揉めない相続,遺言書,作成方法,注意点
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

遺言書を作成する場合やそれが見つかった場合、どうしたらいいのかが分からないという方は珍しくありません。

そこで遺言書の作成方法や遺言書を見つけた場合の手続きや注意点についてご紹介していきます。

遺言書の作成方法

遺言の方式として大きく分けて、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「特別方式の遺言」の4種類があります。

この中で大半の遺言は、自筆証書遺言または公正証書遺言となります。

公正証書遺言は公証役場で公証人が作成する遺言状になるので、基本的に役場の指示に従って作成します。

費用はかかりますが、法律の専門家たる公証人が内容を確認して作成してくれますので、より確実に遺言を準備したいという方は公正証書遺言の作成の検討することをおすすめします。

自筆証書遺言については自由にいつでも自分で作成できるので便利な反面、守るべき書式や作成方法については厳密なルールがあります。

作成方法を間違えると自筆証書遺言の場合、無効になってしまうので注意が必要です。

そこで遺言書の作成方法について遺言の中でもっとも一般的な自筆証書遺言を取り上げ、作成する際に無効にならないようにするための注意点を以下に挙げていきます。

自筆で全文を書くこと

自筆証書遺言はあくまで全文を自筆で書くことではじめて有効になります。

パソコンや点字で書いたものやコピーは無効になってしまいますので注意しましょう。

ただし、カーボン紙を使って自筆の遺言書を複写したものについては筆跡確認ができるために有効になります。

具体的な日付を書くこと

自筆証書遺言では必ず日付を付すようにしましょう。

日付は年月日まではっきりとわかるように記載します。

「○年3月吉日」という書き方にすると日付が特定できず無効になります。

ただし、遺言と他の情報などから日付が類推で特定できる場合には有効になることがあります。

氏名を書くこと

必ず氏名を書くようにしますが、通称やペンネームでも有効になります。

押印があること

必ず押印あるいは指印をすることが必要です。

押印については実印でなくても認印や朱肉を指につけて押印する指印も有効です。

一方で絵のようなデザインの花押は最高裁で無効とされています。

なお、遺言が複数枚になる場合、契約書などで見られるような見開きのページとページの間に押す契印(割印)は必要ありません。

遺言はあくまで1人の遺言であること

1つの遺言に1人分の遺言を書くことが有効な遺言の条件になります。

1つの遺言に夫婦合わせて2人以上の遺言が書かれていると無効になりますので注意してください。

公序良俗に反しない内容であること

遺言は基本的に公序良俗に反しない内容であれば自由に作成することができるとされています!。

公序良俗に反する場合とは、遺言書の内容が法令等に違反する場合や違反とはならないものの、社会通念上著しく妥当性を欠く場合をいいます。

例えば、全財産を不倫相手に相続させるといった内容は社会通念上受け入れられない内容であり、公序良俗に反するために無効となる場合があります。

遺言書を見つけた場合の必要な手続きや注意点

自分の親や身近な方が亡くなった場合、予め遺言書のある場所を伝えられている場合や公正証書遺言などを除き、最初にすべきことは故人が遺言書を残していないかを確認することです。

そして、遺言書を見つけらたら次にすべきことは、「家庭裁判所の検認」と「遺言内容の実現」になります。

家庭裁判所の検認

遺言書を発見ないしは伝えられていた場所などから確保したら、公正証書遺言を除いて勝手に自分で開封してはいけません。

開封する前にそのまま家庭裁判所に検認の手続きのために提出します。

そして他の相続人あるいは代理人の立会いのもと、家庭裁判所で開封することになります。

家庭裁判所での遺言書の検認とは、遺言書の偽造や変造を防ぎつつ、遺言書を確実に保存する目的で遺言書の形式や状態を確認・調査する手続きのことです。

家庭裁判所のほうでは検認の手続きが完了すると、遺族の申し立てによって検認調書を作成し、検認済みの証明文書を遺言書に付してくれます。

検認の手続きとは、証拠保全と同じ意味合いの手続きにすぎません。

よって、家庭裁判所の検認の手続を済ませたからといって、遺言書の内容が有効であることの証明になるわけではありません。

なお、もし家庭裁判所に提出する前に勝手に開封してしまったとしても、遺言書がそれで無効になるわけではありません。

ただし、民法の規定によって5万円以下の過料が科される場合があります。

開封してしまった遺言書はそのまま家庭裁判所に提出し、検認の手続きを経ることになります。

反対に公正証書遺言の場合は元々公証人によって作成された公文書ですし、オリジナルは公証役場に保管されています。

つまり、手元にあるのはそのコピーですので開封しても問題ありません。

上記で開封する前に家庭裁判所に提出し検認の手続きを踏まなければならないのは、公正証書遺言以外の自筆証書遺言、秘密証書遺言、その他の特別方式の遺言になります。

遺言内容の実現

遺言書を発見後に家庭裁判所へ提出して検認手続きまで完了したら、次におこなう手続きは、故人の意思を尊重し原則として遺言書の内容を実現していくことです。

遺言書では相続人や遺産の分割方法の指定などの記載がありますので、その記載通りに遺産分割を進めていきます。

遺産分割は遺言書で遺言執行者を指定している場合はその者が遺言通りの遺産分割を進めていき、それ以外の場合は相続人で進めていくことになります。

なお、相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をおこなうこともできます。

まとめ

今回の記事では、遺言を作成する際の方法や遺言書を発見した場合の取扱い上の注意点についてご紹介してきました。

特に自筆証書遺言を作成する場合にはせっかく作成したものが無効とならないようにするためにも、事前にしっかりと作成上のルールを確認し、そのルールに従って準備していきましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所