ANYCOLORの上場が話題に 拡大する「Vチューバー」市場・業界を分析
(画像=BBuilder/stock.adobe.com)

アニメキャラクターのような目を引くアバターで動画を配信する「Vチューバー」市場が、ますます盛り上がっている。Vチューバープロジェクト「にじさんじ」の運営会社ANYCOLORは2022年6月に上場し、直後から株価が大幅に値上がりした。Vチューバーの魅力はどこにあるのか。人気を集める配信者もあわせて紹介する。

Vチューバー(バーチャルユーチューバー・VTuber)とは?

Vチューバーとは、CGのキャラクターを自身のアバターとして用い、YouTubeなどで動画を投稿する配信者を指す。

配信者が体に取り付けたモーションキャプチャーやカメラの画像認識機能などによって、表情の変化や動作がアバターに反映されることが特徴だ。「中の人」と呼ばれる配信者の言動をリアルに反映し、ライブ配信などで視聴者とコミュニケーションを取ることもできる。

拡大するVチューバー市場

「世界初のバーチャルYouTuber」として2016年に活動を開始した「キズナアイ」がきっかけで、2017年頃から次々にVチューバーがデビューし、流行した。2018年にはドワンゴやサイバーエージェントなどの企業も関連事業を展開。2022年現在も市場は成長を続けている。

ANYCOLORが上場、株価が高騰

ANYCOLORは約150人のライバー(Vチューバー)を抱える「にじさんじプロジェクト」で、キャラクター制作からタレントマネジメント、イベントプロモーションなどを手がける。2022年4月期の単独売上高は約132億円(前期比74%増)となった。

6月8日に東証グロース市場に上場し、公開価格は1,530円だったが、翌日に3倍を超える4,810円の初値をつけた。そして6月16日には9,000円台まで躍進し、6月28日現在は7,000円前後を推移している。

<ANYCOLORの株価チャート>

出典:Google Finance
出典:Google Finance

「投げ銭」システムで収益

Vチューバー事業の主な収入源は、関連グッズや音楽コンテンツなどの販売、企業の商品宣伝などへの使用(出演)の他、「投げ銭」と呼ばれる視聴者からの課金がある。

投げ銭とはYouTubeのシステム「スーパーチャット」を通じて、視聴者がコメントと一緒に金銭を送ることだ。日本経済新聞の報道によると、2021年に受取額上位30チャンネルの配信者が受け取った投げ銭は総額で約30億円に上り、2020年の約20億円から急増しているという。中でもVチューバーは受取額上位の多くを占めている。

企業・自治体による起用も進む

Vチューバーの活躍の場は動画サイトの中だけではない。近年は企業や自治体が広報活動に利用することも多い。自社でオリジナルのVチューバーを誕生させたり、人気配信者とコラボしたりすることもある。

オリジナルのキャラクターであれば、企業の理想どおりの設定を作ることができる。また、芸能人を起用する場合と比べて、突然のスキャンダルによってイメージダウンが起きるリスクもない。

Vチューバーの人気の理由・魅力とは

ひと口にVチューバーと言っても、その姿や配信内容はさまざまだ。少女だけではなく男性はもちろん、動物や架空の生物もいる。動画はゲーム実況や歌、雑談などが主流だが、視聴者参加型のクイズやゲームを企画したり、配信者自身が深い知識を持つ分野を掘り下げて語ったりと、幅広いコンテンツがある。

CGアバターでありながらも、体験を語ったり「◯◯やってみた」などの企画に挑戦したりしているのは生身の人間だ。その反応や感想に垣間見える人柄も魅力と言えるだろう。

知っておきたい人気Vチューバーは?

現在も増え続けているVチューバーだが、特に知っておきたい配信者の一部を紹介する(チャンネル登録者数は2022年6月時点)。

キズナアイ

Vチューバーの中で最も有名と言われる「世界初のバーチャルYouTuber」キズナアイは、自称AIでYouTube「A.I.Channel」のチャンネル登録者数は約308万人だ。Vチューバー業界のパイオニアとして、数々の企業広告との提携やアンバサダーなどに就任してきた。しかし2022年2月をもって、「より成長していくことを目標としたアップデートのため」として無期限の活動休止に入った。

月ノ美兎

月ノ美兎(つきのみと)は、「にじさんじ」の代表的Vチューバーとも言える。ゲーム実況や歌の配信に加え、映画や美術の見識が深く、独特の口調で体験を語るコンテンツが人気だ。単著でのコラム集も出版しており、チャンネル登録者数は88万人だ。

宝鐘マリン

カバー株式会社による事務所「ホロライブプロダクション」に所属するVチューバーも人気だ。中でも、女海賊の衣装が特徴的な宝鐘(ほうしょう)マリンは、チャンネル登録者数194万人を持つ。イラスト配信が有名で、アニメなどの豊富な知識によるいわゆる「オタクトーク」にも定評がある。

Vチューバー市場の多方面への拡大に期待

Vチューバー市場は、配信者・視聴者双方の増加に加え、グッズやライブなど関連商品やイベントの需要も高まっており、広告や啓発事業との相性も良い。より手軽で高性能なアバターの作成、配信のための周辺機器の開発も進んでおり、今後も多様な分野を取りこんだ市場の拡大が期待できそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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