世界中に店舗を持つマクドナルドは、なぜここまで大成功を収めたのか。マクドナルドの経営戦略やマーケティング手法は、中小企業の経営者にとっても参考になる。この記事では、マクドナルドの成功要因を、具体例を出しながら探っていき、成功にいたるまでの紆余曲折も紹介する。
目次
マクドナルドの成功要因を経営戦略から分析
まず、マクドナルドの成功要因を2つの経営戦略から分析する。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、競合他社より価格を下げて優位性を確保する経営戦略のことだ。アメリカの経済学者マイケル・ポーターが提唱した。
コストリーダーシップ戦略で重要なのは、安くても利益を出せる体制を整えることだ。単に価格を下げるだけでは利益が残らず、顧客を獲得できても経営が苦しくなってしまう。一定の利益率を維持しながら、商品やサービスを安く提供する工夫が重要といえるだろう。
マクドナルドでは、ハンバーガーの価格を抑えつつ、利益率の高いサイドメニューをセット販売するなどの工夫をしている。
ポジショニング戦略
ポジショニング戦略とは、商品と消費者のイメージを結び付け、独自の立ち位置を確立する戦略のことだ。マーケティング戦略家のアル・ライズとジャック・トラウトが著書の中で提唱した。
ポジショニング戦略に成功すれば、消費者の中におのずと商品のイメージが湧き、競合他社と比較されることなく消費者を獲得できる。
マクドナルドは「速くて安い」という立ち位置を確立した。例えば、出先で手軽に食事を済ませたいとき、近くのマクドナルドを探すという行動は、まさにポジショニング戦略が成功している証だ。普通ならば、消費者はまず近隣の飲食店を探し、比較した上で自分のニーズを満たす飲食店を選ぶだろう。
現代社会では、消費者は日々広告に触れ、数えきれないほどの商品に囲まれている。ポジショニング戦略は、情報社会で生き残るのに効果的な戦法といえる。
中小企業も応用できるマクドナルドのマーケティング手法を簡単に解説
続いて、マクドナルドの成功につながった3つのマーケティング手法について解説する。
テストマーケティング
テストマーケティングとは、店舗や期間を限定し、試験的に商品提供やシステムの導入を行って有効性を判断する手法だ。テストマーケティングなら、失敗を最小限に抑えつつ、さまざまな新しい取り組みにチャレンジできる。
マクドナルドは、マックカフェや夜マック、モバイルオーダーなどのさまざまな取り組みを、一部店舗で期間限定のテストを行ってから全国展開している。
キャンペーンやコラボレーション
マクドナルドは、キャンペーンやコラボに力を入れ、消費者を飽きさせない工夫を取り入れている。
自分の「推しバーガー」を選ぶ「マクドナルド総選挙」や、トッピングで味変を楽しむ「マックの裏メニュー」など、思わず興味をそそられるキャンペーンが実施されている。また、ポケモンやミニオンズなどさまざまなキャラクターとのコラボにも注力しており、ハンバーガー以外の要素で消費者を惹きつける工夫を行っている。
話題性のあるキャンペーンやコラボはSNSでも拡散され、ブランド力の向上につながるというメリットがある。
SNS活用
マクドナルドはSNSを効果的に活用している企業でもある。
2016年には新メニューの名前を募集し、Twitterでは「#名前募集バーガー」が話題になった。2020年には公式Twitterで「あぁー、、、お米たべたい」と突然ツイートし、その後ごはんバーガーの発売を告知し、匂わせと複線回収が面白おかしく受け入れられた。
そのほかにも、商品の写真を載せて「これ全部でいくらでしょう?」と尋ねるなど、見た人が思わず反応したくなるツイートが行われている。
なぜマクドナルドが世界的な成功を収めたのか?紆余曲折
マクドナルドの始まりは、マクドナルド兄弟が始めたハンバーガーショップだ。1954年にセールスマンのレイ・クロックが店舗を訪れ、ハンバーガーを素早く提供する体制に感動し、フランチャイズ展開で事業を成長させる話を持ち掛ける。その後、クロックの手によってマクドナルドは急成長し、世界100ヵ国に店舗を展開する巨大外食チェーンとなった。
マクドナルドが世界的な成功を収めた理由として、まずはマクドナルド兄弟の「商品の種類を絞り込み、短時間でスピーディに提供する」という尖った戦略があるだろう。そこに、レイ・クロックの「たった1つのハンバーガーショップに将来性を見出し、全世界に広める熱意」が加わり、マクドナルドは大成功を収めた。
しかし、成功には光と影がつきものだ。マクドナルド兄弟はフランチャイズ展開に消極的だったこともあり、レイ・クロックとは度々衝突している。最終的に、マクドナルド兄弟はレイ・クロックによって自分たちが立ち上げたハンバーガーショップすら失うことになった。
マクドナルドが度重なる不祥事を乗り越えて成功した理由
マクドナルドに対して、度重なる不祥事を乗り越えた企業というイメージを持つ人も多いだろう。
日本マクドナルドの歴史を振り返ると、2014年に期限切れチキンの問題がメディアで大々的に報じられ、その後も「ポテトに人間の歯」「ナゲットにビニール」など異物混入問題が次々浮上した。マクドナルドのイメージは失墜し、2015年には約350億円という巨額の赤字を計上した。
日本マクドナルドは状況を打破するため、CEO自ら47都道府県を巡り、全国のママから母親目線の意見を募る「タウンミーティング with ママ」を実施し、消費者の声を反映させる地道な努力を続けた。
その後、SNSでさまざまなキャンペーンを打ち出して消費者の興味をかき立てることに成功し、食の安全をアピールして接客の質の向上にも努めた。結果的に努力が功を奏し、日本マクドナルドはV字回復を遂げられた。
マクドナルドから学べる経営の原点
マクドナルドの取り組みを見ていると、世界的な大企業であるという優位性にあぐらをかかず、地道な経営努力を重ねていることが分かる。SNSという新しいツールを積極的に使いこなす姿勢や、経営者自ら消費者の声に耳を傾ける姿勢からは、多くの学びを得られるだろう。
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文・木崎涼