2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以来、世界各国はさまざまな問題に取り組んでいる。その中で、日本のSDGs達成度はどれくらいなのだろうか。本記事では日本のSDGs達成度や課題、ランキング上位国の事例などを紹介する。

目次

  1. 日本のSDGs達成度は?世界ランキングから見る現状
  2. SDGsへの貢献度が高い国内企業のランキング
  3. 日本が抱えるSDGs達成に向けた課題
  4. SDGs達成度の上位国の取り組み事例
    1. 徹底した廃棄物削減やスタートアップ支援/フィンランド
    2. SDGsについて学べる教育の場を提供/デンマーク
  5. 新型コロナやウクライナ情勢によるSDGsへの影響
  6. 日本の課題を意識し、外部から評価されるSDGs対策を
日本はSDGs達成度世界○位 上位国はどんな取り組みをしている?
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

日本のSDGs達成度は?世界ランキングから見る現状

世界各国のSDGs達成度は、国連の研究組織である「SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)」が評価し、毎年ランキングを公開している。以下の表は、同機関が公開した2023年のランキングである(上位20ヵ国と日本)。

【2023年】世界のSDGsランキングから見る日本の現状 上位国の取り組み事例も紹介
(参考:SDG TRANSFORMATION CENTER「Sustainable Development Report 2023」)

ランキングの上位は欧州が占めており、特に北欧はSDGsスコアが総じて高い傾向にある。日本もアジアの中では上位につけているものの、世界全体では21位のスコアとなった。

日本で大きな改善が見られたターゲットは、「1.貧困をなくそう」である。前年から評価が下がったターゲットはなかったが、「10.人や国の不平等をなくそう」については評価のための情報が取得できていない。

SDGsへの貢献度が高い国内企業のランキング

国内企業のSDGsランキングについては、民間調査会社の「ブランド総合研究所」が公表している。以下のデータは、同社が公表した「SDGsの取り組みの評価が高い企業ランキング」をまとめたものである(上位20社)。

2021年に引き続き、2022年のランキングでもトヨタ自動車がトップの評価を受けた。同社は「私たちは幸せを量産する」をコンセプトとして、CO2を出さない製品づくりや、従業員全員が活躍できる環境構築などを目指している。

また、2021年から大きく順位を上げたパナソニックは、100年先を見据えた「サスティナブル・スマートタウン」の実現に取り組んでいる。この施策は工場跡地に同社の技術を駆使して、住民ひとり一人が住み続けられる街づくりを目指したものだ。

ランキング全体としては、自動車業界や飲食業界、小売業界の評価が高い結果となった。いずれの企業も、公式サイトでSDGsの取り組みや実績を公開しているため、方向性で悩んでいる企業はぜひ参考にしたい。

日本が抱えるSDGs達成に向けた課題

前述の「Sustainable Development Report 2023」によると、日本のSDGsスコアは2008年から右肩上がりで伸びている。世界的に見ても低い順位ではないが、ターゲット別に見ると達成度にばらつきがある。

【2023年】世界のSDGsランキングから見る日本の現状 上位国の取り組み事例も紹介
(※トレンドは近年の改善度合いを表したもの。○は「軌道に乗っている(維持している)」、△は「やや改善中」、▲は「停滞している」を表す。)
(参考:SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT「Sustainable Development Report 2023」)

貧困や教育、産業などの課題には対応できている一方で、ジェンダー平等や環境問題に関するターゲットは総じて評価が低い。日本の取り組みがさらに評価されるには、官民一体となってこれらの問題に取り組む必要があるだろう。

4段階評価が低かったり停滞していたりするターゲットは、国内企業全体が向き合うべき課題と言える。

SDGs達成度の上位国の取り組み事例

SDGs達成度で上位につける北欧は、どのような取り組みを行っているのだろうか。日本ではあまり見られない取り組みを中心に、以下では参考にしたい事例を紹介する。

徹底した廃棄物削減やスタートアップ支援/フィンランド

フィンランドは持続可能性への国民意識が強いとされており、食品ロスやCO2の削減に国をあげて取り組んでいる。医療をはじめとした福祉制度の充実も、SDGsの面で高く評価されているポイントだろう。

主な取り組みとしては、「リデュース」と「リサイクル」を徹底した廃棄物の削減がある。また、SDGsスタートアップへの支援も手厚く、国営研究所の運営によって商品・サービスの開発環境を整えている。

そのほか、地域による独自の施策が充実している点も、フィンランドの大きな特徴だ。例えば首都のヘルシンキでは、飲食店や商業施設の持続可能性をスコア化することで、市民や観光客のサステナブルな活動をサポートしている。

SDGsについて学べる教育の場を提供/デンマーク

デンマークは教育面に力を入れており、全寮制市民学校の「フォルケホイスコーレ」でSDGsに関する学習の場を提供している。若い頃から環境問題・社会問題を意識させることで、国民が自律的にSDGsへと貢献するような仕組みだ。

さらに、デンマーク人はダイバーシティ実現にも積極的であり、社会全体がマイノリティや他人種を受け入れている。幸福度ランキングの高さ(※)からも、SDGsの関連施策を成功させていることが分かるだろう。

(※)国連による2018年のランキングで第3位。

ほかにも、余剰品のみを扱うスーパーマーケットの運営や、海洋ごみを利用したアップサイクルなど、デンマークは環境問題に対する施策も多い。気候変動から生じる海面上昇や大洪水を危惧する声があるなど、将来への不安が数々のSDGs施策へとつながっている。

新型コロナやウクライナ情勢によるSDGsへの影響

欧米を中心に、現在では世界各国がSDGsの取り組みを進めているが、実は2020~2021年における世界のSDGs達成度は減少している。これは、新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ危機によって、一部のゴールが遠のいてしまったためだ。

新型コロナやウクライナ情勢によるSDGsへの影響

SDGsはあらゆる環境問題・社会問題の解決を目指しているため、上記のような感染症や紛争、経済ショックなどが巻き起こると達成度が下がってしまう。

コロナ禍やロシア・ウクライナ危機はしばらく続くことが予想されるため(※2023年12月現在)、引き続き世界各国への影響を注視しておきたい。

日本の課題を意識し、外部から評価されるSDGs対策を

世界的に見ると、日本のSDGs達成度はそれほど低くない。しかし、ジェンダー平等や環境面では欧州に差をつけられており、重点的に取り組むべき課題も多く存在する。

国や自治体だけではなく、企業にも具体的な対策が求められつつあるため、本記事を参考にしながら外部評価につながる計画を立てていこう。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)

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