揉めない相続,イレギュラー,遺言書
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

亡くなった方の遺品を整理していたら、複数の遺言書を見つけた。

遺産分割が終わった後で、亡くなった方が知人に預けていた遺言の存在を知った。

相続人のひとりが遺言を隠していたことが分かったなど、イレギュラーな遺言書に対して、どのように対応したらよいのでしょうか。

遺言は遺産の分割協議より優先する

相続人全員の話し合いで合意した遺産分割と遺言ではどちらが優先されるかや、遺言の作成方法について確認しましょう。

遺言と遺産分割はどちらが優先?

相続は、遺言相続と法定相続の2種類あります。

遺言相続は、亡くなった方が遺言で指定した相続分に従って遺産を分割するものです。

法定相続は、遺言がない場合に、民法で規定する法定相続分を基に、遺産の分割協議を行って遺産を分割するものです。

遺言の内容が法定相続よりも優先され、遺言があれば、原則的に、遺言の内容にしたがって遺産を分割します。

遺言書の種類

主に自筆証書遺言、公正証書遺言が利用されています。

自筆証書遺言は、全てを自筆で書き記すもので、手軽に作成できるとの利点があります。

公正証書遺言は、公証役場において、公証人と証人2名の立会いの下で作成します。

作成の手間や費用はかかるものの、遺言書は厳重に保管されます。

遺言書が複数出てきた場合は後の遺言が有効

自宅で自筆証書遺言書を書いた上で、最終的に公証役場に出向いて公正証書遺言を残す場合や、自筆証書遺言を書き直す場合など、数通存在するケースもあります。

有効な遺言は?

こうした場合、遺言書の要件を満たしていればそれぞれ有効です。

ただし、内容が矛盾する場合には、日付が後の遺言によって前の内容が撤回されたことになるため、後に書かれている内容が有効となります。

ただし、撤回されたことになるのは、内容が抵触する部分についてだけで、遺言全体が撤回されることになるわけではありません。

遺言は何度でも書き直すことができ、記載した内容は、後の内容によって撤回することができます。

公正証書遺言の方が優先?

自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、有効なものなら、作成方法の違いによる差はありません。

内容の効力は、作成の前後関係で判断されます。

後に記載されたものが、有効となります。

遺言書が遺産分割後に出てきた場合、分け終わった遺産はどうなる?

譲り受けた不動産の登記手続きも終わったところに、遺言書が出てきた場合はどうなるのでしょうか。

亡くなった方が、第三者へ遺贈する遺言を残していた場合などは、その内容に従わなければなりません

遺産分割後に遺言書が出てきたときは、原則的に遺産分割は無効

あとになって有効な遺言書が出てきたときは、原則として先に行った遺産分割は無効となります。

このため、遺産分割をやり直すことになります。

遺言には、時効がありません。

何年も経ってから発見された場合でも、遺産分割より優先します。

遺言が、特定の財産や指定相続分を第三者に遺贈する内容である場合は、相続の資格者が増えることになります。

逆に、特定の相続人を排除するような内容の場合は、相続人が減ることになります。

また、相続人のひとりが遺言を隠匿していたような場合には、隠匿した相続人は相続欠格となり、相続権がなくなるため、同様に相続人が減ることになります。

出てきても、無効にならないケース

ただし、遺言と遺産分割で遺産を譲り受ける者に変わりがなく、相続人全員が合意している際は、遺言と異なる遺産分割も有効となります。

つまり、反対する相続人がいなければ、出現前に行った協議結果のままでよいことになります。

また、遺言によって新たに財産を受け取ることになる相続人や遺贈を受ける受遺者が、権利を放棄し、協議結果どおりで分割することに反対しない場合も、無効にはなりません。

遺言執行者として指定されている者も、相続人全員の合意があるときは、先に行った分割協議を認めることができるものと考えられています。

ただし、遺言の内容が、相続人の排除など資格に影響を与える場合は、相続人全員の同意がなされていても、分割協議は有効となりません。

子を認知する遺言なら、遺産分割は有効

子の認知に関する遺言の場合は、例外として、先に行われた遺産分割も有効となります。

相続人が増えることになりますが、認知された者は、価額賠償により金額で請求できることになります。

遺言内容の請求

遺言により、遺産分割には含まれない新たな相続人や受遺者が現れることや、遺産分割とは異なる相続分の指定がなされることがあります。

このような場合、遺言による相続の権利を主張するためには、相続回復請求権によって、記載されている内容の実行を求めることになります。

相続回復請求権では、個々の財産について請求をする場合だけでなく、遺産全体について包括的に請求することもできます。

話し合いがまとまらなければ、訴訟で請求することになります。

ただし、相続回復請求権は、相続権を侵害された事実を知ったときから5年が経過すると、時効によって消滅します。

また、相続開始の時から20年を経過した時には、侵害されたことを知らなくても権利は消滅します。

まとめ

自筆証書遺言は自筆で書き記すもので、手軽に作成できる反面、公正証書遺言に比べ紛失や偽造、隠ぺい、遺族に気付かれないなどの不都合があります。

なお、2020年7月1日から制度が変更され、今後は法務局で保管ができるようになることから、紛失や隠ぺいなどのリスクは低くなるものと考えられます。(提供:ベンチャーサポート法律事務所