遺産を次の世代に承継する(相続)場合、そこに担税力(税金を払う能力)があるとみなされて相続税がかかることがあります。
相続税は全相続発生件数の中で限られた人にしかかからない税金ですが、申告・納付期限が「相続開始を知った日の翌日から10カ月」とされています。
つまり短期間でミスなく行わなければならない点で、一般の人にはハードルが高い手続なのです。
相続税の基本的な課税対象や申告の手順を確認しておきましょう。
1. 相続税とは何か
相続とは、人が亡くなった時に、その人の名義になっていたあらゆる財産や負債が、法定相続人(民法で定められた相続人)に引き継がれることです。
この財産の移転に対してかけられるのが相続税ということになります。
相続税は、引き継いだ財産の価額に基づいて税金を計算し、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に被相続人(亡くなった人)の死亡時の住所を管轄する税務署に申告・納付しなくてはなりません。
2. 相続税にある「基礎控除」とは
相続税がかかるかどうかの重要な分かれ目として「基礎控除」という制度があります。
基礎控除とは、「ここまでの範囲の財産には相続税をかけません」という基準の金額です。
相続税は、もともとの趣旨が「富裕層の相続の際に課税し、富を再分配する」というものですので、一定金額以上の遺産があるケースにのみ課すことになっているのです。
基礎控除の金額は、平成26年までは「5000万円+法定相続人の数×1000万円」でしたので、相続人が1人だとしても6000万円を超える遺産がなければかからないものでした。
ですから、日本全体で見ると「相続発生件数に対して2%から3%程度」にしか課せられておらず、「相続税は限られた金持ちの税金」という固定概念があったのですが、平成27年1月1日より、従来の6割にまで基礎控除が下げられたのです。
現在の法律では「3000万円+法定相続人の数×600万円」となっており、たとえば相続人が3人だった場合、基礎控除額は4800万円ということになります。
このように、都市部で不動産を持っているような人であれば、たとえサラリーマン家庭でも相続税の対象となりうる可能性が高まることになりました。
3. 申告する手順
正しい相続税申告のためには、遺産総額を正確に計算しなくてはなりません。主要な遺産の確認方法としてはこのように行います。
・預貯金については、被相続人が口座を持つ銀行等に「残高証明書」の請求を行う。
・不動産については、被相続人が所有する不動産所在地の市区町村役場(資産税課)で、「固定資産税評価証明書」または「名寄せ台帳」を請求する。また、法務局で「登記事項証明書」を請求する。
・株式などの有価証券については、取引のあった証券会社に明細を請求する。
・自動車については業者からの査定を取る。
被相続人のところに届いていた郵便物などをくまなく調べると、思いがけない銀行や証券会社、そして借金の証拠が見つかることもありますから、今まで把握していた所だけではなく、遺品を丁寧に見ていくことが大切です。
また、現金や預貯金は価額を把握するのが容易ですが、非上場株式や不動産については特に価額の計算が難しいところもあります(土地であれば路線価という基準を用いて、条件による補正をかけるなど)。
そのため、こういった財産がある場合、早めに税理士に任せるべきといえます。
遺産調査と同時進行で相続人確定のための戸籍取り寄せもしておかなければなりません。
戸籍は、被相続人の死亡から出生までを遡るため、戸籍の読み方を知っていなければ難しい面もあります。
弁護士や司法書士などが職権で代理取得することもできますので、財産調査を依頼した税理士から紹介してもらうなどして、そちらに依頼する方が早いでしょう。
相続人が確定したら、相続財産から基礎控除を除いた額を計算し、相続税を算出します。
4. 相続税額の計算方法
相続税計算の手順としては、まず相続財産をすべて調べて合計します。
死亡保険金など、遺産分割協議の対象にはならないが相続税の対象になる「みなし相続財産」、そして、相続開始前3年間の贈与金額も忘れずに入れます。
そして、借金や非課税とされる財産を差し引きます。
こうして相続税の対象になる金額を出したら、基礎控除額を差し引きます。
これが「課税遺産総額」ですが、これを法定相続分(民法で決まった分配の割合)で分けます。
そして相続人ごとに、法定相続分による取得金額に税率を掛けて相続税額を出します。
この相続税額の合計が今回の相続に対する相続税額になりますので、それを実際の相続割合により各相続人に分けていきます。
また、相続人ごとに税額が加算されたり控除されたりという条件が加わる場合もありますので、そのような事情を考慮して計算し、最終的な納付税額を出します。
4-1. まとめ
相続財産価額の確定や相続人の確定、相続税の計算に至るまで、そのプロセスはかなりややこしいものです。
申告・納付期間には制限がある上に正確さも要求されますから、相続開始後早めに着手することが大切です。 (提供:相続サポートセンター)