養子縁組は、結果として相続税の節税をすることができます。
ただし、節税目的での縁組は認められていませんので、ただ結果として節税できるということになります。
養子縁組は、長年介護をしてくれた息子の妻を養子にして、相続人にしたいという場合に使える手段です。
制度の概要と、相続税の節税になる仕組みをご説明します。
養子縁組とは
親子関係は、血縁に基づいて発生しますが、血縁とは関係なく親子関係を発生させる制度が養子縁組です。
養子縁組をすると、養親と養子という関係になります。
養子縁組は、普通養子と特別養子という制度があります。
それぞれ全く別の制度なので、まずはどちらの制度で養子にするのかというところから確認していきましょう。
普通養子
普通養子縁組は、一般的に言われる養子縁組のことです。
養親と養子の間に親子関係を発生させ、なおかつ養子のもともとあった血縁関係上の親子関係も継続させるという仕組みです。
養子は、養親との間での相続権を持ち、なおかつ養子の実親との間の相続権も持ちます。
普通養子は、養子縁組前の親子関係も維持されるので、万が一養親が養子の面倒を見ることができなくなったとしても、実親が扶養できるという制度です。
節税も視野に入れた養子縁組は、ほとんどの場合普通養子です。
▼普通養子の要件
普通養子の場合、原則として届出で足ります。
特別な許可は不要です。
当事者が養子縁組をしたいと考えていれば、自由にすることができます。
要件は以下の通りです。
- 養親が養子となる人の養親になる意思があり、養子が養親となる人の養子になる意思があること
- 養親が成年者であること
- 養子が尊属や年長者ではないこと
- 養親または養子が結婚している場合は、その配偶者の許可を得ること
- 後見人が被後見人を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要
- 結婚している人が未成年者を養子にする場合、夫婦ともに養親にならなければならない
- 養子が未成年の場合は家庭裁判所の許可が必要
- 養子となる人が15歳未満の場合は法定代理人が代わりに養子縁組について承諾していること
当事者の意思があることは当然要求されることですが、その他にも養子が未成年である場合は家庭裁判所の許可や15歳未満であれば法定代理人の承諾が必要など、多少ハードルが高くなります。
特別養子
一方、特別養子は養子と実親との間の親子関係を解消させ、養子と養親との親子関係を発生させる制度です。
特別養子は、実親が亡くなっても相続をする権利がありません。
もとの親子関係が消滅してしまう制度でもあるため、特別養子は普通養子よりも要件が厳しいです。
具体的な例としては、元の親が子どもを虐待していて育てることができないという場合に、元の親との親子関係をなくし、特別養子縁組をするということがあります。
この場合は、子どもの利益に焦点を当て、元の親子関係を消滅させたほうが良いと考えられた結果、特別養子縁組をすることがあります。
▼特別養子の要件
特別養子の場合は、基本的に子どものための制度なので普通養子と要件が異なります。
- 特別養子は原則として6歳未満であること
- 実の親の同意があること
- 実の親の看護が著しく困難または不適当であり、子の利益のために特に必要があること
養子縁組と節税の仕組み
なぜ、養子縁組をすると相続税の節税になると言われているのでしょうか。
大きな理由の一つは、相続人が増えるということです。
基礎控除の増加、死亡保険金の非課税枠の増加、死亡退職金の非課税枠の増加などを挙げることができます。
いずれも相続人一人当たりにつき、非課税枠や控除額が決まっているので、相続人の人数が増えれば増えるほど、非課税枠や控除額が増えるということです。
養子縁組の注意点
控除額・非課税枠の増加には制限がある
控除額、非課税枠を拡大したいのであれば、養子をたくさん取ればいいのではないかと思われる方もおられるでしょう。
しかし、実際は法律で制限がかかっており、実子がいない場合の養子は二人までしか法定相続人として認定されません。
実子がいる場合は一人までです。
節税目的で養子縁組をすることはできない
養子縁組は、相続税節税のための制度ではありませんので、節税目的で養子縁組をすることはできず、正当な理由が必要です。
子の妻がよく世話をしてくれたので、感謝を示すために法定相続人になってほしいという理由は、正当な理由といえるでしょう。
もとからの相続人に了承を得よう
ところで、養子が増えるということは法定相続人が増えるということなので、もともと相続人であった人からすれば自分の法定相続分が減ってしまう可能性があります。
養子をとる際は相続人に理解を求めましょう。
まとめ
今回は、養子制度と相続税の節税について説明しました。
相続税の節税目的の養子はできませんが、血縁はないが法定相続人になってもらいたいという人がいれば、活用できる制度といえるでしょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)