相続人たる人々の関係性は実に多種多様なケースが考えられます。
実際に普段生活しているなかで把握している親族関係のみならず、相続手続きに入ってから戸籍を追っていったさきに新たに判明する親族がいても何ら不思議ではありません。
特に例年、離婚件数が増えていることもあり、バツイチでの再婚も珍しくは無い世の中になってきました。
そういったなかで、前婚の際に実は子供がいた、隠し子がいた、などというケースで異母兄弟が発覚するケースがあります。
また、前もって異母兄弟の存在が知られているケースもあるでしょう。
今回は異母兄弟の相続権をテーマに説明していきたいと思います。
1. 異母兄弟とは?
読んで字のごとく、父親は一緒であるが母親が別の兄弟関係であり、腹違いの兄弟ともいえる関係になります。
また、母親は一緒であるが父親が別の兄弟姉妹である異父兄弟なるものも存在します。
相続権発生における根本的な考え方は双方ともに一緒です。
2. 異母兄弟には相続権があるのか?
端的に結論だけ申しますと異母兄弟にも相続権が発生します。
ただし、非嫡出子の場合、養子縁組または認知がなされていないと、戸籍の上でも赤の他人となりますので、その場合は相続権が発生しない点に注意が必要です。
3. 異母兄弟の相続分は?
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2が法定相続分となります。(民法900条4項ただし書き後半)
よく半血の兄弟姉妹とか全血の兄弟姉妹という言い回しがありますが、半血の兄弟姉妹というのは、父母の片方だけを同じにする兄妹(先妻の子など)を指し、全血の兄弟姉妹というのは、被相続人(故人)と父母を同じにする兄妹のことを指します。
該当の相続人が、半血の兄弟姉妹か全血の兄弟姉妹かによって法定相続分に違いが発生します。
具体的な例を挙げて実際に金額で当てはめると下記のようになります。
-
例)相続財産が1000万円、相続人は配偶者と全血の兄弟姉妹2名、半血の異母兄弟1名と仮定した場合
法定相続分は、配偶者が3/4、全血の兄弟姉妹である長男A・長女Bがそれぞれ1/10、半血の異母兄弟の次男Cが1/20となります。
配偶者:750万円
A:100万円
B:100万円
C:50万円
4. 間違えやすい類似のケース
平成25年9月4日に最高裁判決によって、これまで嫡出子の1/2とされていた非嫡出子の相続分の規定は違憲とされました。
そして、同年の12月に民法の改正がなされ、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同一となった件についてご存知の方も多いかと思います。
この判決と間違えやすいのが、先に述べた半血の兄弟姉妹の相続分の1/2という論点です。
上記の判決で改正された部分と良く似ておりますが想定場面がまったく異なりますので、混同しないようにしてください。
民法に素養がある方は、民法900条4項ただし書き前半と、ただし書き後半との違いと言ったほうがピンとくるかも知れません。
また、法定相続分が全血の兄弟姉妹の1/2となるのは、被相続人(故人)に子ども、孫(直系卑属)も親(直系尊属)もいない場合で、法定相続人が兄弟姉妹の場合に限ります。
全血の兄弟姉妹、半血の兄弟姉妹ともに共通の親が亡くなった場合に関しては、被相続人の子供として相続が発生します。
よって、この場合には法定相続分の違いは発生しないので、こちらも同様に間違いのないよう相続関係の明確化が重要です。
5. 最後に
以上、異母兄弟の相続権についてご説明致しました。
冒頭でも述べましたが、相続が発生したあとに相続人を確定させるために戸籍を遡っていくと、思いもよらないところから新たな相続人が発見されることがあります。
異母兄弟にしかり、そういった場合には相続でのトラブルが後を絶えません。
円満な相続手続きを実現させるためにも、最低限の正確な相続知識の習得は無駄にならないと思います。
また、専門家である下記に記した相談窓口によって、より詳細で多角的な判断やアドバイスが期待できると思いますので、併せて自身の相続知識の肥やしにしてみてはいかがでしょうか?
(提供:相続サポートセンター)