正しい相続手続き,不動産,預貯金,節税
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

相続対策を行う中で多くの方が懸念されるのが相続税の支払い額についてではないでしょうか。

近年、相続税額を少しでも抑えるために有効な方法として、不動産を取得することが注目されています。

不動産は高額な資産ですが、本当に相続税対策として有効といえるのでしょうか?

早期に効果を上げる方法として不動産は有効です

相続税対策というものは、現在ではさまざまな手法が講じられています。

この相続税対策の分類法の一つとして、「期間」を挙げることができます。

すなわち、長期的な視野をもって対策を講じる手法、そして短期的な視野をもって対策を講じる手法があります。

不動産は相続税対策の一つとして考えられますが、実は期間の分類上では、短期の相続税対策として機能します。

不動産の価格は非常に高額であることから、一見長期的に考えるべきものかと思ってしまいそうですが、短期的に効果があるというのは非常に嬉しいことです。

以下では、具体的にどのような点で短期的な効果を受けることができるのか見ていきたいと思います。

節税のための特例を利用するための面積要件を確認しましょう

不動産を保有しておくことで得られる相続税制上のメリットの一つとして、「小規模宅地等の特例」があります。

小規模宅地等の特例とは、「被相続人と一緒に住んでいた土地を相続したのであれば330㎡までは80%減額する」というものです。

この小規模宅地等の特例を活用すると、最大100坪までの土地に対して適用をすることができます。

そのため、これに目をつける資産家の方々は、100坪以上の土地を購入し、相続に備えるという訳です。

資産家の方々はさまざまな理由で住む場所を変えることがあります。

例えば、高級マンションには眺望性があり、ゆっくりと住むには快適な場所であるといえるでしょう。

しかしながら、そのまま住んでいると、相続時の評価価額が高額になってしまいます。

小規模宅地等の特例をうまく活用した二世帯住宅のケースをご紹介します。

息子夫婦が両親と住むために200坪の宅地を取得し、その上に二世帯住宅を建築したとしましょう。

この場合、相続の際に、最大適用限度部分となる100坪の宅地部分に対して、小規模宅地等の特例を利用することができます。

つまり、父親の死亡時及び母親の死亡時の2度制度を利用することができます。

このように、複数世帯で同居することによって、相続税を抑えることができるというメリットはあると考えられるでしょう。

小規模宅地等の特例の制度を利用したいと考える人は少なくないようで、高級物件であるにもかかわらず、制度の対象となる良い条件となる不動産を購入するために、「売却待ち」の状態になっているようです。

特に、麻布・白金台・学園前・芦屋・白壁等高級住宅街のエリアでは、高値取引にて宅地不動産の購入競争が進んでいるといわれています。

上記事例においては、特定居住用宅地等の条件に当てはまれば、80%もの減額がなされることになりますので、非常に有効的な節税対策となるということができるでしょう。

例えば、1億円で購入した200坪の評価額が1億円であったとしましょう。

このとき、要件を充足しているとした場合、2,000万円となります。

本特例を使用しやすいようにするために、複数世帯が同居しておくというのもこのように節税対策としては有効に機能するといえるのかもしれません。

相続税対策として賃貸建物を所有する

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相続対策として、この他に賃貸建物を所有するという方法が挙げられます。

現在住むための住宅は別にあるでしょうから、自宅の他に建物を建てるということになるのが通常です。

このままでも問題ありませんが、可能であるならば複数所有している自己所有の土地に賃貸建物を建てるのがよいでしょう。

不動産は、土地と建物に分かれることになりますが、土地も自己所有で所有していた場合には、他人所有の場合と異なり、お金もかかりませんし、始めやすいといえるでしょう。

不動産に関して相続税を計算するための評価額は、一般的に取引に用いられやすい時価ではなく、国税庁の通達に基づき、路線価方式もしくは倍率方式によるとされています。

不動産の相続税評価額を出すためには、固定資産税評価証明書の8割掛けにより算出するものとされています。

ところが、ここで不動産を賃貸にすると、この評価額がさらに抑えられることになります。

建物を賃貸に出している場合、その土地の評価額から30%×路線価図をもとにした借地権割合を控除することができます。

また、建物部分についても評価額より30%の借家権割合を差引くことができます。

例を挙げて考えてみましょう。

貸家建付地の路線価が100万円、建物面積が400㎡であり、借地権割合が40%、借家権割合が40%、賃貸割合は60%であるとしましょう。

この場合、土地の評価額は、4億円(=100万円×400㎡)となります(ただし、補正率については、ここでは考えないものとします)。

ここから、貸付建付地の評価額は、3億6,160万円{=4億円×(1-40%×40%×60%)}となります。

つまり、貸付を行うことにより、3,840万円(=4億円-3億6,160万円)もの減額をすることができるという訳です。

ただし、メリットばかりではなく、同時にデメリットについても考慮をしなければいけないでしょう。

実際に、不動産賃貸物件を建てるためにも、それなりのきちんとした設備を用意しなければいけませんので、相応にコストがかかりますし、時間も要します。

そのため、せっかく賃貸物件を建てたにもかかわらず、全然人が入らないという空室リスクもよく検討しなければいけないでしょう。

節税目的ばかりに走ってはいけません

先ほど少しお伝えしましたが、賃貸建物を最もリスクを抑えて建築するためには、自用地に賃貸建物を建てることが望ましいと考えられます。

当然ながら、自己所有土地をお持ちでない方の場合には、新たに土地を取得するための手続きを踏まなければいけません。

しかしながら、不動産のメリットとして、評価額を大幅に抑えることができるということは何度もお伝えしている通りです。

しかも、それは取得直後であっても、原則として効力が生じることになります。

ところが、不動産による節税志望者の中の数多くの方が見落としがちなリスクがあります。

それは、節税ばかりに目をとらわれすぎて、不動産返済の計画をないがしろにされていらっしゃる方も多いと聞きます。

不動産という資産は、当然ではありますが、誰もが簡単に購入できるほどお手頃な買い物ではありません。

節税目的に利用するとはいえ、事前にきちんとシミュレーションを行って、問題ないことを確認の上に、不動産を取得するようにしましょう。

まとめ

今回は、節税目的に不動産を活用することの有効性を検討してきました。

結論としましては、不動産節税のために用意された特例を活用することにより、大幅な節税効果を享受することができます。

ただし、最後にも書きました通り、節税だけに気をとらわれて不動産を購入することは、後々の返済リスクを考えると危険でもありますので、よく計画を立てたうえでご検討いただければと思います。(提供:ベンチャーサポート法律事務所