少子高齢化が騒がれる日本。働くシニアの増加など、労働市場の多様化が進む一方、少しずつ世代交代も進みつつあります。10年後、経済社会の中心を担うであろう現在の20代~30代。この世代は俗に「ミレニアル世代・Z世代」などと呼ばれることがあります。 特に最近、デジタルリテラシーと絡めて特徴的に語られるのが「Z世代」。ビジネスの現場では「Z世代の特徴は〜」、「Z世代を対象とした企画が〜」などという話題を耳にすることも少なくありません。金融サービスの企画でもそういった話に触れた方は多いのではないでしょうか。 しかし、一般消費財とは毛色の異なる金融サービスの企画において、このように世代を一括りに考えてしまってよいのでしょうか? (ここではマクロ的な話は片隅に置いておきましょう…) この疑問を探るべく、編集部は「いわゆるZ世代ど真ん中」の4名の現役大学生に直撃インタビューを実施しました。 すると、よく耳にするZ世代の像とは少し違った、彼らの本音が見えてきました。
目次
「Z世代」のおさらい
「Z世代」とはアメリカの世代分類(日本で言う団塊の世代など)で付けられた1990年代半ば以降に生まれた方の事を指し、海外ではGeneration Zなどと呼ばれています。
日本では、いわゆる「ゆとり世代半ば」の方々が対象となります。
今後10年以内には働き手の多くを占める事になり、社会的にもマーケティングの文脈でも重要な世代と言われています。
2020年 日本の人口ピラミッド
ビジネス・ブレークスルー大学 専任教授 斉藤 徹『日本のZ世代を理解しよう』
各世代の主な新入社員時のタイプと特徴
公益財団法人 日本生産本部『新入社員意識調査』を基に執筆者作成
彼らの特徴として、主に以下のような点があると言われています。
・ デジタルネイティブと呼ばれ、スマホ、インターネット、SNSなどが当たり前にある世界で育ち、ITリテラシーが高い
・自ら積極的に情報発信する
・将来が不安。経済的な面では保守的
などなど。
巷で挙げられている特徴を改めて眺めてみると、Z世代のメンバーがいない我々編集部でも彼らと同じような考えを持っていたり、行動をしていたりする ことに気づきました。
昨今、Z世代というキーワードを主眼に置いた金融サービスを考えている私たちですが、世代を軸にしただけの進め方で果たして利用者に喜んでもらえるサービスに繋げられるのか…?
次の章からは、現役の大学生に直接話を聞きながら、この漠然とした疑念を少しでも払しょくしていきたいと思います。
現役大学生との座談会
祖父母だってSNSを使っている
-SNSはやはり当たり前に使っていますか?
A:使っています。コミュニティによって利用しているSNSが異なるので、相手に合わせて複数のSNSを使い分けています。
B:私もそうですね。LINE、Instagram、Twitter、Snapchat、など色々使っていますね。個人的にLINEはオフィシャル感が強く、メッセージを送ると重要感が出てしまうと思うので気楽に送れない。Snapchatのような後に残らない(設定すれば残すこともできます)SNSをよく使っています。
C:複数インストールをしていますが、メインで使っているのは連絡用のLINEくらいですね。 ただ、Z世代だから使っていると言われても正直ピンとこないです。祖父母ともLINEで連絡していますし…。
D:私も祖父母とLINEでやり取りしていますね。SNSについてはもう世代は関係ないと思いますね。ITリテラシーという文脈では、私は祖父母ほどではないですが、使いこなせてない部類だと自認しています。
-複数のSNSを使い分けるのは面倒ではないですか?
C:面倒ですけど、働いている方も相手の環境に合わせてコミュニケーション手段を変えますよね?Zoomで会話する場合もあれば、Skypeを使う場合もあると思うので、あまり気にしたことはないですね。
多様なコミュニケーション手段の存在が特有の感覚を生んだ?
-LINEがオフィシャル感が強いという感覚は無かったですね(笑)。メール世代なのでそれに比べれば相当気軽に使っていました。なぜオフィシャル感が強いと感じるのでしょうか?
B:履歴が残るからですかね。リアルな会話は、言葉を発したら残らないですよね?それと同じようにスマホ上にやり取りの履歴が残らないほうがリアルな会話と近い感覚があり、気軽に連絡できます。
A:わかる!今は初対面の方から「SNSのアカウントを教えて!」と言われるのは重たく感じてしまいますね。ちなみに、先ほど話に上がったSnapchatはコミュニケーション頻度などの関係性が可視化される機能も面白いと思います。
-関係性が可視化されるのは面白そうですね。SNSの情報により、購買意欲や人柄などを判断することはありますか?
A:SNSで連絡先を交換した後にフォロワー数や発信している内容をまず確認してどういう人なのかを気になって調べてしまうので、潜在的にその人の印象はSNSの情報に左右されてしまうかもしれない。だからこそSNSの「盛り方」を意識していると思いますし、ありのままの自分を表現する意味での裏アカウントを持つ人も多いのかなと感じています。
D:え、毎回確認しているの?私は他人のフォロワー数とか過去の投稿は確認しない。
-なるほど。人それぞれでSNSの情報をどのように活用するかは異なるものの、すぐに個人情報が確認できてしまう点で無意識的にご自身の判断に影響を与えているのかもしれませんね。
SNSが当たり前な時代における流行の広まり方
-先ほどSnapchatの話も出ましたが、いろいろなSNSが次々と登場していますよね。そのような中で、新しいSNSを利用し始めるきっかけを教えてください。
B:私は、自分で見つけて始めるという流れではなく、海外在住や帰国子女の友人が使っていて、その友人の紹介で使い始めました。そこから徐々に輪が広がっていく感じですね。
C:海外の友人ではないですが、私も周りの新しい物好きな友人が使い始めたことがきっかけで始めました。
-SNSの世界で「繋がらないことの恐れ(FOMO:Fear of missing out)」や「SNSいじめ」なども話題に挙がることも多いですが、気にされたことありますか?
A:気になる人はいるのかもしれないが、自分の周りにはいないし、気にならない。流行りのもの、例えばClubhouseとか話題になっているものは、流れに乗っておかないと自分が遅れているのでは?と気になることはある。
-なるほど。流行というキーワードが出たのでお伺いします。リモート飲み会はどう思いますか?
B:流行に乗ってやってみましたが、つまらなかった。リアルが絶対楽しい。
D:コロナ禍で授業もリモートで実施したが、これが毎日だと気が滅入ってしまう。やっぱり対面が好きだと改めて感じた。
学生と金融の距離感は縮まったのか?
-さて、我々編集部が携わっている金融に関して伺いたいのですが、「金融」と聞いたら何をイメージしますか?
A:銀行ですかね…。
D:それ以外だと投資とかですかね…。
-そもそも皆さん「金融」と関わりがありますか?
一同:ないですね。
B:銀行アプリも利用していますが、残高を確認する程度ですね。支店に行った記憶がないです。
D:私もATMでの引き出し以外では行ったことがないです。
A:私はスマホに全ての情報があるのが不安で、通帳を利用しています。定期的に銀行に行って記帳しています。それもATMでできるので、ほとんど皆さんと一緒ですが…。
C:サービス自体も何があるのか、正直よく分かっていないですね。
-そうですか。確かに皆さんの話を伺って思い出しましたが、私も学生時代はそんな感じでした(笑)。キャッシュレス決済は利用していますか?
B:利用しています。PayPayはよく使っていますね。
C:私もPayPayも含めた複数のアプリを使っています。
D:私もキャッシュレス決済は使いますが、iDをよく利用しています。わざわざアプリを起動して読み取ってもらう行為よりも、スマホをかざして決済が完了する方が楽だと感じています。また、クレジットカードとも連携できるので便利です。 でも、友人と飲み会費などを精算するときは、アプリを利用しているか?などと周りにいちいち確認するのが手間なので現金を使っています。
A:私は一応アプリを入れてはいますが、現金派ですね。
-世代は関係なく、学生時代は皆さんが話していただいたような金融との関わり方が多い気がしますね。Z世代の特徴として「将来への不安が強い」ということも言われていますが、お金への不安はありますか?
D:うーん、特段ないですね。社会人になれば「貯めなきゃ!」と動きだすと思いますが、学生時代は逆にお金を使って色々な経験をしたい。
C:留学とか目的があれば貯めますが、実家暮らしという最低限の保証があるので、そこまで不安は抱えていないですね。
A:一人暮らしをしている友人の中には、節約してギリギリの生活をしている人もいるので人それぞれだと思う。
B:確かに。そういった会話も周りではあまりしないですね。
まとめ 〜「Z世代だから」ではない〜
さぁ、ここまでお付き合いいただいた方は同じ感想を抱いたかもしれませんが、Z世代ではない我々から見ても、考え方や行動様式にそこまで大きな違いはないですよね?その時代ごとに、置かれた環境は違えども、学生時代は座談会に参加いただいた彼らと似たような気持ちだったなぁと感じる方も少なくないと思います。
今回の座談会でのポイントは次の通りです。
・SNSは世代に関係なく活用しており、Z世代特有ではない。
・ただし、SNSと共に青春時代を過ごした世代には、SNSにリアルな会話感覚を求める特有の価値観も存在する。
・巷で耳にするZ世代のSNSに対する姿勢や購買行動については、今回の座談会では特徴的なものは見られなかった。流行を発信していく新しい物好きな人(≒インフルエンサー)やマスメディアなどから情報を仕入れて広まっていく流れは、どの世代も大きくは変わらない。
・Z世代と呼ばれる括りの中にもSNSやリモートでのコミュニケーションにアレルギーを持っている人がいる。
(逆も然り、Z世代以外の中にもSNSやリモート環境を好み、活用している人がいる)
・金融には興味関心が薄い。それはZ世代特有ではなく、学生という環境によるものが大きい。
Z世代という括りをよく目にしますが、人口動態的に彼らがこれからのマーケットの中心となるのは確かです。
ただ、大切なのは「Z世代だから〜」ではなく、我々のようなZ世代以外の方々も含めて「より多様な世の中になった」ということだと思います。
これまで、黒電話からスマホに至るまで「技術の進展と普及」による文化の変遷がありましたが、その波に乗るかどうかは世代ではなく個人の好みや生活環境によるところが大きかったのではなかったでしょうか。
電話しかなかった時代は、電話が好きか嫌いかの2択でした。でもいまは、対面がいいか、電話がいいか、メールがいいか、SNSがいいかの時代。さらには、SNSの中でもLINEがいいか、Snapchatがいいか、といった多様な選択肢があります。
ただ、程度差はあっても、Z世代と呼ばれる世代以外の方々も、今日に至る世の中の変化の中で多様になった手段の中から「自分に合ったもの」と「所属するグループや相手に合わせたもの」を選択してきたはずです。
今回の座談会を通じて、Z世代はこうだ!と型にはめて決めつけて考えると、サービス/ビジネスの企画内容次第では、もしかしたら少しピント外れになることもあるかもしれないと気づかされました。
協力いただいた大学生には時間の限りもあり、深層心理までは迫れませんでしたが、今日話したことだけでも、私たちが机の上で描く”Z世代像”とのギャップを体感したのも事実。
もっと聞きたいことがたくさんあるのですが、続きはまた今度。
読者の皆さんも、学生さんにこんなことを聞いてみたい!と思っていただけたら、編集部にその声をお寄せください!
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