年末年始にじっくり考えたい中間管理職の選び方と育て方
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これから年末年始に入り、日々の仕事から離れて未来に向けての考えをまとめようという経営者の方も多いだろう。そのときには、ぜひ幹部層の陣容について思索してほしい。当社は、直近の業績として6期連続増収、11期連続黒字経営を達成している。その間に、10名ほどだった社員が50名ほどに増えた。決して大きな飛躍ではない。だが、その分、着実な成長を実現した当社を支えた中間管理職を、どのように抜擢し、育成してきたか、参考にして頂きたい。

本物の「上司力」
大村 康雄(オオムラヤスオ)
株式会社エッジコネクション 代表取締役

延岡高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行。営業職として同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。 2007年、日本の営業マーケティング活動はもっと効率的にできるという思いから営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1200社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。

中間管理職育成は永遠の経営課題

「中間管理職の育成が企業成長のカギである。」

よく聞くフレーズだ。私は2007年から会社を経営しているが、2022年現在でも、中間管理職育成は会社経営において不変の課題として挙げられている。なぜなら企業規模によって求めるスキルや人物像が異なり、一定の勝ちパターンのようなものが見出しにくいからだ。

今回、私が紹介するノウハウも数百人、数千人規模の会社では当てはまらないだろう。しかし、10名~20名程度の規模の企業でこれから中間管理職をしっかり育成し、ピラミッド構造の企業を作っていこうとする経営者の方には参考になるはずである。

優秀さよりも忠誠心

中間管理職を育成していくための最初のステップは人選である。一般社員の中で、業務スキルが優秀な人から選んでいないだろうか? もちろん最低限の業務スキルは必要である。しかし、必要なのは、どれだけ会社に貢献してくれているか、である。

これは身を粉にして働くことを意味しているのではない。

「本来は言わなくていい指摘を、会社のためと思って勇気を持ってしてくれる。」
「会社全体として苦しい時に、周囲を巻き込みながら頑張ってくれる。」

そういう姿勢を持っているかどうかが人選の際のポイントである。業務スキルがまだまだ未熟な可能性もあるだろう。しかし、できるだけ早く会社に貢献したいと思ってくれているため、すぐに能力を身に着け、成長してくれる可能性が非常に高い。

「どんなときも味方になってあげる」のが原則

今まで同じ序列の同僚が上司になる。中間管理職への抜擢はそのような状況を作り出す。加えて、業務スキルの優秀さではなく忠誠心で抜擢したのであれば、その抜擢に反感を持つ社員も出てくるだろう。しかし、まだ管理職として未熟ゆえ、対処が難しいかもしれない。

そうすると、経営者に対し、「あの人にはついていけません」など、中間管理職への不満や批判が高い確率で上がってくる。その際、不満や批判を受けている中間管理職を指導する方に意識が向くと、その中間管理職はまだ十分な経験がないため、「もう下りたいです。」となってしまう。別の中間管理職を抜擢しても同じことの繰り返し。これではいつまで経っても中間管理職は育っていかない。

このような状況が起こったら、まずは中間管理職側の味方に立つのが原則である。「あいつはそんな言い方をしたのか。でも、それは真意が伝わってないだけだと思う。もう一度あいつから説明する場を私が作ろう。」など、中間管理職のサポートに徹するのが重要だ。

新米中間管理職と現場社員の間を取り持ち、円滑な関係性が構築されるまでサポートに徹するのである。そうすることで、現場社員にも、経営者と中間管理職の関係性が強固であると伝わる。

多少の犠牲はつきものと考える

これまでのことをまとめると、現場社員の中にはこんな風に考えている社員がいる可能性がある。

「俺より仕事ができないのに、社長のため、会社のためとばかり言ってるやつが昇進した。おまけに、あの人は仕事ができない、指示がよくわからないと社長に進言したのに、いつもまともに取り合ってくれない。」

このような感情はゼロにはできないが、出来る限り生まれないように経営者は鋭意努力する必要がある。同時に、中間管理職の抜擢と離職者の発生はある程度セットであると認識しておく必要もある。

その際、重要なのは、「この人が抜けてしまったら業務が止まってしまう」という社員の離職リスクを考慮した人選をすることだ。万が一離職者が発生したとしても、カバーできる他の人材がしっかり育ってから動くようにしてほしい。

一般社員に社長とのホットラインが中間管理職であると見せつける

ここまで来ると、中間管理職に反対する社員は沈静化するか退職をし、機動的に回るようになってくる。

新しい中間管理職のもと、機動的に動くようになると業務効率や生産性が上がるので、経営者としてはどんどん仕事を振りたくなってくる。その際、中間管理職を飛ばして直接現場に口出しをしてしまうと、「社長と中間管理職のどちらに指示を受ければ良いのか」と混乱を招いてしまう。もし、「社長の指示のほうがわかりやすいな」と現場社員が思ってしまうと、中間管理職の立つ瀬はない。

よって、一旦、中間管理職を確立したら、経営者は中間管理職とのみ意思疎通を行い、現場社員の意見は中間管理職を通し経営者へ、経営者からの伝達も中間管理職経由で社員へという状況を作り、中間管理職の立場をしっかりと守ってあげることが重要だ。まどろっこしく感じるかもしれないが、こうすることで中間管理職の果たすべき役割も明確になってきて、成長のスピードも上がっていく。

個人目標ではなく部署目標のみを追いかけさせる

いよいよ中間管理職育成の総仕上げだ。中間管理職としての立場が確立してきたら、その中間管理職が元々持っていた個人としての目標を撤廃し、部署全体の目標を追いかけさせることが重要だ。

よくある悪い例として、「部長であるお前がこの成績だとまずいだろ」と中間管理職の個人成績にまで言及するケースがある。そうすると、その中間管理職は部署全体として生産性を上げていくことではなく、個人としての成績に意識が向いてしまう。しかし、本来は「部署目標を達成できる」状態の方が望ましいはずだ。

よって、中間管理職には個人目標ではなく、部署目標が達成するかどうかで会話をするとともに、部署内の各個人にどのような目標設定をするのかも任せてしまうことが重要である。

以上が、10名から20名規模の企業で中間管理職を抜擢し、育成するための流れだ。

最後のステップまで到達したら、あとはその中間管理職と密にコミュニケーションを取っていけば自然と経営者のマネジメントノウハウを学習していくことだろう。

この一連の流れが、中間管理職育成という壁にぶつかる方の参考になり、強固なマネジメントチーム作りの一助になれば幸いである。