織変革、社員の自己実現を支援できる組織が社員のやる気を生む
第4回:ストレスチェックの本来の目的を見失っていませんか? 制度を職場改善に活かすヒントとは
第5回:経営の活性化と働く人の幸福、その根幹にメンタルヘルスあり
「心の病」が最も多い年齢層について聞くと、10~20代との回答が43.9%に急増して過去最多を記録し、30代(26.8%)を初めて上回って「心の病」が最も多い年代となった。
2010年までは30代との回答が圧倒的に多かったが、2012年に30代が大幅に減少し、40代が大幅に増加したことでトレンドが変化した。その後、30代と40代がともに約30~40%で推移し、2008年以降徐々に増加してきた10~20代が2017年に27.9%となり、50代以上を除く年代による差がなくなる傾向にあった。
このような変化について生産性本部では、「2010年までは30代に多い理由を、仕事の責任は重くなるが管理職にはなれない“責任と権限のアンバランス”と考察し、2012年以降はこのアンバランスが50代以上を除くすべての年代に広がった」と考えてきた。
しかし今回は、「30代、40代との回答が減少する一方、10~20代との回答が急増し、これまでと様相が大きく異なっている。調査結果だけでは判断できないが、コロナ禍で入社した若手層がテレワーク等で対人関係や仕事のスキルを十分に積み上げることが出来ない中で、“5類”移行に伴う出社回帰の変化が大きなストレスになった」と分析する。
【「心の病」の最も多い年齢層】
10~20代 43.9%(2021年調査29.0%)
30代 26.8%(同39.9%)
40代 21.3%(同27.5%)
50代以上 7.9%(同3.6%)
調査は、2023年7月7日~9月4日、新興市場を除く上場企業(東証、札証、名証、福証)のうち、案内の了解を得ている企業2847社の人事担当を対象に郵送とWEBアンケートシステムで実施し、169社の有効回答を得た。 (製造業83社、非製造業86社)(1000人未満79社、1000-2999人38社、3000人以上52社)