目次
- 地域に開かれた社会福祉法人として運営
- 久留米市、うきは市、小郡市で17事業を展開
- 職場は明るく丁寧なチームワークの形成を重視。2019年11月には、久留米市の雇用優良事業所の表彰を受けた
- 人と人とのつながりを大事にするには、時間を生み出さなければならない。これまでの仕事の進め方を見直してICTを活用する
- 企業向けホームページ作成システムの最新版を導入し、2023年8月からホームページをリニューアル
- 17事業展開しているため、ホームページを見る人が迷わないように、「サービスから探す」「地域から探す」のアイコンを設置し、必要なページへ行けるようにした
- どこでも働ける職場環境づくりのためにパソコンの遠隔操作サービスを導入。産前産後も自宅で仕事が出来、コロナ禍での出勤制限時にも役立った
- 勤怠管理システムを活用して業務を効率化。心理負担が減り、確認作業に時間をかけることができるようになった
- 入所者や利用者のサービス充実のために、様々な場面でのICTとデジタル機器の活用を検討
福岡県南部の久留米市を中心に高齢者福祉事業に携わる社会福祉法人ひじり会は「地域のために、地域とともに」を理念に活動している。ホームページを活用した利用者目線での情報発信や、自宅でも働くことができる環境づくり、職員の勤怠管理といった面でICTを積極的に活用している。(TOP写真:ホームページ作成システムを使って編集作業を行う様子)
地域に開かれた社会福祉法人として運営
1979年に設立された社会福祉法人ひじり会の本部は、屏風(びょうぶ)にも例えられる耳納連山(みのうれんざん)の山容を一望できる福岡県久留米市田主丸町の自然豊かで穏やかな場所にある。周辺には桜が植樹され、果樹園が広がる1970年代後半、高齢者が安心して生きがいに満ちた老後を過ごす場所が地域で強く求められていたことが、法人設立の背景にあったという。
ボランティアの受け入れや介護者教室を開催するなど地域に開かれた法人であり続けてきた。本部がある特別養護老人ホームひじり園の玄関には地域の人から贈られた手作りの雑貨が展示され、和やかな雰囲気を醸し出している。
「利用者の皆さんに、安心して楽しく毎日を過ごしていただけるようにしたいという思いで日々取り組んでいます。利用者の皆さんに質の高いサービスを提供できるよう、職員がやりがいを持って取り組むことができる環境づくりを大事にしています」とひじり会の本部で取材に応じた事務局長はそのように話した。
久留米市、うきは市、小郡市で17事業を展開
二十数人の職員による特別養護老人ホームひじり園の運営からスタートしたひじり会は現在、福岡県久留米市を中心に東側のうきは市、北側の小郡市で17事業を展開している。取り組む事業は、特別養護老人ホーム、訪問入浴介護、通所介護、居宅介護支援、介護付有料老人ホーム、認知症対応型デイサービス、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、保育所と幅広い。早くから高齢化社会の到来を見据え、高齢者福祉に携わる役割の重要性を認識しながら事業を展開してきたという。
職場は明るく丁寧なチームワークの形成を重視。2019年11月には、久留米市の雇用優良事業所の表彰を受けた
職員数は390人を数える。ひじり会は取り組んでいる事業内容が幅広く、法人内での異動が可能なので、職員は給与体系や福利厚生を維持しながら様々な介護の技術を習得することができる。やる気と実績によって管理者や施設長といったキャリアアップも目指せるという。新人職員に対して先輩職員が指導・助言役として疑問や悩みに対応するメンター制度を設けるなど、未経験者でも溶け込みやすい職場環境を整えている。
「明るく丁寧なチームワークの形成を重視しています。高齢者を支えるだけでなく地域の雇用を生み出し、地域経済を支えている使命感を持ちながら事業に取り組んでいます」と事務局長。ひじり会の取り組みは地元からも高い評価を受けている。2019年11月には、久留米市が女性活躍や仕事と家庭の両立などの支援に熱心な企業、法人を認定する雇用優良事業所の表彰を受けた。
人と人とのつながりを大事にするには、時間を生み出さなければならない。これまでの仕事の進め方を見直してICTを活用する
ひじり会の本部は各事業所と連携を取りながら、社会福祉法人の中枢として管理運営業務や事務全般を担っている。「子どもの世代が故郷から離れて生活する時代になり、高齢者施設が果たす役割は昔以上に大きくなっていると感じています。ひじり会の取り組みを知っていただく上での情報発信も大事になっています。また、人手が不足する中で、これまで以上に人と人とのつながりや温かみを大事にするには、これまでの仕事の進め方を見直して時間を生み出していかなければなりません。これらの課題を解決するためにICTやデジタル機器を活用していきたいと考えています」と事務局長は説明した。
企業向けホームページ作成システムの最新版を導入し、2023年8月からホームページをリニューアル
ひじり会は情報発信を強化するため2023年8月にホームページをリニューアルした。そのために導入したのが企業向けホームページ作成システムの最新版だ。直感的な操作で文章を作成、更新することができる編集機能、業種に合わせたテンプレート、AI(人工知能)による文章入力補助機能などを活用することで編集の専門家でなくてもレベルの高いホームページを作成できる。ホームページの作成と更新は、本部職員で介護付有料老人ホームの管理者も兼任する金子瑞美さんが担当している。
「直感的に操作できるので以前のシステムと比べて格段に文章の作成や編集がしやすくなりました。ある程度操作に慣れればイメージしたとおりに画面を構成できるようになりました。施設のサービス内容を知りたい人、介護の仕事に興味を持っている人、それぞれが必要な情報にアクセスしやすいようにわかりやすさを重視してレイアウトを考えました」と金子さんはシステムの使いやすさと情報発信にあたって心掛けていることについて話した。
17事業展開しているため、ホームページを見る人が迷わないように、「サービスから探す」「地域から探す」のアイコンを設置し、必要なページへ行けるようにした
ホームページでは求人募集や事業所の情報を詳しく掲載。トップページで「ひじり会について」「サービスを探す」「採用情報を見る」の3つのアイコンを設置している。
「サービスを探す」のページでは、サービス内容を「施設系・居住系」、「在宅系」の2つのアイコンを設置。そのほか、地域別に久留米市、うきは市、小郡市の3つのアイコンを設置している。ホームページを閲覧した人は、「サービスから探す」「地域から探す」の2つの切り口から必要な情報に簡単にアクセスすることができる。各事業所のページでは、写真を豊富に使ってサービス内容や連絡先を紹介している。
「採用情報を見る」をクリックすればひじり会の採用ページに移動するように設定している。採用ページでは介護職、看護職、生活相談員、介護支援専門員、事務員、介護補助の職種ごとに、募集要項や福利厚生についての情報を入手できるようにしている。リフレッシュ休暇や年3回の賞与、産休育休制度、資格・スキルに対する各種手当といった情報も掲載している。
ホームページ作成システムには、閲覧者の質問に自動回答するチャットボット機能やアクセス解析機能なども備わっている。システムの使い方でわからない点があれば、販売会社の担当者が電話できめ細かく対応してくれるので非常に助かっているという。金子さんは「グループの各事業所の特色や雰囲気がもっと伝わるような発信方法も考えていきたい」と語った。
どこでも働ける職場環境づくりのためにパソコンの遠隔操作サービスを導入。産前産後も自宅で仕事が出来、コロナ禍での出勤制限時にも役立った
勤怠管理などのバックオフィス業務でもIC やデジタル機器を活用している。2019年には外部の端末から本部のパソコンを操作することができる遠隔操作サービスを導入するとともに、セキュリティ機能を強化。不正アクセスの侵入を防ぐファイアウォールの機能やウィルス対策ソフト、Webフィルタリング、スパムメール対策など様々な機能を備えた「UTM(統合型脅威管理)」と呼ばれるシステムを導入した。
これまで各施設の職員は、防災、広報、安全衛生、給食、事例研究といった本部の委員会活動に参加する際、車で施設と本部を往復しなければならなかったが、遠隔操作サービスを導入したことで移動回数を減らすことができるようになった。産前産後や育児などで勤務時間が制限される職員も自宅で仕事ができるようになったほか、コロナ禍において出勤制限をかけながら仕事を進める上でも非常に役立ったという。
勤怠管理システムを活用して業務を効率化。心理負担が減り、確認作業に時間をかけることができるようになった
2021年12月には勤怠管理システムを導入した。導入前はそれぞれの事業所ごとに勤怠状況を書き込んだ紙の資料を作成し、その数字を給与計算システムに手入力していたため、担当職員にかかる負担が大きかった。導入後は、施設に設置しているカードリーダーに各自のICカードをかざせば、自動的に出退勤時間がシステムに記録できるようになった。そのデータを給与計算システムに取り込むだけで自動計算されるので、担当職員の負担は大幅に減少。心理的な負担が減るだけでなく確認作業により一層時間をかけることができるようになったので、ミスが大幅に減少する好循環につながっている。
「余裕を持って仕事をできるようになったことで、職員の間のコミュニケーションが活発になったように思います。日常的な業務の負担が減れば減るほど、きめ細かく利用者の皆さんに気を配れるようになりますし、仕事の属人化を解消することにもつながっています」と事務局長はICTとデジタル機器を活用する効果について話した。
入所者や利用者のサービス充実のために、様々な場面でのICTとデジタル機器の活用を検討
利用者へのサービス向上のために、情報発信やバックオフィス業務の効率化で着実にデジタル技術を導入しているひじり会。今後も介護記録の管理業務の効率化、法人全体での情報共有、施設入居者と家族のオンライン面会など、様々な場面でICTとデジタル機器の活用を検討していきたいという。事務局長は「地域の皆様から愛され、信頼される法人であり続けたい。選ばれる福祉サービス事業所を目指して、今後も職員一丸となって努力していきます」と話した。
企業概要
会社名 | 社会福祉法人ひじり会 |
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本社 | 福岡県久留米市田主丸町石垣1291-6 |
HP | https://hijirikai.com |
電話 | 0943-73-3050 |
設立 | 1979年9月 |
従業員数 | 390人 |
事業内容 | 特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、訪問入浴介護、通所介護、居宅介護支援、介護付有料老人ホーム、訪問介護、認知症対応型デイサービス、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、サービス付高齢者住宅、保育園 |