揉めない相続,遺言書の知識,作成ポイント
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

自分の財産を誰かに引き継いでもらうためには、遺言書を作っておく方法が有効です。

ただし、十分に注意して作らないとかえってトラブルの原因になります。

遺言書の種類と注意点をご説明いたします。

遺言書の特徴

遺言書は、遺言者が亡くなった後の財産の処分について、被相続人の意思を相続人に残すものです。

遺言者の死亡後に効力が発生し、遺言者本人の意思に基づいて財産の分配が行われ、しかも受け取る側の意思とは関係なく手続きが進むことになります。

遺言書を作る際には、物事に対する一定の判断能力が備わっていなければならず、作成時点で、認知症などで判断能力がないと立証されれば、その遺言書は無効になります。

遺言者は、自分の自由な意思によって遺言書を作成でき、遺留分を侵害しない限りにおいて、遺言書に書かれた分配は、法定相続分よりも優先されることになります。

つまり、遺言者の意思が書かれた遺言書の効力は絶大だと言えます。

遺言書の種類

遺言書には、四つの種類があります。

まず「自筆証書遺言」です。

この遺言書は、自分で作成する遺言書です。

遺言者が、全文、日付、氏名を自書した上で、押印しなければなりません。

自書ですから、すべて自分の手で、手書きで書かなければなりません。

ワープロやパソコンで作成した遺言書は無効です。

この遺言書の最大の特長は、いつでも自分で作成できる点です。

また、特に費用も発生しません。

極論を言えば、紙とペン、印鑑があれば、作成可能です。

ただ、様式や内容の不備が生じやすい、相続の開始時には、家庭裁判所で検認という手続きを受けなければならない、偽造、変造、紛失の可能性があるなどのデメリットもあります。

二つ目は、「公正証書遺言」です。

この遺言書は、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、その内容を公証人が遺言書として作成するものです。

作成する際には、公証人がいる公証役場に赴く必要がありますが、全国どこの公証役場でも構いません。

また、病気などで公証役場に行けない場合には、公証人に主張してもらうこともできます。

公正証書遺言は2通作成され、1通は公証役場に保管され、もう1通は遺言者本人に交付されます。

ですから、遺言者が遺言書をなくしても再発行することは可能ですし、自筆証書遺言とは違い、偽造、変造、紛失の心配はありません。

また、法律のプロである公証人の監修の下で遺言書が作成されますから、様式や内容の不備もありません。

ただ、作成に当たって、公証人に遺言書の内容の相談ができませんから、弁護士や行政書士などに相談して作成しなければなりません。

したがって、弁護士などへの報酬、公証役場への支払いなど、金銭的な負担が発生します。

三つ目は、「秘密証書遺言」です。

この遺言書は、遺言者が自署、押印した遺言書を封筒に入れ、この封書を関係者(公証人と証人2人以上)に対して、自分の意思であることを申し出て、その関係者が署名、捺印するものです。

この遺言書は、必ずしも遺言者の自筆でないと無効ということではありません。

また、この秘密証書の修正について、遺言者がその場所を示した上で、変更した旨を付記してこれに署名し、その変更場所に捺印しなければなりません。

さらに、相続の開始時には、必ず家庭裁判所で、相続人、あるいはその代理人立ち合いの下、開封しなければなりません。

この遺言書のメリットは、遺言内容を秘密にできる点です。

公正証書遺言では、公証人や証人に内容がわかってしまいます。

しかし一方で、家庭裁判所での検認が必要である、手続きが煩雑で費用がかかる、要件の不備がある場合、効力を生じないことがあるなど、デメリットもあります。

四つ目が、特別方式の遺言です。

これには、死亡危篤者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言があります。

自筆証書遺言の注意点

揉めない相続,遺言書の知識,作成ポイント
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

最もトラブルが多い自筆証書遺言について、説明します。

自筆証書遺言は、すべて自分の手によって、手書きで書かなければなりません。

一字、一箇所でも他人が書いたり、パソコンなどを使ったりすれば、すべて無効です。

ですから、自分で一字一字書かなければなりません。

当然のことですが、一度下書きをした上で、ある程度時間をかけて書く方がいいでしょう。

また、日付が書かれていないと無効になります。

これは、複数の遺言書が見つかった場合に、最新のものを有効とするためです。

日付については、特定できる日であれば有効です。

「令和元年7月1日」はもちろん、「令和元年誕生日」でも構いません。

ただし、「令和元年7月大安」は、複数の日が存在しますから、無効です。

氏名は、本名はもちろん、通称やペンネームであっても、遺言者本人と同一性がみとめられれば、有効です。

押印は、実印である必要はなく、いわゆる三文判でも構いません。

また判例では、拇印でも有効となっています。

まとめ

遺言書は、遺言者が自分の意思を相続人などに伝える大切なメッセージです。

しかし、様式や内容の不備によって、かえってトラブルが発生してしまっては、本末転倒です。

遺言書のルールをよく理解して、作成することが大切です。(提供:ベンチャーサポート法律事務所