相続財産の中でも主要な物と言える不動産ですが、建物については自宅用、貸家として所有するものなどが混在していることもあり、それらは評価方法が異なります。
不動産の評価は他のものと比べて難しい部分がありますが、主要な評価基準として使われるのが「固定資産税評価額」です。これをどのようにあてはめていくのかを見てみましょう。
1. ☆固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、市区町村が評価するその土地建物の価格で、3年ごとに評価替えがされ、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税などの計算の基礎になっているものです。これを建物の相続税計算の際にも1つの基準として使っているのです。固定資産税評価額はその不動産が存在する市区町村の資産税課に保管されているため、所有者本人や委任を受けた代理人、本人死亡後は相続人が窓口で「固定資産税評価証明書」の取得を請求することによって確認することができます。固定資産税評価額は大体、その不動産の時価に対して7割程度の価額になっていることが普通です。
2. ☆建物の財産評価額の確認方法
では具体的な評価方法を見てみましょう。住宅、店舗などの家屋は「倍率方式」という評価方法がとられています。これは、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算する方法ですが、家屋の倍率は全地域1.0倍と定められています。つまり固定資産税評価額=相続税評価額となっています(マンションの場合でも同様です)。
なお、建築中の建物については固定資産税評価額がないのですが、「費用現価」の70%相当額という基準があります。費用現価というのは、課税時期(相続開始日)までにかかった建築費用を、課税時期の価格に計算し直したものです。たとえば、建築費総額が3,000万円の家屋で全体の半分が完成している場合は、3,000万円×0.5=1,500万円が費用現価となります。
家屋にはガスや給排水、衛生設備等の附帯設備がありますが、これらは家屋と一体化しているとして家屋の価額に含まれますから、別に評価額を計算する必要はありません。
ただ、門や塀などの設備、庭木、庭石、庭池などの庭園設備は独立した価値を持っているものとして家屋とは別に評価することになっています。門や塀については、再建築(評価時に新たに建築すると考えた場合の費用)から、建築時から課税時期までの償却額(時間の経過とともに価値が減っていくと思われる価額)を差し引いて、それに70%を掛けた金額を評価額としています。また、庭園設備については、その設備の再調達価額(課税時期において、その設備を取得する場合の価額)に70%をかけた金額で評価します。再建築価額を基準にする場合、資材等の価格が上昇していることにより建築費が高くなることもありますが、そのような場合はたとえ建築から年数が経過しても評価額が下がらないこともあります。
では、他人に貸している家屋についてはどうでしょうか。自分で使用する家屋に対し、他人に使用させている家屋はその分だけ所有者の使用に制限がかかっていると考えることができるため、借家人の権利の分だけ評価額が減額されています。
貸家の価額は、自分で使用する家屋の評価額(つまり固定資産税評価額)から借家権割合(30%)を差し引いた金額になります。つまり、貸家は自用家屋の70%評価ということになります。
また、ビルなど複数の世帯や事業所が入れるような建物を所有し、一部を自宅用、その他を賃貸用にしている場合もありますが、そのようなケースでは固定資産税評価額を自宅部分と賃貸部分の床面積割合で配分して計算します。
逆に、家屋を借りている人の持つ権利(借家権)は「権利金」などが取引されている地域以外では相続財産として評価しません。
まとめると、このような評価計算になります。
自宅は、固定資産税評価額=評価額
貸家は、固定資産税評価額×(1-借家権割合)=評価額
自宅用と賃貸用が混在している家屋の実際の計算例を見てみましょう。
固定資産税評価額が3,000万円、借家権の割合が30%、各フロアの床面積が同じで1階と2階が貸家、3階が自宅になっている建物を想定してみます。
自宅部分は、3,000万円×3分の1=1,000万円
貸家部分は、3,000万円×3分の2×(1-0.3)=1,400万円
この家屋全体の評価額は、1,000万円+1,400万円=2,400万円となります。
2-1. ☆まとめ
このように、建物の評価は固定資産税評価額ということになるため、相続財産を現金で保有しているよりも建物に換えた方が大きな節税となることもあります。借り入れをして債務が増えることにより節税になると考えている人もいますが、それだけではなく、固定資産税評価額は建築費に対して50%から70%程度になることが多いため、現金で購入したとしても評価が大きく下がるのです。
さらに、上記のように賃貸住宅では評価を下げることもできますが、やはり建物を新たに建築するとなると大がかりなことになりますので、専門家のアドバイスを受けながら慎重に計画することが大切です。(提供:相続サポートセンター)