もし今身近な人に土地の相続をするとしたら、どのような手続きをすれば良いかご存知でしょうか。
今回は相続の手続きがどのように進められていくかについて、お伝えしていきます。
相続の手続きは、財産を分けるだけではなく、確定した財産を登記するという相続登記の手続きも必要となってきます。
1. 相続が起きたら?
相続が起きた場合には、まず事務手続きとして処理しなければいけないことがいくつかあります。
相続が開始してから7日以内には、役所に死亡届を提出しなければいけません。
また、遺言書がある場合には、遺言書の確認も行わなければいけません。
その後、相続財産の調査を行い、財産を承継するのか放棄するのか決定することになります。
相続開始から10か月以内に相続税の申告も行わなければいけませんので、早急に対応することが求められます。
相続手続きには、多くの場合専門家に相談される方が多いと聞きます。
1-1. 相続発生
相続が発生すると、土地の名義変更の手続きをすることになります。
亡くなった方の財産を相続人に移転させるには、(1)遺言書、(2)法定相続、(3)遺産分割があります。
それでは、これらの手続きについて順番に見ていきます。
1-2. 遺言書がある場合
亡くなった方が遺言書を残していた場合、原則として遺言書の通り財産が分けられることになります。
よって、相続が発生した場合には遺言書を探すことが財産を分ける第一の作業となるわけです。
遺言書の種類には、(1)公正証書遺言、(2)秘密証書遺言、(3)自筆証書遺言がありますが、一般的には(1)と(3)が良く利用されます。
(1)の公正証書遺言であれば、そのまま使用することが出来ますが、(3)の自筆証書遺言であれば、勝手に開封することは出来ず、家庭裁判所での検認という手続きを経なければいけません。
無断で開封してしまうと、罰金となってしまうことがありますので、十分に注意して下さい。
1-3. 法定相続の場合
法定相続とは、民法によって予め定められた相続の割合に従って相続することを言います。
法定相続は、以下の図のような法定相続人が定められた法定相続分の通りに相続することになります。
法定相続順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
第一順位 | 配偶者と子ども | 配偶者1/2、子ども1/2 |
第二順位 | 配偶者と直系尊属(父母や祖父母など) | 配偶者2/3、直系尊属1/3 |
第三順位 | 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/42 |
上位の順位の法定相続人が存在しなければ、下位の法定相続人に順位が繰り下げられることになります。
例えば、亡くなった方に奥さんがいるが子供がいなかった場合には、第二順位の「配偶者と直系尊属(父母や祖父母など)」を検討することになり、配偶者とご両親などが法定相続人となることになります。
1-4. 遺産分割の場合
法定相続ではなくとも、相続人の間で相続財産を分けることが出来るのが遺産分割です。
遺産分割によって相続する場合は、「遺産分割協議書」を作成することになります。
遺産分割協議書を作成するためには、一定の記載事項があり、相続人が同意した旨の署名・捺印がなければ有効とはなりません。
2. 土地を遺産分割するときには?
さて、先程遺産分割により土地を分ける方法についてご紹介しましたが、1,000円札を500円2枚に分けられる「現金」とは異なり、土地などの「不動産」は相続人の数に応じて分けることは難しいものです。
それでは、このような素直に分けることが出来ない土地を相続の場面において、分ける方法について解説していきます。
2-1. 現物分割
現物分割とは、不動産という財産をそのままの形で、ある相続人に相続させる場合を言います。
例えば、亡くなった方の財産が不動産1,000万円分と現金700万円あるとすると、亡くなった方の配偶者に不動産を、子供に700万円を分けるということが考えられます。
これは、不動産を遺産分割するにあたり最も分かりやすい方法であるといえます。
2-2. 代償分割
代償分割とは、相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して金銭を支払うことで分割する方法です。
例えば、亡くなった方の相続財産が1,000万円分の不動産しかなかった場合、配偶者が不動産を取得して、代わりに他の相続人に対して金銭を支払うことで相続財産の分割を図ることが考えられます。
相続財産が不動産のみであった場合などには、代償分割を選択することが有効ですが、代償として支払うための現金を用意できるかが問題となります。
2-3. 換価分割
換価分割とは、相続財産である不動産を売却して得られた現金を各相続人で分けるという分割方法です。
不動産は、現金とは異なり財産を分けることが出来ないものですから、その代わりに分けることの可能な現金に換えてしまってから、財産の分配を図るという意図があります。
例えば、1,000万円分の価値の不動産を売却して2人で500万円ずつ分けるという方法が考えられます。
不動産は分けることが出来ないという発想から、出てきた斬新な分割方法です。
2-4. 共有分割
共有分割とは、相続財産である不動産を相続人の共有として相続する方法です。
例えば、亡くなった方の不動産を相続人である配偶者と子供が名義を共にすることで分けるという方法が考えられます。
しかしながら、共有名義で取得すると、後々不動産の権利を移転することが難しくなってしまいますので注意が必要です。
3. 相続登記
相続により財産が移転した場合には、「相続登記」をすることになっています。
ここでは、どうして相続登記をしなければいけないのかその必要性について、相続登記の申請方法について、そして相続登記に必要な書類についてそれぞれお伝えしていきます。
3-1. 相続登記の意義とは?
上記で財産の分け方を確定させると、最後に登記を済ませる必要があります。
ここで登記をする意義について少しお話します。
土地などの不動産を取得したとして、それを自分のものであると主張するためには、誰にでも分かるように示さなければいけません。
消しゴムや鉛筆であれば、何とか自分の名前を書き記すことが出来ますが、土地などの不動産には自分の名前を書くことはなかなか難しいですね。
その代わりに、土地などの不動産には、「登記」という制度があります。
これにより、第三者にでもその土地の所有者を示すことが出来るようになります。
3-2. 法務局に申請する
登記をするためには、法務局に登記申請をする必要があります。
不動産の登記申請は、非常に複雑ですので、ご自身でされなくても司法書士という登記の専門家に依頼することも出来ます。
一方で、ご自身で相続の登記をすると、司法書士に依頼する分の報酬分を浮かせることが出来ます。
しかしながら、申請内容に不備があれば、法務局より申請内容の修正等の連絡が入ることがあります。
そういった申請内容の修正等のやり取りが面倒であれば、専門家に頼む方が確実といえるでしょう。
3-3. 相続登記に必要な書類
相続登記を申請するためには、添付書類としていくつかの必要書類を用意しなければいけません。
具体的には、(1)亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等、(2)法定相続人の戸籍謄本、(3)相続人の住民票、(4)固定資産評価証明書、(5)遺産分割協議書、(6)相続人の印鑑証明書、(7)(代理人に依頼する場合)委任状などを用意しなければいけません(ケースによってはその他の書類も必要となります)。
まず、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍等を取得しなければいけません。
更に、法定相続人となる者の現在の戸籍謄本も取得しなければいけません。
戸籍等を集めることにより、法定相続人であることを確定させるためのものです。
また、登記をしようとする者が本当に実在するのかどうかを確認するために、住民票も取得しなければいけません。
そして、登記を申請するためには、登録免許税を納付する必要があります。
その税金の計算のために必要となる情報が記載されているのが固定資産評価証明書です。
更に、財産分与の方法として遺産分割協議をした場合は、遺産分割協議書に加え、各相続人の印鑑証明書もつける必要があります。
4. まとめ
相続の手続きが起こった場合にはどのように動くべきなのかについて、土地の相続手続きの観点からご紹介しました。
土地の相続の場合、不動産という点を加味してどのように分けるのかがポイントとなります。
また、不動産の相続の手続きとしては相続登記を経なければいけませんので、想像以上に複雑な手続きが要求されます。
今回のような土地の相続手続きの場合には、税理士・司法書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
(提供:相続サポートセンター)