土地,固定資産税
(画像=This Is Me/Shutterstock.com)
内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
税理士・公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

土地などを持っていると、毎年固定資産税が課税される。「固定資産税評価額」をもとに税額が決まるが、毎年市役所や町村役場から送られてくる納付書で、何の疑問も持たずに払っている人も多いだろう。マイホームや土地などの購入する前に、不動産の基礎知識として固定資産税は押さえておきたいところだ。

目次

  1. 固定資産税とは
  2. 不動産の固定資産税はいくらかかる?
  3. 固定資産税の調べ方は?
  4. 持っている不動産の固定資産税を安くする方法はある?
    1. 住宅用地の課税標準の特例について
    2. その他の特例について
  5. 不動産以外の固定資産税について

固定資産税とは

家や土地を買うと、固定資産税が課税される。毎年1月1日時点で、その固定資産を所有している人(所有していると市役所や役場が把握している人)に対して課税される。自治体によって異なるが、毎年4~6月ごろに納税通知書が送られてくる。

固定資産税の税額は、基本的に「固定資産税評価額」×1.4%で計算される(地域により、条例で別の税率を定めている場合がある)。都市計画法による市街化区域内に土地や家を持っている人に課税される「都市計画税」や、家や土地を取得したときに課税される「不動産取得税」、不動産の登記をする際などに課税される「登録免許税」も、固定資産税と同じく固定資産税評価額をもとに計算される。

不動産の固定資産税はいくらかかる?

では、「固定資産税評価額」はどのように決まるのだろうか。固定資産税評価額は、土地や家屋などをそれぞれ、どのように評価するかを定めた「固定資産評価基準」をもとに、各市町村が物件を一つずつ確認して決められる。

土地は、その時価の7割程度が固定資産税評価額の目安だ。ただし、その土地の場所(市街地なのか、郊外の村落地帯なのか、山奥の過疎地域なのか)や面積、形状、道路へどのように通じているかなどによって評価額は変わる。

建物は、新築時は工事代金の5~6割程度が目安と言われているが、規模や構造、築年数などによって評価額は変わる。土地と違って建物には経年劣化があるため、年を追うごとに評価額は下がっていく。なお、固定資産税評価額は3年に一度評価替えされる。

土地の評価額は、一般的に公示価格や路線価を参考にして市区町村が定める。一般的に、公示価格の7割程度になることが多い。家屋の評価額は、「再建築価格方式」によって算出される。再建築価格方式とは、「同じ建物を同じ土地に建てたらいくらかかるか」を試算し、現時点での建築価格を求める方法だ。建築価格を算出した後、経年劣化分を考慮して評価額を計算する。

計算式は、「家屋の評価額=評点1点あたりの価額×床面積×単位面積あたりの再建築評点×経年劣化補正率」だ。「評点1点あたりの価額」は、家屋の資材費、労務費の地域格差などを反映して算出する。家屋の固定資産税評価額は、購入金額の7割程度になることが多い。

本来であれば、新しい評価額をもとに計算された税額を納めるべきだが、評価替えによって税額が急に増えることがある。変動を一定の範囲にとどめ、ばらつきを解消し、税額が急増するのを防ぐため、負担調整の制度が設けられている。

2018年度から2019年度においては、前年より税額が1割以上で市町村等の条例で定める割合を超えて上昇する場合には、その超えることとなる税額相当分を減額する措置が講じられている。

タワーマンションの建設ラッシュに伴い、単純に床面積割で固定資産税を課税することに対する疑義が生じるようになった。階層によって、実際の市場価格には大きな差があるからだ。これが相続税や贈与税などの節税に利用されていたため、居住用超高層建築物(高さが60メートルを超えるタワーマンションなど)に対する課税が見直された。

高さが60メートルを超えるタワーマンションなどの建物のうち、複数の階に住戸があるものについては、建物全体の固定資産税額を按分する際に用いる専有部分の床面積を「階層別専有床面積補正率」で補正する。

階層別専有床面積補正率(%)は、N階の場合は「100+10/39×(N-1)」となる。補正後の専有部分の床面積を、住戸部分の床面積(補正後)の合計で除した値で税額を按分する。

家屋の固定資産税については、同じ床面積であっても同じ評価額になるとは限らない。建材や設備などにコストがかかっている家ほど、固定資産税評価額は高くりやすい。木造より鉄筋コンクリート造の家のほうが評価額が高く、キッチンやシステムバス、トイレなどの品質や大きさ、数なども影響する。

固定資産税の調べ方は?

所有している土地や家などの固定資産税評価額を知りたい場合は、毎年送られてくる納税通知書に付いてくる「課税明細書」を参照するといいだろう。そこには、家なら1棟ごと、土地であれば1筆ごとの固定資産税評価額が載っている。課税明細書を紛失してしまった場合は、市役所や町村役場で「名寄帳」を取得すれば、課税明細書と同等の情報を得られる。課税通知書に「価格」もしくは「評価額」と記載されているのが、固定資産税評価額だ。

課税明細書には上記以外にも様々な金額が記載されており、その一つに「課税標準額」がある。通常、家屋の価格と課税標準額は同じだが、土地の場合は住宅用の特例措置やその他の負担調整措置などで調整されるため、課税標準額は固定資産税評価額よりも少なくなることがある。これらを混同しないように注意してほしい。

現在所有している土地や家屋の固定資産税は納税通知書や課税明細書を見ればわかるが、家屋を建てる計画を立てている段階で固定資産税評価額を知ることはできないのだろうか。事前に固定資産税評価額がわかれば、購入後の収支計画も立てやすくなる。

新築住宅を購入する場合、土地については前の所有者や不動産業者、ハウスメーカーなどから確認できるが、どんな家になるか決まるまでは家屋の固定資産税はわからない。概算で算出することはできるが、実際の税額とはずれが生じる。中古家屋の場合は土地の場合と同じで、すでに固定資産税が発生しているので、不動産仲介会社などを通して確認できるだろう。

持っている不動産の固定資産税を安くする方法はある?

固定資産税は賦課課税方式であり、現況に対してある程度機会的に課税されるため、固定資産税が軽減される特例を知っていないと、損をしてしまうおそれがある。ここでは、固定資産税の特例をいくつか見ていこう。

住宅用地の課税標準の特例について

住宅家屋の敷地になっている土地は家屋の床面積の10倍までを限度として「住宅用地」となり、課税標準が減額されるため固定資産税が軽減される。店舗などとの併用住宅の場合には、全体の床面積に対する居住用としての床面積の割合によって適用される比率が決まる。なお、別荘の敷地は住宅用地としては認められない。

住宅用地として認定された場合は、小規模宅地(住宅1戸あたり200平方メートルまでの面積)については6分の1に軽減され、一般住宅用地(住宅1戸あたり200平方メートルを超え、床面積の10倍まで)については、3分の1に軽減される。

ただし、この特例の特例として「空家の除却を促進するための住宅用地の課税標準の軽減の適用除外」がある。「空家等対策の推進に関する特別措置法」に規定された「特定空家等」のうち、必要な措置を講ずるよう市町村や特別区から勧告を受けた土地については、住宅用地の課税標準の軽減特例の適用対象から除外される。そのため、勧告されれば思わぬ税負担が生じることになる。

特定空家とは、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」のうち、「①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上棄権となるおそれのある状態」「②著しく衛生上有害となるおそれのある状態」「③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」「④周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」のいずれかに該当するものだ。

ただし、勧告を受けた場合でも、固定資産税が課される基準日である1月1日までに建物を改修するなどの措置をとった場合は、住宅用地の課税標準の特例の適用が継続される場合がある。

その他の特例について

2020年3月31日までに新築した住宅家屋が一定の床面積などの要件を満たす場合、新たに課税される年度から3年度分(3階建て以上の耐火建物・準耐火建物の場合は5年度分)、固定資産税が減額される。これを、「新築家屋の税額軽減の特例」という。

120平方メートル相当分までの居住部分に相当する固定資産税の2分の1が軽減される。長期優良住宅の普及促進法の施行後に長期優良住宅に認定された住宅家屋については、それぞれ減額の適用期間が2年度分延長され、5年度分となる。もちろん、3階建て以上の耐火建物・準耐火建物の場合は7年度分の軽減となる。

この特例の特例を受けるためには、新築をした年の翌年の1月31日までに、申告書に長期優良住宅の認定を受けて建てられたことを証明する書類を添付して、市町村の税務課へ提出する必要がある。

「一定の床面積等の要件」とは、自己居住用住宅の場合は、50平方メートル以上280平方メートル以下、貸家の場合は40平方メートル280平方メートル以下であること、併用住宅などの場合は居住用の部分が全体の床面積の2分の1以上であること、区分所有権の場合は専有部分の2分の1以上が居住用である必要である。

また耐震を目的として一定の要件を満たす改修工事を行った住宅は、固定資産税(120平方メートル相当分まで)が1年度分、2分の1減額される「耐震改修促進税制」もある。一定の要件とは、「1982年1月1日以前に建てられた住宅で、現行の耐震基準に適合する耐震改修を行って、耐震改修費用が50万円超」であることだ。

バリアフリー改修工事を行った住宅に適用される、「バリアフリー改修促進税制」もある。バリアフリー改修工事を行った住宅は、翌年分の固定資産税額(100平方メートル相当分まで)が1年度分、3分の1減額される。対象は65歳以上の者、要介護または要支援の認定を受けている者、障害者のいずれかに該当する人が住んでいる家屋で、賃貸住宅は対象外だ。また、バリアフリー改修工事費用は50万円以上でなければならず、工事の内容にも一定の制限がある。

災害などで不動産の価値が大きく低下している場合も、特例的な課税がなされることがある。たとえば東日本大震災の際は、市長村長が津波によって甚大な被害を受けた区域として指定した区域内の土地・家屋については、固定資産税・都市計画税が課されなかった。翌年も、一部を除いて原則固定資産税・都市計画税は課されなかった。

また東日本大震災で家屋が滅失・損壊し、更地となった土地については、住宅用地に関する特例を継続して適用した。代替の土地や家屋を令和3年3月31日までの間に取得し申請した場合は、固定資産税・都市計画税・不動産取得税が軽減される制度もある。

これは特例ではないが、まれに固定資産税評価額が誤っていることがある。固定資産税評価額は、特に家屋について登記後に自治体の担当者が1軒ずつ訪問し、確認したうえで決められているので、担当者のミスで評価額が不当に高くなっていることがあるのだ。

ミスであるかどうかを確認するためには、同じエリアの似たような土地家屋と固定資産税を比較する必要がある。毎年4月1日から固定資産税の最初の納期限までの間、固定資産税の納税者が自分の土地や家だけでなく、他の納税者の土地や家屋の固定資産税評価額を見ることができる「縦覧制度」が設けられており、各市区町村にて閲覧することができる。そこで、他の不動産と大きな乖離を見つけた場合は、審査を申し出るといいだろう。

不動産以外の固定資産税について

土地と家屋以外にも、固定資産税がかかるものがある。それは、償却資産だ。償却資産とは、土地や家屋以外で、会社で使用しているパソコンやコピー機、備品など、時間の経過とともにその価値が減少していくものを指す。ほかに、各種製造設備や医療機器、航空機、船舶などが該当する。

税務上固定資産として計上するものの多くが該当するが、自動車税の対象となる自動車、特許権などの無形固定資産は対象外だ。償却資産については、毎年1月1日時点で所有している償却資産の取得年月、取得価格、耐用年数などを市区町村に申告し、それをもとに課税される。

このように、固定資産税は単純なように見えて例外も多く、同じ土地でも利用方法や建物によって税額が変わるなど、非常に複雑な制度だ。他の税金と違い、収入状況に関係なく毎年かかる税金だけに、気になることがあれば、身近な税理士や不動産業者などの専門家に相談することをおすすめする。

文・内山瑛(公認会計士)

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