揉めない相続,価値評価,遺産分割,動産
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

人が亡くなった場合、故人が所有していた財産は全て相続財産として、相続人に承継されます。

ところで、これらの財産は、預金や不動産などばかりではありません。

衣服や日用品、アクセサリー類、貴金属、書籍類、趣味で集めた物、美術品など、数多くの動産類も相続財産に含まれることになります。

そこで、このような動産類を遺産分割に際してどのように処理するべきかが問題となります。

動産の評価の必要性

(1)評価の必要性

相続が開始された場合、相続財産について、その価値がいくらなのかを評価する必要があります。

その理由は2つあります。

1つめは、その評価額によって相続税が課せられるか否か、また、相続税を課せられる場合でも税率がいくらなのかを決定する基準になるためです。

2つめは、実際に遺産分割を行う際に、民法が定める相続分と、遺産分割により各相続人が実際に取得する財産の価額とを比較する際の基準とするためです。

相続財産を現物分割する場合、各相続人が取得する財産の評価額を厳密に相続分と一致させることは困難であるとしても、できるだけその評価額が相続分に適合するようにすることが好ましいのは言うまでもありません。

(2)動産の取り扱い

このように、相続財産については、できる限りきちんとその評価額を算出して、それを相続財産の評価額や遺産分割における相続分に反映させることが好ましいのですが、現実には、動産について適切な評価が行われていないのが現実です。

一般的に動産は不動産などと比べると評価額が低いこと、また、動産については厳格に調査しようとするときりがなく、目録を作るだけでも困難を極める可能性があるなどの理由から、一部の相続人が勝手に処分したり、廃棄したり、形見分けと称して自ら取得したり他人に与えてしまうなどの行為がなされることが往々にしてあります。

しかし、個人の所有していた動産の中には、相応の価値を有する物が含まれていたり、一つ一つはそれほど価値がないとしても、まとめれば相応の価値を有することとなる物もあります。

また、それらの動産の中には、他の相続人にとって思い入れのある物品があるという場合も考えられます。

したがって、一部の相続人がそれらの動産を勝手に処分したり、廃棄したり、第三者に譲渡するなどの行為は、後々の相続人間のトラブルとなったり、遺産分割における障害の原因となる危険があります。

動産についても可能な範囲で、全て財産目録に明記し、それらを遺産分割の対象とするか否か、形見分けとして他の人に贈与するか否かも含めて、相続人全員の承諾を得て行うべきです。

動産評価の方法

相続財産の評価は、基本的に財産評価基本通達に従って行うことになります。

(1)一般動産

一般動産とは棚卸し資産や、美術品・骨董品等以外の動産で、機械、運搬具(自動車などのことです)、什器・備品、その他これらに準じる動産をいいます。

一般動産は売買実例価格によって評価されます。

ここでいう売買実例価格とは、その物と同じ種類、同程度の経過年数の中古品の市場価格という意味です。

つまり、同じ種類で同程度の物を中古品として購入するとした場合の価格となります。

ただし、中古市場価格が分からない場合には、新品の価格から経過年数に応じた償却を行った後の金額として評価されることになります。

また、個々の食器などのような1個または1組の価格が5万円以下の物については、まとめていくらという形で算定することも認められています。

(2)書画骨董品

書画・骨董品などは、販売実例価格と、専門家の評価額を総合的に判断して評価額を決定するとされています。

(3)貴金属類

貴金属類については、財産評価通達は特別に定めていないため、基本的には一般動産と同様に売買実例価格によると思われます。

ただ、金地金などのように取引相場があるものについては、その取引相場によって評価額を決定すべきでしょう。

まとめ

以上、相続財産における動産の取り扱いについて見てきました。

本文でも述べましたが、相続が開始した場合、不動産や預金や有価証券などについては相続財産として認識しているのに、動産については相続財産とは考えずに勝手に処分したり、自分の物としてしまうなどの行為が往々にして見られます。

ただ、そのような行為は、後になって相続財産の評価全体に大きな影響を及ぼすことになったり、また、相続人間のトラブルの原因になったりする危険があります。

動産についても、被相続人の財産として相続財産に含まれるものであるということをしっかり認識して、きちんと遺産分割等の処理を行う必要があります。(提供:ベンチャーサポート法律事務所