投資トレンドはハイリターンを狙える未公開株 甘い誘いには要注意!
(画像=Andrii/stock.adobe.com)

証券取引所に上場していない企業の株式「未公開株」への投資に注目が集まっているようだ。大手信託グループも、個人投資家への未公開株提供を始める方針を示している。未公開株の購入にはどのようなメリット、デメリットがあるのか。また購入方法についても解説する。

そもそも未公開株とは?

未公開株とは、証券取引所に上場(公開)していない企業の株式を指す。「非公開株」「プライベート・エクイティー(PE)」などとも呼ばれる。上場株のように証券取引所を通じて売買することはできない。当事者間で売買することは可能だが、未公開株の販売ができるのはその株式の発行会社か証券会社に限られている。

未公開株投資のメリットとデメリット

未公開株への投資には、メリットとデメリットの両面があるので、よく知っておきたい。

メリット:新規上場などで高いリターンが狙える

通常の証券取引所で売買する株式に比べ、未公開株は売却などによるリターンが大きくなることが期待される。証券取引所での取引ができないため、株式を現金化できるのは発行企業が上場する場合や事業譲渡する場合に限られるが、その際に購入価格以上になる可能性がある。

例えば、非上場企業が証券取引所に上場する「IPO」の場合、募集価格を上回る初値が付くことがほとんどだ。一般的に上場前の未公開株は市場価格と比べて安価なことが多いため、上場後にハイリターンを狙うことができる。

日本の多くの中小企業の株式は、ほとんどが未公開株だ。株式の購入を通じて、発行企業を資金面で応援できる面もある。企業が配当を行っていれば、配当金を受け取ることもできる。

デメリット:リスクの大きさや詐欺の懸念

未公開株から利益を得るタイミングは配当金の他に、売却か譲渡が主だ。メリットで述べたように、証券取引所に上場すれば購入価格を上回る値が付く可能性も高い。しかし上場には厳しい審査があり、容易ではない。事業譲渡では買い手が現れるとは限らず、不確実性が大きい。そもそも事業がうまくいかず、配当金が出なかったり倒産したりするリスクもある。

また、未公開株をめぐっては投資詐欺も横行している。登録のない業者が「近々上場する企業なので、今のうちに株式を買っておくと儲けが出る」などと、出資を募りだまし取るケースをよく耳にする。金融庁や日本証券業協会などは、未公開株の購入を誘う詐欺に注意を呼びかけている。未公開株の販売ができるのは発行企業の他に、登録を受けた金融商品取引業者(証券会社)のみであることに気をつけたい。

大手信託グループが未公開株販売をスタート?

2022年7月、大手信託グループの三井住友トラスト・ホールディングスが、これまで機関投資家向けだった未公開株などの金融商品を今後個人向けにも提供する方針で、商品開発を進めると報じられた。

この背景にあるのは、預金口座に眠っている個人資産の活用だ。日本の個人金融資産は2,000兆円以上あると言われているが、その半分以上が現金や預金だという。個人の資産運用の機会を増やし、岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」にも示されている「貯蓄から投資へ」の流れを進める。

また、評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業を「ユニコーン企業」と呼ぶ。米国や中国にはユニコーン企業が多く、経済成長を押し上げてきた。一方で日本では10社程度と少ない。日本の未公開株投資市場が海外に比べて小規模であることが、その一因だと考えられている。家庭に眠る貯蓄をスタートアップ企業などの投資に回し、経済成長を促す目的もある。

未公開株の購入方法は?

未公開株を実際に購入する場合、以下のような方法がある。

・委託を受けた証券会社などから購入する
・発行企業から購入する
・クラウドファンディングで購入する

委託を受けた証券会社などから購入する

未公開株の発行企業から委託を受けた、金融庁の「第一種金融商品取引業者」の登録を有する業者(証券会社など)は、未公開株を販売することができる。上場株式と異なり取引できる業者は限られており、前述のような投資詐欺の被害を防ぐためにも資格のある業者であるかどうかに注意したい。

株式の発行企業から購入する

未公開株は、株式の発行企業と直接交渉し購入することができる。一般的には、企業の設立時や増資時に関係者や投資家から紹介されて購入するケースが多い。

クラウドファンディングで購入する

インターネット上で資金を募るクラウドファンディングの中には、「株式投資型」として未公開株に投資できるものがある。クラウドファンディング運営会社を通して、取り扱っているプロジェクトや金額を選んで投資する。

個人向け未公開株への投資は慎重に

これまでは個人での購入機会が多かったとは言えない未公開株だが、今後は個人投資家に向けた商品が増えてくるかもしれない。未公開株は高いリターンを狙える可能性もある一方でリスクも大きく、投資詐欺も横行しているため取引には注意が必要だ。メリットやデメリットをよく理解した上で、新たな投資を検討してみるのも良いかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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