事業承継,経理
(画像=echoevg/Shutterstock)

事業承継が成功し経営の後継者が決まったとき、次に起こる問題が経理の世代交代です。たとえばファミリービジネスでは多くの場合、経営者の妻が経理担当者です。経営者が経営の一線を退くタイミングで妻も経理から引退し、誰かに経理業務をバトンタッチしたいと考えます。経理は会社の内部情報が全て詰まっている部署。

このような繊細な情報を引き継ぐにふさわしい人が見つからず、前任の経理担当者がなかなか引退できないなど、引き継ぎがうまく行かないと悩む経営者が増えているのです。

事業承継後に直面する経理の問題

事業承継には欠かせない下記の3つの見える化があります。

・事業の見える化
・資産の見える化
・財務の見える化

問題となるのは「財務の見える化」で、 専門家に依頼し一時的に見える化させているケースが多いのです。事業承継後は、「継続して素早く見える化」させる必要があります。安定した経営を運営するには経営状況を素早く把握することは欠かせません。確度の高い経営判断を下すためには経理処理の質が重要なのです。

一方で経理は「誰でもできる」と安易に考えられることが多く、それによって起きる問題があります。ここからは事業承継後に直面する経理の問題について具体的に解説します。

経理の後任の育成

前任経理担当者が引退できない理由のひとつに経理の後継者が育っていないことがあげられます。冒頭でもお伝えしたとおり、経理は繊細な情報を扱う部署です。従業員の給与金額や銀行の印鑑の管理など取り扱いを厳重にしなければならないものがいくつもあります。

このような経理のコア業務を引き継ぐ場合、身内や知り合いに経理を依頼することも。しかし「信頼できる」に重きをおくため、その人が経理についてあまり詳しくない場合があります。それゆえ社員の給与振込額間違いや取引先への請求漏れなどのミスを連発し、前任経理担当者がなかなか安心して引退できないといったループができています。

給与額や請求書関連の経理業務は会社の信用問題にもかかわります。そのため前任担当者がなかなか引退できず後任担当者を指導することになるのです。

事業承継後にベテラン経理担当者が退職

後任の経営者と相性が合わず、事業承継後に経理担当者が退職してしまうケースもあります。このような場合、退職する経理担当者が長い間経理を1人で担当していたということも珍しくありません。

そうなると長い年月をかけて経理が属人化しており、感覚で経理業務をこなしてしまっていることも。このような場合は経理業務が見える化されていないため引き継ぎに膨大な時間が必要となります。

引き継ぎが完了するまで前任経理担当者が会社に残ってくれるかどうかは交渉次第ですが、スッパリといなくなった場合、経理の機能がストップし信用問題にもかかわりかねない事態になります。

経理作業が複雑で後任経理担当者が定着しない

最近の経理はITの力で業務を大幅に効率化することができます。一方で手書き伝票、各種帳簿、小口現金、手形取引などアナログな方法で経理を行なっている企業も数多く残っているのが実情です。

経理という部署はそもそも保守的で、他社の経理プロセスがどのようになっているのか情報交換する機会もほぼありません。そのため時代に合わない業務の方法でも、前任の経理担当者から引き継いだ業務を淡々とこなしている場合が非常に多いのです。

たとえば30年前に引き継いだ債権管理方法が手書きだったため、エクセルで管理するようになったことを「効率化した」と言っている場合もあります。実は今の時代、会計ソフトに仕訳を入れれば債権管理はシステム内で自動的に作成してくれます。

このように経理がアナログすぎると業務が無駄に多い状態になり、人的ミスも起こりやすくなります。せっかく後任の経理担当者が決まっても経理業務が複雑すぎるがゆえにミスが起きやすくなり、居づらくなって退職してしまうというケースもあります。

まとめ

事業承継がうまくいっても、経理がきちんと機能していなければ会社の信用はなくなってしまいます。事業承継後に多くの経営者が経理の採用・引き継ぎで「うまくいかない」頭を抱えています。

まずは経理業務を見える化し、業務プロセスをシンプルにしておくことで経理のこの問題を解決に近づけることが可能です。事業承継を考えているタイミングで、経理の採用・引き継ぎについても考えておきましょう。

(提供:税理士法人M&Tグループ

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