矢野経済研究所
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10月25~26日、山梨県北杜市で慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)の山形 与志樹教授が主催する未来社会共創イノベーションラボのワークショップが開催された。テーマは「ゼロカーボンでウェルビーイングな北杜市の実現に向けて」、地産地消グリーン電力、自動運転EV、ゼロエミビレッジ、花と緑のワデュケーション、ドローン林業、そして、未来の観光ビジョンなど、多様な視点からの報告と議論が2日間にわたって展開された。

主催者である山形教授の研究テーマは未来都市デザイン。交通、エネルギー、産業、地域を1つのシステムとして捉え、先端テクノロジーを活用した持続可能なスマートシティづくりを目指す。北杜市では、オーストリアのWerfenweng村を拠点に環境にやさしい広域ツーリズムを推進するNGO「アルパイン・パールズ」をロールモデルに “まだ誰も見たことのない未来社会づくり” に挑む。まずは観光拠点である清里エリアと行政機関、市立病院、コミュニティホールなどが集中する長坂エリアを仮想フィールドに、自動運転EV、ドローン、地産地消エネルギーを活用したサスティナブルな地域づくりを提案してゆく。

当社からは、当社カーボンニュートラルビジネス研究所が八ヶ岳山麓でスタートさせた地域経済循環モデルの実証プロジェクトについて伊藤 愛子所長が講演※1、ワークショップにはエネルギーと住環境を担当する調査チームのリーダーと観光消費の経済波及効果やAIを使った産業別未来予測に取り組む研究員、そして、筆者の3名が参加、次世代モビリティとグリーン電力を中心テーマに、観光産業、ドローンを活用したスマート林業、北杜市のブランディングの在り方など、幅広い課題について意見交換をさせていただいた。

今、自動運転やMaaSの実証実験が各地で本格化しつつある。自動運転レベル4※2も間もなく解禁だ。しかし、先端技術と法令整備だけで持続可能なまちづくりは実現しない。セクターを越えての取り組みと地域の合意形成が必須である。ワークショップには(一社)八ヶ岳ツーリズムマネジメント、(一社)ゼロエミやまなし、をはじめとする地元のステークホルダーも参画、地産地消電力とソフトモビリティを一体的に推進するための戦略が議論された。そう、ここには民間の側に脱炭素に向けてのビジョンと組織があって、それを牽引するリーダーがいる。北杜市の優位はここにある。とは言え、行政からの一押しも不可欠だ。市の “もう一歩” に期待したい。

※1 カーボンニュートラルビジネス研究所:2018年12月に株式会社矢野経済研究所が設立した組織。脱炭素へ向けた社会・産業構造の転換をビジネス機会と捉え、新たな価値の創出を目指している。2022年7月、八ヶ岳山麗で小さな経済循環モデルの実証実験 “ココラデ・プロジェクト” をスタートさせた。
※2 自動運転レベル4:国土交通省が定義した6段階の自動運転レベル(レベル0~レベル5)のうち、レベル4は特定条件下における完全な自動運転を実現できる段階。遠隔監視のもとで特定ルートを走行する巡回バスなどが可能となる。

今週の“ひらめき”視点 10.23 – 10.27
代表取締役社長 水越 孝