DXが推進される中で、社内でデジタル化を進めるためのスキルを持つ人材の不足が深刻化している。人材育成はOJTや自己啓発が主体であったが、最近注目されているのが新しい価値創造を目的とした「リスキリング」による人材戦略だ。本記事では、リスキリングの定義や社員教育に関連する用語との違い、リスキリングのメリットや導入ステップなどについて解説する。
目次
リスキリングとは
「リスキリング:Reskilling」とは、社員が以下のような目的を持って新しい知識やスキルを修得することである。
・新しい職業に就労できるだけの能力を得るため
・今の職場で求められるスキルが大きく変わった時に対応するため
・産業構造が変化しても価値を創出し続ける能力を磨くため
リスキリングを行わなければ、市場はもちろん働き方の変化が進む中で社員が変化に適応できず、事業の存続自体が危ぶまれる事態になりかねない。
リスキリング以外にも社員の教育に関わる言葉はいくつかあるが、それらとのニュアンスの違いについてもここで解説する。
リカレント教育との違い
リカレント教育は「学び直し」という意味で用いられており、自らの関心のある事柄や仕事に関連するスキルについて、仕事と教育を繰り返しながら学び続けることだ。
リスキリングは、自社にとって新しい価値創出につなげるために必要なスキルを学ぶものであり、単なる「学び直し」ではない点がリカレント教育と異なる。
アンラーニングとの違い
アンラーニングは、日本語で「学習棄却」と呼ばれる。これまでに習得した知識やスキルの中で必要性が下がったものを捨てて新しい知識を習得し、バージョンアップさせることである。
リスキリングは、スキルの見直しによる取捨選択をするわけではなく、今後必要となる新しいスキルの修得を目指す点がアンラーニングとは異なる。
アップスキリングとの違い
アップスキリング(スキルアップ)は、現在担当している業務の延長線上で、関連するスキルの向上に取り組むことである。「OJT(On-the-Job Training)」のように、現場で実際に業務を行いながら学ぶ方法と等しいと言えるだろう。
これまでの業務とはまったく異なる新たなスキルを積極的に学ぶわけではないという点が、リスキリングと異なる。
リスキリングが注目されている4つの理由
リスキリングが注目され始めたのには、4つの社会的な変化がある。
1.DXが世界的に進められるようになった
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて経営革新を行い、他社に対しての競争優位性を確保することだ。
DXが世界的に進む中で、日本は既存システムの老朽化などによる「2025年の崖」の問題に直面しており、DX推進のためのIT人材不足という課題を抱えている。
IT技術の進歩に伴って消費者の購買行動も変化し、デジタル化への対応が遅れればそれだけ競合他社に遅れを取る可能性が高い。そのため、リスキリングによってデジタル化社会に対応した人材戦略の見直しの必要性が高まっている。
2.コロナ禍などの影響で働き方が変わってきた
働き方改革の施行によって、企業は多様な価値観を経営に生かす「ダイバーシティ経営」の推進を求められていた。企業は社内制度の見直しなどに着手し始めていたが、コロナ禍により外出が制限され、テレワークなど新しい働き方を急速に導入しなければならない事態となった。
自社の働き方が変わらない業界でも、取引先の働き方はもちろん顧客の購買行動などが変われば対応しなければならない。そのため、新しい働き方でもこれまで以上の価値を生み出すためのスキルを身につける必要に迫られている。
3.リスキリングに注力する企業が増えてきた
リスキリングに注力する世界的な企業が増えてきたことも、リスキリングが注目される理由の一つである。
Amazonでは、2025年までに社員10万人のリスキリングを進めるとしており、「アマゾン・テクニカル・アカデミー」や「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」などを立ち上げている。またMicrosoftは、コロナ禍で発生した失業者の再就職支援のためにリスキリング講座を無償提供した。
4.リスキリングが政府によって推進された
日本政府はリスキリングを経済成長の鍵と位置付け、積極的に推進している。岸田総理は「日本リスキリングコンソーシアム」のイベントで、デジタル人材230万人育成を目指す「デジタル田園都市国家構想」を強調し、リスキリング支援を含む三位一体の労働市場改革を進めると述べた。
政府は、在職中の非正規雇用労働者向けのリスキリング支援も強化し、政策を大胆に進める決意を表明しており、注目を集める要因となっている。
リスキリングのメリット5つ
リスキリングによって、社員がこれまでにない新しい知識やスキルを修得することで、企業にとっては主に5つのメリットがある。それぞれについて解説する。
1.自社リソースの活用範囲が広がる
リスキリングによって社員のスキルが高まれば、これまで外部リソースを活用していた分野でも自社で対応できるようになり、コスト削減につながる可能性がある。
たとえば、社員のITスキルを高めることができれば、これまでSIerなどへの外部委託していたDX業務の割合を減らせるだろう。外部委託に頼ったままでは、システムが時代遅れになる可能性もあり、自社人材を育てることが人材不足解消だけでなくノウハウの蓄積にもつながるだろう。
2.自発的にスキルを修得する人材が生まれる
リスキリングによるスキル修得を支援するための制度を策定して実行すれば、自己啓発意欲の高い人材が生まれる可能性が高まるだろう。
リスキリングによって事業革新を進めるためには、企業側から社員に働きかけるだけでは限界がある。自己啓発意識が高い社員に対しては積極的にリスキリングの機会を与え、継続的にフォローアップしていくことが重要だ。
リスキリングを行った社員が成果を出して評価されれば、新たに自発的に学ぶ社員が増えていくだろう。
3.事業革新につながる新しいアイデアが生まれる
リスキリングによってスキルを修得した社員の習熟度が上がれば、新しい価値の創造や事業革新につながるアイデアが生まれやすくなるだろう。
リスキリングの目的の一つは、市場や産業の変化に適応しながら価値を創出し続ける能力を磨くことである。リスキリングはこれまで持っていた価値観の変革にもつながり、リスキリングを行った社員を積極的に新規プロジェクトに参画させることで、新しいアイデアが生まれる可能性が高まるだろう。
4.生産性の向上が期待できる
社員がリスキリングによって修得したスキルを使いこなすことで、より効率的に業務を行えるようになり、生産性の向上につながる可能性がある。
たとえば、これまでの社内稟議のワークフロー中に、書類を作成して上司の承認を受けるというアナログなタスクがあったとしよう。新しくシステムを導入して稟議書類の作成と回覧や承認をオンラインで行うことができれば、業務は大幅に効率化できるだろう。
リスキリングによって社員にツールの選定や導入ができるスキルを修得してもらい、裁量権を与えれば、業務革新を主体的に進める人材として活躍してくれるだろう。
5.社員のエンゲージメント向上につながる
リスキリングに取り組むことで社員のスキル修得を促し、キャリアの可能性を広げるための支援をことは、社員のエンゲージメント向上にもつながるだろう。社員のエンゲージメントが向上すれば、仕事に対するやりがいを感じるようになり、組織に対する貢献意欲の向上や離職率の低下が期待できる。
リスキリングを社内に導入するステップ
自社にリスキリングを導入するためには、以下のようなステップで進める必要がある。
- 事業戦略に基づいて必要な人材を明確にする
- 人材戦略を練った上でリスキリングの教育プログラムを決める
- 社員に学習に取り組んでもらう
- リスキリングでの学びの実践状況をフォローする
- 継続的にリスキリングを行う
それぞれの進め方について解説する。
1.事業戦略に基づいて必要な人材を明確にする
まずは、自社の経営状況について分析して事業戦略を策定し、必要な人材を明確にしなければならない。リスキリングの大きな目的は、DX推進などの経営革新によって収益の改善や向上を目指し、プロジェクトを推進する人材を育成することである。
たとえば、これまで対面販売のみだった小売業が、Eコマースツールを導入してDXを図るならば、システムの導入はもちろんデータ分析やシステムデザインができる人材の育成が望ましいだろう。
リスキリングによって社員に修得させるべきスキルは、企業の現状や事業戦略によって異なる。自社を取り巻く環境なども考慮した上で、リスキリングによって達成する事業の目標値を設定することが重要だ。
2.人材戦略を練った上でリスキリングの教育プログラムを決める
事業戦略に沿って今後自社にとって必要な人材が明確になったならば、自社人材が取得しているスキルの現状を把握しなければならない。
社員によって、すでに修得しているスキルはもちろん業務適性も異なる。そのため、育成プランはもちろん人材配置も含めた人材戦略を練った上で、リスキリングの対象となる社員や導入する教育プログラムを決めなければならない。
リスキリングの教育プログラムには、社内外の研修やe-ラーニングなどさまざまなものがある。自社のリソースだけで対応が難しい場合は、外部の専門家に依頼するのはもちろん、MicrosoftやSalesforceのようなプラットフォーマーが提供しているリスキリング講座の活用も検討しよう。
3.社員に学習に取り組んでもらう
リスキリングの教育プログラムを決めて修得すべきスキルが決まったら、実際にリスキリングの対象者に学習に取り組んでもらう。
リスキリングはアップスキリングと違ってこれまでと違う新しいことを業務外で学ぶため、社員の動機付けが不可欠である。教育プログラムに取り組んでもらう前に、対象者に対してリスキリングの目的や進め方、スキル習得後に期待することなどの説明を忘れてはならない。
4.リスキリングでの学びの実践状況をフォローする
教育プログラムが終了して知識を習得したとしても、すぐに現場で実践できるとは限らない。また、せっかく新しいスキルを学んでも実践する機会がなければ、リスキリングを行った意味がない。学習終了後の現場での実践状況を定期的な面談でフォローするのはもちろん、必要に応じて配置転換するなどして実践の場を提供することも重要である。
5.継続的にリスキリングを行う
リスキリングを一度行ったからといって、自社が必要とするスキル人材が育つとは限らない。リスキリングを行った社員から教育プログラムに対する感想や意見などを集め、次のリスキリング計画にフィードバックすることが重要だ。
リスキリングを繰り返し行うことで、人材の育成効率を向上させ、新たに必要なスキルを選定するなどして、活動をさらにブラッシュアップさせていく必要がある。
リスキリングの企業実践事例
リスキリングに取り組んでグローバル競争力の強化に取り組んでいる上場企業の事例を7社紹介する。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、全従業員を対象にデジタル変革プログラム「デジタルユニバーシティ」を展開している。
従業員のデジタルスキル向上を目的としており、特にデジタル技術の重要性と応用方法に焦点を当てている。従業員はオンラインで提供される多様な学習コンテンツを通じ、自主的にデジタル技術を学んで実践に結びつけることができる。また、社内SNSを活用して意見交換や新規ビジネスのアイデア創出も推進している。
キリンホールディングス
キリンホールディングスは、社員のITリテラシー向上とデジタルスキル習得を目指して「キリンDX道場」を開設した。ITの基礎知識から高度なデジタル技術までを幅広くカバーし、実践的なスキルを習得するためのトレーニングが行われている。社員は道場の利用を通じ、日常業務にデジタル技術を取り入れ、効率化や新しい価値創造に寄与できる能力を身につけている。
ダイキン工業
ダイキン工業は、大阪大学と共同で企業内大学を設立してデジタル技術に特化した教育プログラムを提供し、企業全体のデジタル変革を加速させている。このプログラムでは、最新の技術動向や実践的なスキルを学ぶ機会が提供され、社員が継続的にスキルアップできる環境が整備されている。
富士通
富士通は「Global Strategic Partner Academy」を設立し、従業員がAIやクラウドコンピューティングなどの最新技術を学べる環境を提供している。このアカデミーでは、理論と実践を組み合わせたカリキュラムを通じて、デジタルスキルを体系的に習得できるようになっている。富士通は、これらの取り組みを通じて全社的にデジタル化を推進し、グローバルレベルでの競争力を高めている。
日立製作所
日立製作所は「日立アカデミー」を展開し、従業員が新しい技術やビジネススキルを学べる環境を整えている。このプログラムでは、従業員がDXに必要なスキルを習得し、革新的なアイデアを実現できるように支援しており、グローバル市場での競争力強化に取り組んでいる。
ソニー
ソニーはクリエイティブ職や技術職向けに「AIリテラシー研修」を実施し、デジタル時代に必要なAI活用スキルの獲得を促進している。このプログラムでは、社員が最新のデジタル技術やツールの具体的な活用法について学べる動画教材を提供し、AIを活用して革新的な製品やサービスを生み出せるようにトレーニングが行われた。
東芝
東芝は、社員のリスキリングを推進するためにオンライン学習プラットフォームの「Udemy Business」を活用している。社員は約1万2,000講座から学びたいプログラムを選択し、Excelやプログラミング、TOEIC対策など多岐にわたるスキルを自分のペースで学習可能だ。通勤時間などの隙間時間を有効活用でき、業務外でも手軽にスキルアップが図れている。
旭化成株式会社
旭化成株式会社は、従業員のリスキリングを促進するために「CLAP(Co-Learning Adventure Place)」という学びのプラットフォームを2022年12月から導入した。
このシステムは、経営知識、語学、プログラミング、マーケティングなど、約1万1,500の教育コンテンツを提供し、従業員が自律的に成長し続ける「終身成長」を支援する。CLAPは、個々の関心やニーズに合わせた学習を可能にし、マネジメント層も組織全体での共同学習に活用できる。今後も社内コンテンツの整備やデジタルバッジ制度の拡充などを計画している。
サッポロホールディングス株式会社
サッポロホールディングス株式会社は、「全社員のDX人材化」を目指し、2023年もDX・IT人財育成プログラムをスタートさせた。このプログラムは「全社員ステップ」「サポーターステップ」「リーダーステップ」の3段階で構成され、受講対象者を1.5倍に拡大し約6,000名としている。
特に、DX・IT基幹人材200名の育成を目指して「トレノケート」や「キカガク」などの教育プログラムを導入し、社員は実際にデータ分析やアプリ構築などを習得し、現場でのDX推進を効率化する。
住友生命保険相互会社
住友生命保険相互会社は、従業員の自律的な学びとキャリア開発を支援する取り組みを進めている。2022年に導入された「リスキル・マイキャリア運営」では、職員が自身のキャリア目標と行動計画を可視化し、自らの成長を把握できるよう支援している。
また、自己啓発費用の補助や、幅広いテーマのセミナー「ゆう活講座」、e-ラーニングなどの学習環境を提供し、職員のスキルアップを促進している。
リスキリング推進事業の活用事例
厚生労働省の委託事業である「キャリア形成・リスキリング支援センター」では、企業のリスキリング推進サポートを行っている。2024年現在はジョブカードやセルフキャリアドッグの支援がメインではあるが、活用事例を紹介する
株式会社ニデック
株式会社ニデックは、社員間のコミュニケーション活性化と業務効率向上を目的にジョブ・カードを導入した。具体的には、若手社員と管理職を対象に2回のジョブ・カードセミナーとキャリアコンサルティングを実施し、研究開発部門の社員が自己理解を深め、相互に業務や価値観を理解することで、信頼関係の構築とコミュニケーション力の向上に寄与した。
烏山信用金庫
烏山信用金庫は、キャリア形成支援センターから提案されたセルフ・キャリアドックを導入し、中堅社員のマネジメントスキル向上と若手職員の定着率向上を目指した。33名の中堅職員に対してキャリア研修とキャリアコンサルティングを実施し、自己理解を深めるとともに、コミュニケーションスキルを習得させた。これにより、職員のモチベーションが向上し、職場全体のコミュニケーションが活性化している。
リスキリングに取り組む際の3つの注意点
リスキリングの教育プログラムを決めて実行したとしても、その効果を高めるために注意すべき点がある。ここでは、リスキリングに取り組む際の注意点3つについて解説する。
1.リスキリングに取り組みやすい環境を整える
まず、リスキリングに社員全員が不安なく取り組めるように、環境を整えることが肝要だ。
リスキリングの対象となる社員が在籍する部署では、研修などの参加により一時的に人手不足となりがちだ。他の社員の業務負荷が増えたり他部署との連携が取りにくくなったりして、社内では不平不満が出るかもしれない。周囲の理解がない状況では、リスキリング対象者の学びにも悪影響を与える恐れがある。
リスキリングを始める際にはプロジェクトチームを作って制度設計を行い、社内全体に目的や制度内容を共有した上で、全社共通のテーマとして取り組めるような環境整備が必要だ。
2.社員の自己啓発のサポートが重要
リスキリングを行う際には、社員の自主性やモチベーションの維持が欠かせない。特に社員の自主性は重要であり、自分から積極的に学びたいと考えている社員の自己啓発をサポートすることはもちろん、処遇に反映することでモチベーションを向上していけるだろう。
内閣府の『働き方・教育訓練等に関する企業の意識調査』によると、「自己啓発を支援する制度がない」「制度が活用されていない」企業が半数近くに上っており、処遇に関しても4割ほどが反映されていないという現状がある。
リスキリングを機に、社員の自己啓発に対する支援や評価に関する制度を見直すことも重要だ。
3.育成目的に合わせた教育コンテンツの選択
リスキリングの効果を最大化するためには、まず従業員が必要とするスキルや知識を明確にし、適した教育プログラムを提供する必要がある。例えば、デジタル化を推進する企業であれば、データサイエンスやAIに関する講座、リーダーシップやマネジメントスキルの向上を目指す場合には、これらの能力を磨くための研修が必須だ。
教育コンテンツが育成目的と一致していなければ、従業員のスキルアップやモチベーション向上につながりにくくなる。組織全体のパフォーマンス向上には、企業の成長戦略や従業員のキャリア目標を考慮し、最適な教育プログラムの選定が欠かせない。
リスキリングについてのQ&A
リスキリングとは何なのか?
リスキリングとは、技術革新が進んで産業構造の大きな変化が起こったとしても、変化に適応して価値を創出し続けられるように、新しい知識やスキルを修得することだ。
IT技術の進歩や価値観の多様化など、事業を取り巻く環境の変化は激しいため、既存のノウハウや技術だけでは生き残れない企業も多い。リスキリングによってこれまで自社になかった新しい知識やスキルを修得して導入することは、事業革新による持続的な成長にも欠かせないものである。
リスキリングでは何を学ぶ?
リスキリングで学ぶ内容は、自社の経営戦略やビジョンによって異なるため、必要なスキルを可視化することが重要である。
ただ、IT技術の進歩に伴ってDXの推進が世界的なトレンドとなっており、日本ではIT人材の不足が慢性化しているため、特にプログラミングスキルやDX、AIといったデジタル技術、データ分析といったスキルの修得が必要とされている。
それ以外にも、自社の収益性を左右するマーケティング戦略に関わるものとして、SNSやYouTube、自社Webサイトなどのメディアを活用したデジタルマーケティング関連のスキルの修得などが重要視されている。
リスキリングはなぜ行われるのか?
リスキリングによって新しいスキルを修得した人材が育成できなければ、技術革新による市場や業界自体の変化に対応できない可能性がある。DXの推進などによって、他社に対する優位性の確保ができなければ市場から淘汰されてしまう恐れもあるだろう。
また、リスキリングによって自社人材の育成ができなければ、外部のリソースに頼らざるを得ず、コストの増大はもちろん自社ノウハウの蓄積ができないといったデメリットもある。
リスキリングのメリットは?
リスキリングによって新しいスキルを修得した人材を育成できれば、DXのような経営革新につながるシステムの導入や、これまで技術的にも不可能だった新しい製品やサービスのアイデアを実現できる可能性が高まる。
社員にとっても、新しいスキルを身につけてキャリアアップするチャンスであり、エンゲージメントが高まることで、組織への貢献意欲の向上や定着率アップといったメリットが得られる。
リスキリングを中期経営計画に組み込んで実行しよう
リスキリングは、DX推進など自社にとってこれまでにない事業革新につながるための人材育成を目的としたものである。企業側からの働きかけはもちろんだが、社員の自主性も重要であり、リスキリングの制度設計と全社的なテーマであることを周知させることが肝要だ。
リスキリングに取り組む際には、中期経営計画に目標値を組み込んだ上で、PDCAを回しながら実行してほしい。
文・隈本稔(キャリアコンサルタント)