サイコパス
(画像=Benoit Daoust/Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者は職業柄、数多くの年収・億超え社長と一緒にビジネスをしたり、プライベートでのお付き合いをさせてもらったりしてきた。彼らの中には、20代・30代という若い世代もいれば、50代・60代と中年期の方もいる。

様々なビジネス、年代の「稼ぐ力を持った社長」にはある共通点がある。それは「サイコパス気質の持ち主」ということだ。筆者の実例を元に取り上げていきたい。

サイコパスビジネスマンとはなにか? 打たれ強くリスクを好む

ビジネス上のサイコパス気質とは、リスクを積極的に取りに行き、良く言えば打たれ強く、悪く言えば厚顔無恥で、感情に流されずロジック重視で利益を取りに行く気質のことを言う。

サイコパスと聞くと、シリアルキラーなどのような「凶悪犯罪者」を思い浮かべる人もいるかも知れない。だが、筆者がここで述べるビジネス界における「サイコパス」というのは、決してそうではない。

つまりサイコパスビジネスマンとは、様々なことに思い悩み、不安で動けず相手に遠慮してしまう感情的な人間とは対極にいる存在のことなのだ。

利益追求主義すぎる月収2,000万円の社長

筆者は過去に、月収2,000万を稼ぎ続ける肉食系の社長と一緒にビジネスをしたことがある。筆者がビジネスのコンセプトやコンテンツを制作することになり、社長はマーケティングを担当した。

彼のLine@読者は数万人規模に及び、その読者は過去に彼の商材を買い続けているロイヤルカスタマー揃いだ。ロイヤルカスタマーとは、忠誠心の高い顧客のことである。そこに魅力的な商材を投下すれば、ロイヤリティの高い彼らはすぐに買ってくれそうな空気が漂っていた。

筆者はコンテンツ制作をするにあたり、非常に気を遣いながら完成度を高めていた。というのも、顧客は自分が集めた人たちではなく、彼らは社長の信用力で集めたものである。万が一にも、コンテンツの内容に不満をもたせてしまうと、社長の信用を落としてしまう事になりかねない。そのため、自分のビジネス以上に気を使いながらコンテンツの制作に全力投球をしていた。

だが、彼は「完成度は60%でいいですよ。8割の人はコンテンツを使い倒す前に挫折するだろうし」という。また、筆者が「サポートの人員を厚くしませんか?この人数だと少ない気がします。スーパーサポート、と銘打っているからにはきめ細やかでスピーディーな対応が必要だと思う」というと、「大丈夫。問い合わせに人員を割いても利益にはならないし、どうせみんな使いません。電話窓口もないのだから、多少待たせてもいい」という。

筆者は途中で降りてしまったが、制作したコンテンツを社長はリリースしたのである。手前味噌ながら、コンテンツはかなり評価が高かった。ただ、商品をリリース直後、社長は第2、第3とどんどんコンテンツを投下しようという。顧客が消化しきれないほどのコンテンツを投下することで、次々と買わせて「成果が出ないのは、ちゃんとやりきらないあなたが悪い」という免罪符のためだという。彼は代わりの人員を探し出し、今もコンテンツを配信し続けている。

おだて尽くして用が済んだらポイ

また、プログラミング事業の若い社長とも仕事をしたことがある。彼は人当たりが大変よく、周囲からの評判も抜群に高い。筆者も彼に魅力を感じて、一緒に仕事をさせてもらった。

一緒に仕事をしていると、不自然なほど褒めちぎられることに気づいた。「あなたは素晴らしい。最高だ」「よければ、高額のフィーを支払わせて欲しい。あなたのことを他の人にも紹介して恩返しをしたい」と。今考えれば単に持ち上げられていただけなのだが、「温厚でいい人」という世間の印象通りの彼と仕事をしている間はそのことに気づかなかった。

筆者は相手が望む以上の仕事を納品し、彼からのフィードバックを待った。1週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎたが彼はその後何も連絡はない。フィードバックを待っている間、一度だけ連絡をしたら「今忙しいのでもう少し待って欲しい」と言われた。が、筆者は悟ったのだ。「ああ、いいように使われたのだ」と。

筆者の成果物を持って、彼は意気揚々に「こんなに素晴らしいものを作った」と自分の手柄にし、周囲は「いいですね!」と評価する。温厚で人当たりがよく、いい人というイメージしかなかった彼から、相手に期待をもたせて用事が済んだらポイ、という残酷な一面を持っていることを教わったのだ。

もちろん、こうした人ばかりではなく、誠実な社長はたくさん存在するし、筆者もお世話になった。だが、中には世間的な印象はいいのに、付き合ってみると彼らのようにサイコパス気質だった、という社長も存在するのは事実である。「誠実」「いい人」という「だけ」ではビジネスを生き残り続けるのは難しい。こうしたサイコパス気質こそが、サバイバル能力の高い社長の条件と言えるかも知れない。

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)

無料会員登録はこちら