1950年代に初めてその言葉が生まれた「AI(人工知能)」は、その後飛躍的な革新を遂げ、私たちの生活様式にも大きな変化を及ぼした。2022年現在は第3次AIブームと呼ばれ、機械学習や深層学習、シンギュラリティという言葉も耳にする。AIの歴史に加え、それによって実現した身近な技術も紹介する。
目次

「AI(人工知能)」とは?
AI(人工知能・Artificial Intelligence)とは「知的な機械、特に、知的なコンピュータープログラムを作る科学と技術」とされる。しかし、そもそも「知能」自体を明確に定義づけることが困難であり、専門家の間でもAIの定義はさまざまだ。一般的には、人間の知能をコンピューターによって人工的に再現したものと捉えられている。
汎用型AIと特化型AI
AIは、「汎用型」と「特化型」の大きく2種類に分けられる。汎用型とは、広くイメージされているような、人間のように思考しさまざまな課題を処理できるAIだ。予想外の出来事が起きても経験に基づいて総合的に判断できることを指す。現在、汎用型AIは実現していない。
特化型は、限定された領域の課題を自動的に学習して処理する。画像や音声の認識、言語処理などの分野に特化した技術を持つ。私たちの日常で活用されているのは特化型AIだ。
AIの登場・進化の歴史
AIの概念の誕生は1950年代にさかのぼる。AIの歴史にはその登場から2022年現在まで、3回の「ブーム」があった。それぞれどのような進化があったのか。
AIの誕生
AIの概念の元となったのは、イギリスの数学者アラン・チューリングが1950年に提起した「機械は考えることができるか」という問いにある。1956年にアメリカで開催されたダートマス会議で、数学者のジョン・マッカーシーが「人間のように考える機械」を「人工知能」と提唱した。これが、AIという言葉が現れた起源だと言われる。
第1次AIブーム(1960〜1970年代前半)
当初は、パズルやゲームのような明確なルールのもと、「推論」と「探索」をするAIが研究された。推論とは人間の思考プロセスを記号で表現し、実行しようとすることだ。探索は、目的となる条件の解き方を場合分けして探し出すことを指す。
しかし、推論と探索でAIが処理できるのは簡単なゲームのようなものに限られ「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」と表現された。
この時代のAIで注目されたのは、1966年に開発された「イライザ」と呼ばれる言語処理プログラムだ。短いテキストで指示すると、まるで会話をしているような反応(結果)が返ってくるチャットボットの初期型に当たる。現在、スマートフォンで使われている「Siri」の起源でもある。
第2次AIブーム(1980年代)
1980年代には、人工知能に知識をルールとして教え問題解決させる「エキスパートシステム」が実現する。これが、第2次AIブームのきっかけとなった。
人間が問題に取り組むときには、今までの知識や経験の情報をもとに解決法を考える。エキスパートシステムはこれをAIで再現し、さまざまな知識ベースから論理に基づいた推論で正解と思われるデータを導く。
通販サイトで閲覧履歴からおすすめ商品が表示されたり、ニュースサイトで日頃よく見ているテーマに近い話題が頻繁に表示されたりするのは、エキスパートシステムを使っているからだ。
第3次AIブーム(2000年代後半〜現在)
2022年現在は、後述する機械学習の実用化と深層学習(ディープラーニング)の登場によって巻き起こった第3次AIブームの只中だ。さらにこれからの技術革新として、AI研究の権威であるレイ・カーツワイル氏が「2029年にAIが人間並みの知能を備える」「2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る」と指摘している。
AIが飛躍的に進化した理由
AIの技術革新を大きく進めたのは、コンピューターの計算能力が向上し、ビッグデータの活用が可能になったことによる機械学習の実用化と深層学習の登場だ。それぞれどのような意味を持つのか。
機械学習の実用化
機械学習とは、人間における「学習」の仕組みをコンピューターで実現するものだ。入力されたデータからパターンやルールを見つけ出し、新たなデータに当てはめて識別や予測ができるアルゴリズムを自動的に構築するようになる。2010年代以降、膨大な情報を扱うことができるようになり、機械学習の実用化が進んだ。
深層学習の登場
機械学習では、人間が特徴量を定義し精度を上げる必要性があった。特徴量とは、パターンを見つけ出すためにどの部分に着目するかという指標だ。そこで登場した深層学習は、学習データから自動で特徴量を抽出できる点が画期的である。
AIの進化で何が起きたのか
AIが登場し、技術が進歩したことで、私たちの日常には具体的にどのような変化があったのか。代表的な事例を紹介する。
囲碁や将棋でAIが人間に勝利
複雑な思考やパターンによる戦略を要するゲームでは、人間の強者とAIとの対決がたびたび注目される。1997年には、米IBMが開発したAI「ディープ・ブルー」がチェスで当時の世界チャンピオンに勝った。
将棋では、2012年にコンピューターソフトがトップ棋士に勝利する。さらに、チェスや将棋に比べて盤面が広くパターン数が多いためAIが勝利するのは難しいと言われていた囲碁でも、2016年、コンピュータープログラム「アルファ碁」にトップ棋士の李九段が敗れて大きな話題となった。棋譜など過去のデータを一切見ずに自ら学ぶことができるAI「アルファゼロ」の開発も進んでいる。
クレジットカードの不正監視
クレジットカードの不正対策に金融機関で導入されているAI技術が「レグテック」というシステムだ。このシステムでは、過去の不正パターンを機械学習したAIがリスクを監視しており、オンラインでの本人確認や、マネーロンダリング対策など、不正対策に幅広く活用されている。
AIレコメンド機能
ECサイトのおすすめ商品や、SNS上の広告などは個人の購入履歴や閲覧履歴に基づいて表示されることが一般的になった。ユーザーそれぞれの関心や趣味を捉え、効率的に商品やコンテンツが宣伝される。一方で、AIのレコメンドによって個人の多様性が失われるとの指摘もある。
自動運転
自動車をAIが自動で運転することで利便性を向上し、交通事故を大幅に減らせるのではないかと期待されている。渋滞の緩和策や公共交通機関が少ない地方での移動手段としてもメリットがある。
2022年現在、日本では「条件付自動運転車(限定領域)」が実現している。高速道路などにおいて自動運転システムを作動できるが、システムが自動運転を継続できなくなればドライバーは運転に戻らなければならない。
今後は、ドライバーの関与がなくても決められたルートを走行できる「自動運転車(限定領域)」や、領域の制限がなくなる「完全自動運転車」の実現が想定される。
自動翻訳
AIを用いて言葉を別の言語に翻訳する技術も顕著だ。深層学習の登場によって、より自然で人間が訳したような言葉に近い翻訳が実現されつつある。海外旅行用の翻訳機や外国語で書かれたウェブサイトを閲覧する際などにも使われ、身近になっている。
医療画像診断
深層学習の進歩で、AIが画像を認識する技術も向上した。医療現場では放射線画像などをAIが認識し、異常の検知などを支援しており、見落としの防止や業務効率化に役立っているという。
2021年には、新型コロナウイルスの画像診断を支援するAIシステムが医療機器として承認された事例もある。
シンギュラリティとは?
AI技術が人間を超え、自ら人間より賢い知能を持つようになることを「シンギュラリティ(技術的特異点、Singularity)」と呼ぶ。
シンギュラリティによって、これまで人間にしかできなかったことがAIにも可能になる。例えば、人間の仕事がAIに置き換えられたり、AIが人間に危害を加えたりする可能性も指摘されている。
AIに関するQ&A
AIとその進化に関して、よくある疑問についてまとめた。
AIが進化するとどうなる?
当初は、決められたルールの下で簡単な問題を解くことしかできなかったAIだが、大量の知識をインプットする機械学習や、自らパターン分けのための指標を抽出できる深層学習の技術が開発され、その技術は飛躍的に進歩した。AIが人間を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年に訪れ、私たちの生活に大きな影響を及ぼす可能性があると提唱されている。
AIで人間の仕事がなくなる?
AIが進化し、これまで人間にしかできなかったことをAIができるようになると、人間の仕事がなくなることも考えられる。運転手や事務員など代替されやすい業務がある一方で、医師や教員などAIでも代替が難しい仕事もある。実際には、一部の仕事がAIに置き換えられることで、人間は時間や能力をより生産的に使えるようになると考えられている。
AIロボットの将来性は?
AIを搭載したロボットは実用化が進み、市場も拡大している。AIは技術によって人間の表情やコミュニケーションを学ぶことができるため、さまざまな場面で活用される。「aibo」や「Pepper」などのサービスロボットは今後、産業用ロボットの市場規模を大きく上回ると予測されている。
AIは人間を超えるのか?
AIが人間を超えるシンギュラリティが訪れると、これまではSF小説や映画の中だけの出来事だと考えられてきた現象が現実になる可能性もある。AIが、リスクとなる行為や倫理面に配慮した上で技術を活用していくことが重要だ。
AIと共存し築く未来
AIをめぐる技術はわずか70年ほどの間にめざましく進歩した。ビッグデータを使って「学ぶ」ことができ、領域を限定すれば人間の思考に近いプロセスで判断できるAIは、これまで「人間にしかできない」と思われていたことができるようになる可能性を持つ。
AI技術は人間の思考能力を奪うとの指摘もある。一方で、うまく活用すれば私たちがより生産的に学び、行動する助けにもなり得るし、経済成長や新たな技術開発にもつながる。シンギュラリティに備え、急成長を遂げるAI技術だけでなく、そのリテラシーや環境整備にも着目したい。
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