遺産の相続や分割をする場合、トラブルになることはよくあります。
相続の際にトラブルとなるさまざまな事例について挙げ、どのようにしたら防げるのかについての予防方法や対策についてご紹介していきます。
被相続人である父親に保証人としての義務があった場合
被相続人が生前保証人だった場合、その義務は相続人に引き継がれることになります。
連帯保証以外の保証であれば、分別の利益によって保証人の頭数で割った保証債務についてのみの責任を負うことになります。
また、相続についても法定相続分に相当する割合についてのみ責任を負います。
保証債務の負担額が非常に大きい場合や保証債務の負担をしたくない場合、「限定承認」や「相続放棄」によって保証債務を実質的に免れることができます。
子供がいない夫婦の夫が亡くなり、夫の兄弟の子供が相続権を主張してきた場合
互いに初婚で子供がいない夫婦の配偶者(事例では夫)が亡くなった場合、相続は比較的シンプルですのでトラブルは少ないと考えられます。
ただし、事例のように夫の兄(既に夫よりも先に死去)の子供達が相続権を主張してくる場合があります。
この場合、兄の子供達には代襲相続権があるため、残された妻以外に夫の両親などの法定相続人がいない場合、兄の子供達はこの妻と共同相続人となり、相続権が発生します。
子供がいない夫婦がこの事例のようなトラブルを避ける方法になるのは、万が一のことを考えて互いに生前から遺言をしておくことです。
遺言の内容には配偶者に遺産を残す旨の内容とし、親がまだ存命中の場合はその遺留分を侵害しない範囲としておきます。
遺産分割協議が難航して相続財産を分割できない場合
財産の分割方法などをめぐり、相続人間で意見が分かれて遺産分割協議が一向にまとまらないということはよくあることです。
ただし、相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日」の翌日から10ヵ月以内ですので、残された時間には限りがあります。
もし、どうしても遺産分割協議がまとまらない場合には間に弁護士に入ってもらい、解決する方法があります。
ただし、それでもまとまらない場合や費用面などから別の方法を選択したい場合には家庭裁判所での「調停」、それでも上手くいかない場合には「審判」という手続きを選ぶこともできます。
調停はあくまで当事者間の話し合いによるものですので法的拘束力はありませんが、審判についてはたとえ当事者の誰かが審判で下された内容に反対しても拘束力を有します。
分割できない相続財産があって遺産分割協議がまとまらない場合
土地や建物といった不動産や動産などが相続財産となっている場合、そのような財産は分割することができません。
もし、そのような相続財産の分割方法をめぐって話し合いがまとまらない場合の方法としては、相続人全員による共有持分とするか、代償分割にすることが挙げられます。
ただし、共有の場合は共同相続人の1人がその財産を処分したいと考えても全員の同意が必要になるなどの制約がありますし、トラブルの原因にもなりかねません。
その代わりとなる対策として「代償分割」にする方法があります。
代償分割とは、相続人の中で特定の相続人1人に分割できない不動産などの全てを相続させ、その代わりにその相続人は他の相続人に金銭などで補てんする方法です。
この方法であれば思い出の詰まった家や土地などを手放さずに円満に分割することができます。
すべての相続手続きが完了した後で突然督促状が届き、どうしていいか困った場合
相続手続きが全て終わって納税も済ませた後で亡くなった被相続人宛ての督促状が届き、隠れていたローンの残債が発覚することがあります。
このようなトラブルを避けるには相続財産の調査をしっかりとおこない、相続財産が多い場合や複雑な場合には専門家に依頼するなどの対策も検討したほうがいいでしょう。
相続承認前の段階であれば前述のように「限定承認」や「相続放棄」を選択することもできます。
いずれにせよ、相続財産はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産についてもしっかりと調査することがトラブルを未然に防ぐうえで重要です。
実家で親の介護をしていたので実家を相続する権利があると主張する姉がいて話がまとまらない場合
相続人の中には生前から親と同居し、親の介護をしていた人もたくさんいます。
そのような人が自身の介護による寄与度合から実家を相続できるのは自分だけだと主張して譲らず、遺産分割協議がまとまらない場合があります。
結論からいえば、被相続人の財産を増やしたり、維持に貢献したりといったことがなければ、このような主張は認められません。
この場合、法定相続人は法定相続分を相続する権利があります。
ただし、親の介護をしたという寄与分を他の法定相続人が認めた場合、その分を多めに介護をした相続人に相続させると決めること自体は有効です。
事業承継がトラブルになっている場合
亡くなった被相続人の会社の未公開株の相続などの際、1人で経営陣として奮闘してきた長男に対し、経営にまったくタッチしてこなかった他の兄弟が経営権の承継を主張する場合があります。
このような場合、もしそれを許せば会社の存続自体が危ぶまれる事態も考えられます。
この場合事前にトラブルを避けるためには被相続人になる方が生前から遺言で承継人に会社経営に必要な資産を相続できる旨を残しておくことが重要です。
普段付き合いのない疎遠な相続人との遺産分割をする場合
この場合、最初の連絡から丁寧な説明を心掛け、トラブルを未然に防ぐように努めます。
もし、こじれそうになったら早めに弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
住所が不明な相続人がいる場合
相続人の中に普段付き合いのない方がいて住所が不明な場合、まずは相続関係者や親族に確認してみましょう。
それでもわからない場合、その方の現在の戸籍について「戸籍の附票」を取得すると現住所がわかりますので、手紙で知らせてみる方法があります。
不平等な内容の遺言がある場合
この場合、法定相続人には「遺留分減殺請求権」があり、法定相続人が最低限もらえるものと法的に認められる範囲で侵害された相続財産を渡すように主張できます。
遺言を残す立場の人にとって大切なのは、このような法定相続人の遺留分を侵害しない内容とすることです。
遺言の内容が実行されずに困っている場合
遺言があるにもかかわらず、その内容通りに遺産相続の手続きが行われない場合があります。
このようなトラブルを防止するには、できれば外部の弁護士などに「遺言執行者」を依頼し、確実に遺言通りに不動産や株式の名義変更といった必要手続きを行なってもらいます。
話し合いのテンポやスケジュール感が違いすぎて困る場合
相続人にはさまざまな性格や考え方の違いがあり、期限までに協議をまとめなければならないにもかかわらず、のんびり構えている方や反対に必要以上に早く終わらせようとする方もいます。
いずれにしても手続き完了までのスケジュールについてよく互いに情報共有し、上手くいかない場合には間に専門家を交えることも検討しましょう。
まとめ
相続時のトラブルになりやすい例を取り上げ、その対策についてご紹介してきました。
特に相続財産が多くて話が上手くまとまらない場合や時間がかかりそうな場合には早めに専門家に相談することも検討しましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)