世界的に大きな成功を収めた企業の一つにアマゾンがある。ネット通販サービス企業として知られる同社だが、一般消費者向けだけでなく事業者向けのAWSなど、多様なビジネス展開で有名だ。本記事では、アマゾンが成功した要因や中小企業の経営に活用できる成功ポイントなどについて解説する。
目次
アマゾンの成功理由大きな要因3つ
アマゾンが成功した理由についてはさまざまな考察があり、細かい要因を挙げれば枚挙にいとまがない。中小企業経営者も意識すべき項目に限定して、大きく3つの要因に絞って紹介したい。
ジェフ・ベゾスが重要視した3つの価値
アマゾンを成功に導いた一つの要因が、創業者であるジェフ・ベゾス氏の存在だろう。
キャッシュフローを重視した「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)経営」に目が行きがちだが、何よりも「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」という企業理念のもとで掲げている以下の3つの価値観が成功の源泉だと考えられる。
・お客様を起点に考える
・It’s still Day One(「毎日がはじまりの日」という考え方)
・現状に満足せずに、常に今よりも上を目指す
柔軟な経営戦略によるビジネスモデルの拡大
アマゾンの始まりはインターネットでの書籍販売だが、現在にいたるまでビジネスの領域を拡大し続けてきた。
便利な買い物サービスという確固たる地位はそのままに、サブスクサービスのAmazonプライムによる動画配信をはじめとした追加サービスなど、一般消費者向けのサービスだけでなく、日本でも数十万社が利用する「AWS」のようなデジタルサービスの提供により、収益を拡大してきた。
全員がリーダーという視点
アマゾンのサービスを日々充実させている社員に対しては、「リーダーシップ・プリンシプル」で定められた14の基準のもと、個々人がリーダーという意識を持って行動するように求めている。
「お客様を起点に考える」という経営理念を軸とした14の行動規範があることで、社員は迷うことなく日々の業務に向かえるのだ。
アマゾンの成功を中小企業経営に活かすには?
アマゾンと同じ経営モデルを中小企業経営にそのまま活用するのは難しいが、成功した要素を自社の運営に組み込むことは不可能ではない。中小企業でも取り組める4つのポイントを紹介する。
顧客第一のビジネスモデルに注力する
どの業界でも言えることだが、収益を上げるには顧客に商品やサービスを提供する必要がある。どんなに自社が革新的で売れる商品だと考えても、消費者のニーズから外れていれば思ったほどの収益は上げられないだろう。
また、商品だけでなくカスタマーサービスにも不備があれば、SNSなどによってあっという間にマイナスイメージにつながる情報が拡散するため、積み上げた信頼まで一瞬で崩れかねない。
顧客第一を意識してビジネスを行って顧客満足度を高めることは、経営の基本でありながら欠かせない成功要因だ。
顧客データを徹底的に活用する
顧客第一のビジネスを行うには、自社が蓄積してきた顧客データの分析とサービスへの活用が必要だ。
例えば小売店の場合は、1日に何がどれくらい売れたかといった漠然としたデータではなく、以下のようなデータを分析して品揃えや接客方法を見直すなどの対策が取れるだろう。
・商品を購入した顧客の年齢層や性別
・時間帯や曜日別の来客者数
・来客者数に対する購入者数 など
経営者がリーダーシップを示し続ける
アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスのように、強いビジョンを持つのはもちろんだが、自社の経営理念に経営者の思いを込めて社内外で共有することも欠かせない。
経営理念は企業経営の上位概念に位置するため、経営理念が明確になっていなければ、経営戦略など具体的な行動方針が定まらない。アマゾンと同様に、分かりやすい言葉で言語化して欲しい。
自社にマッチする人材を採用することを優先する
アマゾンの人材戦略の基盤は「リーダーシップ・プリンシプル」であるが、自社のこのような考え方に対して共感できる人材の採用が欠かせない。
どんなに優秀な人材を中途採用し、新卒社員の人材育成に取り組んだとしても、元々会社の経営理念や社風などに共感していない人材では、職場の雰囲気まで損ねる恐れがある。
中小企業という小さな組織だからこそ、社員同士が共通の価値観を持ってポジティブな行動を取れる環境の構築が欠かせない。
アマゾンを参考に経営理念や人材戦略を言語化してみよう
アマゾンが大きな成功を収めた要因として、創業者のジェフ・ベゾス氏が定めて現在まで脈々と続いている経営理念や、「リーダーシップ・プリンシパル」という人材戦略に関わるメッセージ性の強い14の言葉が挙げられる。
経営理念や人材戦略に関わる言葉が明確に示されれば、社員は共通の目標を持って日々の業務に従事できる。経営者と社員の距離が近い中小企業こそ、まずは経営者の想いを言葉にして社員と共有してみてはどうだろうか。
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文・隈本稔(経営・キャリアコンサルタント)