相続手続きにおいて最も問題とされやすいのは、相続税です。
私たちはいかにして相続税が安く済むか工夫をし、行動します。
それでは、相続税というのはどういった財産に対して課税がされるのでしょうか?
相続税として課税される財産だけでなく、課税されない財産についても解説をさせていただきたいと思います。
どのような財産に対して相続税がかかるのか?
相続税は被相続人が有している財産について課税がなされます。
例えば、現金・預貯金・株式・不動産・会員権など財産的価値のあるすべての財産があります。
ここで、相続税がいくらになるか計算をするために、具体的な金額を理解しておく必要があります。
ところが、現金・預貯金などのはっきりとした金額がわかるものであれば問題ありませんが、株式・不動産などは時価を把握しなければいけませんので、相続税評価の際には計算をしやすいように評価方式が予め用意されています。
みなし相続財産について
上記でご紹介したような相続財産とは異なり、本来相続財産とは考えられないような性質のものであっても、実質的にかんがみて、相続もしくは遺贈があったと擬制されるべき下表のような財産のことを「みなし相続財産」と呼びます。
(1) 生命保険金
(2) 退職手当金
(3) 生命保険契約に関する権利
(4) 定期金に関する権利
(5) 保証期間付定期金に関する権利
(6) 契約に基づかない定期金に関する権利
(7) その他遺贈により取得したものとみなされるもの
(8) 相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者の受贈財産
(9) 農地等の贈与者が死亡した場合の農地
非課税財産について
一方で、相続税をかけることが相当ではないとされる「非課税財産」についても規定されています。
これは、下表の通り寄付や墓石など社会福祉等の観点より考えられています。
(1) 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしているもの
(2) 相続人が国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附をしたもの
(3) 非課税枠内で相続人が受け取る生命保険金
(4) 非課税枠内で相続人が受け取る死亡退職金
(5) その他の非課税財産
一定の債務等については、相続財産総額より差し引くことができます
これについては、一部の借入金等、そして葬儀費用等については相続財産総額より控除して計算をすることが認められています。
被相続人が支払うべき一部の借入金等
相続財産として残されているものの中で、本来被相続人が支払うはずであった未払いの税金(国税・地方性)、不動産の固定資産税等、あるいはこれに準ずる借入金等は相続財産より控除することができます。
このような金銭についてまで、課税相続財産に含めてしまうと、相続人の負担が大きくなってしまうからです。
ただし、これには例外があり、金額が確定しているものに限られます。
つまり、これから金額が変動する恐れのある保証債務等の借入金等については、将来の結果が不確定なものとして、相続財産より控除することがふさわしくないと考えられているためです。
葬儀のために支出される金銭
相続財産より控除することができる金銭として、他に代表的なものは「葬儀費用」があります。
ところで、この「葬儀費用」として支出される金銭は、厳密には範囲が広く、例えば、下表のような費用に対して認められることになっています。
しかしながら、これらは支出金額の性質上から必ずしもきちんとした領収書等が発行されるとは限りません。
そのため、相続財産として有効に控除を申請するためには、支払いがあったことを立証するためのきちんとした支払い関係の資料を残しておかなければいけませんので、十分ご注意ください。
(1) 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
上記にもかかわらず、葬儀費用の一部として認められないものもあります。
例えば、墓地等を購入した費用、香典返しのための金額等については、除外すべきであるとされています。
贈与財産の一部も相続財産として考えられる
相続手続きにおいては、多くの人が相続対策として、生前贈与を行う方が増えてきています。
ただし、これには注意が必要なのですが、生前贈与として有効なのは被相続人が死亡して3年間よりも前に行われた贈与であって、毎年110万円までの金額に限られます。
したがって、被相続人が死亡して3年以内に行われた生前贈与については、これを相続財産の中に合算して相続税課税対象財産として処理されることになります。
なお、その中でも、生前贈与の中で一部贈与税の支払いをしたものがあった場合には、この一部を相続税額より相殺することができます。
また、贈与に関しては相続時精算課税制度が設けられており、相続が起こった際に贈与がなされた金額が相続財産に含まれることになります。
しかしながら、こちらについても生前贈与と同じ考えとして、すでにこれに関して贈与税を支払っていた場合には、この相続税より支払済みの贈与税分を控除することができるようになっています。
相続財産を合算し、基礎控除を超えて初めて相続税を支払う
相続税は基礎控除として、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の枠が設けられています。
この基礎控除枠を超過する相続財産額であることで初めて、相続税を支払うことになります。
例えば、一つ例を挙げて考えてみましょう。
被相続人に妻と子供1人がいたとしましょう。
すると、この基礎控除の式に当てはめると、
基礎控除 =3,000万円 + 600万円 ×2
= 4,200万円
基礎控除枠が4,200万円であることが分かります。
したがって、仮に相続財産総額が3,000万円であったとしてもこれは4,200万円>3,000万円となり、基礎控除枠に収まりますので、相続税はかからないということになります。
まとめ
今回は、相続税計算の前提として算出されるべき課税相続財産の考え方についてお話させていただきました。
遺産総額に加えて、適正に相続財産評価を行うために、加算をしたり、控除をしたりと少し複雑な面もありますので、全体的なイメージをもって理解するようにしましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)