開業医
(画像=Jacob Lund/Shutterstock.com)

お金持ちの筆頭格であるお医者さん。社会的ステータスも高く、女性が結婚したいランキングでも常に上位に位置する。特に開業医となれば尚更だ。そんなお医者さんたちは実際、いくらくらい収入があるのだろうか。

厚生労働省が発表する「医療調査実態調査」に答えが隠されている。このデータをもとに、医者の年収を確認していこう。

厚生労働省発表の「医療経済実態調査」で医者の年収が分かる

厚労省が実施する医療経済実態調査とは、医療機関の経営実態を明らかにし、社会保険診療報酬に関する基礎資料を作成することを目的に、2年に1回の頻度で調査、公表されている。

対象は全国の病院や歯科医院、1ヶ月間の調剤報酬明細書の取り扱い件数が300件以上の保険薬局で、結核療養所や自衛隊病院などの特殊な病院などは除外している。調査事項は損益や利益率、給与がメインだ。

注目の民間院長(開業医)は3,000万円超え!

では、一般の病院の院長やそこで働く医師(勤務医)、開業医の年収はいくらなのか(以下、すべて2016年度の数値、賞与込み)。調査によると、病院長は2670万円、医師は1488万円、歯科医師は1242万円だった。医師は月収100万円超え、歯科医師も賞与を入れると月収100万円ペースだ。

病院の設立者別でみると、医療法人が設立した病院(民間)の院長は3160万円だった。国立病院の院長の平均年収は1971万円、公立は2065万円、公的病院は2245万円、社会保険関係法人は1925万円だった。このように並べてみると、やはり民間病院の院長先生の年収が抜きん出ていることが分かる。

年収3000万円だといくら手元に残るのか

年収3000万円の人は、いくら手元に残るのだろうか。所得税は累進課税なので、人によりけりだが1800万円から1900万円、6割くらい残ることが多い。月給に換算すると月150万円ぐらい、逆にいうと、月100万円ほど税金や社会保険料などを払っているということになる。

租税特別措置法で、社会保険診療収入が5000万以下のクリニックは、診療報酬の一定割合を経費として計上でき、税制上の優遇を受けることができる。中小の事業法人にも優遇措置があるが、実効税率が2割から3割程度なので、開業医は税制面で恵まれていると言えるだろう。

MS法人の存在でさらに高年収の可能性も

3000万円でも高額所得者と言って過言ではないが、民間病院の院長先生の場合、実際の年収はさらに高額である可能性がある。キーワードは「MS法人」だ。

一般的に医療法人は利益が出ていても剰余金を配当してはいけないルールになっている。そのため利益剰余金がどんどん貯まってしまい、事業承継の際に他大な相続税が課せられる可能性がある。

それを回避するために、病院の事務スタッフを派遣したり、院内の売店や薬局を運営したりするMS(メディカルサービス)法人を設立することが多い。こうやって医療法人が生み出す利益を外(MS法人)に吐き出しているわけだ。

MS法人を設立する理由は事業承継対策だけではない。MS法人で家族を雇うことで、家族に役員報酬を出すことができる(勤務実態があることが前提)。医療法人から生まれるキャッシュを家族や後継者に移転できるわけだ。

1人で1億円の所得を得るよりも、ファミリー4名で2500万円ずつ受け取ったほうが所得税が低くなるという所得税圧縮のメリットもある。

院長先生ファミリーの世帯年収は医療経済実態調査の数倍?

このようにMS法人を通じて、院長先生ファミリーは多額の所得が得ている可能性もある。院長先生ファミリーの世帯年収は医療経済実態調査の数倍になるではないかという指摘もある。仮に3倍だとすると1億円近くだ。病院院長がスペシャルな存在と言われる所以かもしれない。

文・THE OWNER編集部

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