人手不足やコロナ禍などの影響により、大手や中堅企業に比べて、小さい会社の人材雇用はさらに厳しくなっている。求職者の価値観や求職活動の方法が変わる中で、人材採用活動の進め方に迷っている経営者も少なくないだろう。本記事では、小さい会社の人材採用が難しい理由や、小さい会社だからこそアピールすべき情報、採用活動の具体的な取り組み方などについて解説する。

目次

  1. 小さい会社の人材採用が難しい理由4つ
    1. 1.労働力人口が減って売り手市場になっている
    2. 2.自社のことを知らない人が多い
    3. 3.就職や転職することに対する不安やリスク
    4. 4.人材獲得のためのノウハウがない
  2. 小さい会社が人材採用のために必要なアピールすべき情報
    1. 経営者についての情報
    2. 自社事業の目標や今後の展望
    3. 自社で働くことのメリットやデメリット
    4. 社員が感じているやりがいや楽しさ
    5. 自社で描けるキャリアパスについて
  3. 小さい会社の人材採用で取り組むべきこと
    1. (1)企業自体のブランディング活動
    2. (2)経営者が採用活動の前線に立つ
    3. (3)リファラル採用制度を導入する
    4. (4)採用目標に合わせた求人サービスの選定
    5. (5)就職フェアや転職フェアなどに積極的に参加する
    6. (6)大学などへの訪問活動やインターンシップの実施
  4. 小さい会社だからこそ経営者が採用活動の前線に立とう
小さい会社は人材採用で何をアピールすべき? 募集活動のポイントも解説
(画像=BLUEBOEING/stock.adobe.com)

小さい会社の人材採用が難しい理由4つ

小さい会社の人材採用が大手や中堅企業に比べて難しい理由は、大きく4つある。

1.労働力人口が減って売り手市場になっている

日本は少子高齢化が進んでおり、労働力人口の減少が続いているため、求職者に対して採用側の企業数が多い「売り手市場」の状況だ。

『中小企業白書・小規模企業白書(2022年版)』によると、中小企業の人手不足は依然として深刻な状態が続いており、コロナ禍以降はさらに状態が悪化している。

リーマンショックやコロナ禍などの外部環境が悪化した時には、小さい会社ほど人材の雇用が難しい状態になりやすく、人が減り続ける中では満足のいく採用活動ができる企業は限られるだろう。

2.自社のことを知らない人が多い

自社の事業内容や魅力はもちろん、会社の存在自体を知らない人が多いため、そもそも求人への応募がないという会社も少なくない。

小さい会社は、大手企業に比べて自社の宣伝などを行う広報力が劣る傾向にある。SNSの普及などもあって訴求する手段は増えているが、広報に費やすリソースが限られているため、効果的な宣伝を継続することが難しいのが理由の一つだ。

3.就職や転職することに対する不安やリスク

就職や転職において、求職者は企業の経営安定性を少なからず意識する傾向にあり、小さい会社で働くことにリスクを感じることも少なくない。福利厚生の充実度はもちろん、スキルアップなどの育成面や将来的なキャリア形成に対する不安が、小さい会社を敬遠する理由の一つであり、採用活動を困難にしている。

4.人材獲得のためのノウハウがない

小さい会社ほど採用活動の経験が少ないこともあり、そもそも人材獲得をするためのノウハウが蓄積されていないという課題もある。自社が欲しい人材に求人への応募を促す方法はもちろん、応募者の中から必要な人材を見極める採用試験の実施にも苦慮している。

小さい会社が人材採用のために必要なアピールすべき情報

小さい会社の採用が難しい大きな理由が、「人から知られていない」「就職・転職することにリスクを感じられている」という点である。

具体的な採用活動を行う前に、これらの課題を払拭する必要があり、そのためには自社についての情報を求職者に伝えることが欠かせない。ここでは、人材採用に必要なアピールすべき情報をいくつか紹介する。

経営者についての情報

小さい会社が必ずアピールしなければならないのは、経営者についての情報だ。

企業規模が小さいほど経営者と社員の距離は近くなるため、求職者側は「この経営者と働きたい」と思わない限り、求人に応募してくることはないだろう。

経営者の情報については、経歴だけでなく人柄や会社への想い、社員とどう関わっているかなど、「経営者の人となり」がイメージできるような情報が必要だ。

自社事業の目標や今後の展望

自社事業の数値目標や今後の展望など、会社の歴史や現状だけでなく、将来的な目標を共有することも欠かせない。求職者は、会社の具体的な未来が見えないと自分が働く姿を想像できないため、応募につなげることは難しいだろう。

事業目標に限らず、それに伴う社員の雇用数の目標や人材育成計画など、経営者の理想でもいいので、まず発信することが肝要だ。

自社で働くことのメリットやデメリット

大企業や中堅企業にはない、自社のメリットやデメリットも発信する必要がある。

近畿経済産業局の調べによると、就職活動を行う学生が中小企業に持つ魅力には「雰囲気がよさそう」「自分の能力や強みが発揮できそう」「人間関係がよさそう」などが上位に入っている。

近畿掲載産業局『学生に響く中小企業の魅力発信』
引用:近畿掲載産業局『学生に響く中小企業の魅力発信』P.2

これらの魅力が自社にあるのかを振り返った上で、仕事内容や職場の雰囲気はもちろん、独自の福利厚生や育成の制度などをアピールすることが大切だ。

自社のデメリットはそのまま伝えて終わるのではなく、それ故に得られるメリットも示すことを忘れてはいけない。

「人数が少ないので業務負荷がかかる」ならば、「その分だけスキルアップできる」「人数が少ないからこそ迅速にサポートを受けられる」などのメリットも伝えよう。もちろん、メリットが嘘にならないように注意が必要だ。

社員が感じているやりがいや楽しさ

経営者側から見たメリットだけでなく、実際に働いている社員が感じている仕事のやりがいや自社で働く楽しさもアピールできると、求職者の興味や関心を引きやすいだろう。

従業員満足度調査の一環として社員の声を集めれば、裁量権の高さや売上への直接的貢献度の実感、家族的な雰囲気など、さまざまなやりがいや楽しさにつながっている言葉が出てくるかもしれない。

自社で描けるキャリアパスについて

自社に入社することでどのような「キャリアパス(蓄積できる経験や昇進のルートなど)」が描けるかを示すと、求職者は就職や転職した後の将来的な展望を描きやすい。

自社で生き生きと働いて成果を出している社員のこれまでの行動事例(ロールモデル)を、入社から現在に至るまでの役職や担当業務の推移などと共に伝えるとイメージしやすいだろう。

創業して間もない会社ではロールモデルの提示は難しいかもしれないが、想定される昇進や昇級のスピードや習得できる経験、スキルなどは開示すべきだ。

小さい会社の人材採用で取り組むべきこと

小さい会社は採用活動にかけられるリソースが限られており、ノウハウの蓄積も少ない。だからこそ、人材採用活動はポイントを絞りながら効果的に活動することが求められる。

ここでは、小さい会社だからこそ取り組むべき採用活動のポイントについて紹介する。

(1)企業自体のブランディング活動

自社の知名度を向上させるためのブランディグ活動は、採用活動の一環としても重要である。

自社ウェブサイトの作成やアピールすべき情報の掲載、ターゲットとなる年齢層が利用しているTwitterやInstagramなどのSNSやYoutubeなどでの情報発信は、比較的取り組みやすい活動だろう。

地方企業の場合は、地域経済誌への掲載やテレビ取材などが知名度の向上につながりやすい。また、自社の経営活動や商品、サービス、社員の育成制度などの紹介に「PRTIMES」のようなプレスリリースサービスを活用するのも有効だ。

(2)経営者が採用活動の前線に立つ

小さい会社だからこそ、採用活動の前線に経営者が立つことも大切だ。採用面接に参加するというだけでなく、自社の将来展望にあわせた採用方針をしっかりと示し、ブランディング活動に自ら参加して社員を牽引しなければならない。

経営者が求職者の目に触れる機会が増えることで、会社に対する知名度や信頼感の向上にもつながるだろう。

(3)リファラル採用制度を導入する

小さい会社では、自社の求人応募情報や求人サービスからの応募を待っているだけでは、なかなか求める人材が応募してこないという課題がある。そのため、リファラル採用制度を導入することも効果的だ。

リファラル採用とは、自社の業務内容や社風などに詳しい社員が、友人や知人などの中から自社とマッチ度の高い人材に就職や転職のアプローチをする採用方法ことである。縁故採用と違って社員が自社にマッチする人材を選定し、紹介を受けたり採用につながったりした際に、社員に報酬を給与報酬の一環として支払うのが一般的だ。

(4)採用目標に合わせた求人サービスの選定

採用活動のノウハウがない小さい会社は、自社の採用目標に合わせた求人サービスの利用も欠かせない

中小企業の採用活動では、求人票をハローワークや無料の求人サービスで掲載し、応募を待つのが一般的である。しかし、小さい会社では求める人材が応募してくることは少ないだろう。応募者が自社に必要な人材からほど遠ければ、育成コストがかかるのはもちろん、他の社員の負担が増えて収益に悪影響を与える事態にもなりかねない。

採用後も含めたトータルコストを見極めた上で、就職エージェントや転職エージェント、サービス登録者へのスカウトが可能なダイレクトリクルーティングなどの求人サービス活用も検討すべきだ。

(5)就職フェアや転職フェアなどに積極的に参加する

求人サービス企業や各自治体が行っている、就職フェアや転職フェアへの参加も検討してほしい。

小さい会社の場合、自社で会社説明会を行ってもそもそも応募が少ない可能性が高い。そのため、求職者向けのイベントに積極的に参加して会社の知名度を向上させたり求職者との接触機会を増やしたりすることが肝要だ。

もちろん、フェアに参加するだけでは興味を持ってもらえるとは限らず、ブースへの来訪者がいないという現実と直面するかもしれない。だからこそ、求職者にアピールすべき情報の精査や、自社で働くメリットをわかりやすく伝える準備が欠かせないだろう。

(6)大学などへの訪問活動やインターンシップの実施

新卒採用を行う小さい会社ならば、大学や高校などへの訪問活動やインターンシップの実施も効果的だ。

学校訪問によって自社の求人情報などを掲示板に掲載してもらったり、説明会の開催を依頼したりすることで、会社の知名度向上や学生との接触機会の増加につながるだろう。

また、社員への負担が少ない範囲で短期間のインターンシップの実施も視野に入れるなど、学生と接触する機会を増やし、会社はもちろんだが仕事そのものに興味を持ってもらうことも大切だ。

小さい会社だからこそ経営者が採用活動の前線に立とう

小さい会社は、大企業や中堅企業に比べて人材採用はかなり難しい。しかし、小さいからこそ採用する人材が会社の収益性などに与える影響は大きく、採用活動には慎重さも必要だ。

経営者は、自社の知名度向上の活動はもちろん採用活動にも積極的に関わり、自分が理想とする会社を実現するための組織構成を考え、社員に採用方針を示しながら行動することを忘れないでほしい。

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文・隈本稔(キャリアコンサルタント)

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