人の死亡には、いつも相続がついて回ります。
亡くなった方の大切な財産を引き継ぐための相続が、親族一同の仲を引き裂いてしまう「争族」になってしまう場合があります。
我が家は大丈夫、と思っている方、本当に大丈夫ですか?よくあるトラブルを事前に学んでおくことで、相続トラブルを回避しましょう。
相続後によくあるトラブルの概略
なぜ、相続トラブルは起こってしまうのでしょうか。
まず、近しい人が亡くなって、気持ちの整理がつかない状態であることを大前提にしてください。
当然、ショックな気持ちを抱えたまま、遺産を把握、整理し、分割の協議を進めていくことになります。
通常の状態であれば、優しくて穏やかな人であったとしても、相続はそもそもの状態がかなり辛い気持ちを抱えている状態ですので、疲れて怒りやすかったり、勘違いをしやすかったりします。
まずは、この点を押さえておいてください。
相続後に起こる問題は防ぎようがないものと、予防できるものがあります。
防ぎようがないものについては、そのようなトラブルがあるのだとあらかじめ知っておくこと、防ぐ手立てがあるものについては予防をすることが大事です。
それでは、よくある相続後のトラブルについて12個、紹介します。
行方不明だった人が帰ってくる
今まで行方不明だった相続人が、なぜか帰ってきたというパターンです。
遺産分割協議が終わったタイミングで帰ってきた場合、遺産分割協議は行方不明だった人も含めてやり直しになります。
行方不明といっても、単に行方しれずというだけなのか、失踪宣告がされていて法律上は亡くなったことになっているのかという違いがあります。
いずれにしても、行方不明者は生きていたわけで、相続権があるのですから、遺産分割協議に参加することができます。
前妻の子が登場
葬儀や遺産分割協議などの場面で前妻の子が登場することがあります。
そもそも、前婚があることについて、遺族が把握していればいいのですが、そうではない場合、いきなり現れた前妻の子に納得がいかない気持ちになるでしょう。
とはいえ、前妻の子には相続権がありますので、前妻の子は遺産分割協議に参加する権利があります。
前妻の子を見落として遺産分割協議をしても無効になります。
愛人の子が登場
愛人の子が登場しても複雑なことになります。
故人が認知をしている場合、愛人の子供でも相続権がありますので、遺産分割協議に参加する権利があります。
ちなみに、認知は認知請求の相手の父または母が死亡から3年を過ぎてしまうと、請求することができません。
死亡から3年経過していないうちは、認知されていない愛人の子でも認知をされて遺産分割協議に参加できる可能性があります。
認知された子を無視して遺産分割をしても、やはり無効となりますのでやり直しになります。
故人の愛人から特別受益を主張される
愛人は、法律上の婚姻関係にありませんので、相続権はありません。
しかし、例えば故人が家を飛び出し、何年も愛人のもとで生活していたとしましょう。
実際の生活の世話をし、看取りまでしたのは愛人だったのに、相続権がないというのはちょっと酷な感じもします。
愛人には、相続権はありませんが、特別縁故者であると主張される場合があります。
ただし、特別縁故者の制度はほかに相続人がいない場合に、遺産の分与を受けられるというものです。
もし、故人に家族がいるのであれば、愛人は相続人ではないので遺産分割を受けられません。
あとから出てきた遺産
後から借用書が見つかってしまい、借金についてどのように分割するか協議が難航することがあります。
借金があることを知ってから3ヵ月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄や限定承認の申述をすることができます。
期間が短いので、時間との勝負になります。
借金取りが借金の存在を主張
故人が借金をしていたと主張して、借金取りがくる場合があります。
本当に借金をしていたのかどうかというところから調べる必要があります。
また、借金をしていたとしても、何年前の借金なのかという点、時効にかかっているのではという点も検討すべきです。
相続した財産に抵当権がついていた
抵当権がついていたのなら相続しなかった、抵当権をなくしたいと思うかもしれませんが、抵当権は抵当債務を支払うか、抵当権者が承認しない限り、消滅させることができません。
抵当権がついていたら相続しなかったのにということで、遺産分割協議をやり直す方法もありますし、抵当債務を支払って抵当権を消滅させる方法もあります。
相続人の一人が財産を使い込んでいたことが発覚
相続人のうちの一人が、故人の財産をこっそり使い込んでいたことが発覚する場合があります。
故人が財産を自分で管理できなくなって、同居していた相続人に財産管理を任せていた場合などにありがちです。
実は生前贈与があったことが発覚
生前贈与があった相続人と、なかった相続人でもめます。
あった人からすれば、遺産分割協議で自分の取り分は減らしたくないですし、なかった相続人は不公平感があるので生前贈与分も含めて遺産分割協議をしたいと思うでしょう。
もし、財産の隠匿にあたるのならば遺産分割協議はやり直しになります。
借地を相続したら名義書き換え料を請求された
借地を相続したら、地主から名義書き換え料を請求されたというパターンです。
名義書き換え料は法的な根拠がないものです。
相続はそもそも譲渡ではなく、借地人の地位を引き継ぐだけです。
根拠のないものではあるものの、穏便に済ませたい場合は支払うケースもあります。
交通事故などで加害者に損害賠償してもらう権利がある場合
相続では、被相続人の権利義務を承継します。
もし、交通事故などで加害者に損害賠償をしてもらう権利がある場合は、その権利も引き継ぎます。
被相続人が事故で死亡したことによる逸失利益や損害賠償などは、相続人全員で加害者に請求することになります。
労務災害の補償金の請求権も、相続財産に含まれます。
したがって、相続人は各分の持ち分に応じて、被相続人の請求権を行使することが可能です。
会社の独自の規定により支払われる補償金などについては、請求権者が相続人とは別のことがあります。規定を確認して下さい。
自殺の疑いをかけられてしまい保険金が下りない
保険契約では、契約成立後3年以内に自殺をした場合、保険金が支払われないことになっています。
保険会社の約款で、3年が2年に短縮されている場合もあります。
契約からあまり時間が経っていないのに亡くなったということで自殺を疑われてしまうと、自殺の疑いが晴れない限り保険金はおりません。
自殺の疑いを晴らすところからスタートしましょう。
まとめ
今回は、相続トラブルを12パターンご紹介しました。
できれば相続トラブルに巻き込まれず過ごしたいものですが、ご紹介した通り、かなりの部分に遺族の気持ちの問題がかかわってきますので完全に回避することは不可能です。
それではどうすればよいのかというと、まずはトラブルの芽を摘むために、遺言を残しておくことです。
また、自分たちの他に遺族はいないと思ったとしても、相続人調査をきちんとしましょう。
最後に、できれば相続が発生する前から、相続人間で万が一のことが起こった場合はどうするか話し合いをしておくことです。
紛争が起きそうになったら、弁護士を入れて話し合いをすることをおすすめします。(提供:相続サポートセンター)