防衛予算10兆円規模へ引き上げで世界3位へ? 国防に商機! 日本の軍需関連企業まとめ
(画像=Josiah.S/stock.adobe.com)

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、岸田文雄首相は防衛費を増額していく方針を示した。自民党内からは、防衛予算を現状の2倍に近い10兆円規模にまで引き上げるという構想も出てきており、国内で軍需産業に関連する企業にとっては一大ビジネスチャンスが訪れている。

2021年度の防衛関係費は5兆円超

2021年度の日本の防衛関係費は、2020年度と比べて547億円増えた5兆1,235億円で、9年連続の増額となった。このうち、装備品の修理や整備、調達などのための「物件費」は、全体の約6割に当たる2兆9,316億円だった。この3兆円という国内市場の規模は、例えば、たばこ市場や化粧品市場よりも大きい。

東京新聞の記事によると、世界各国の軍事支出を多い順に並べたランキング(2020年)では、1位が「米国」(7,780億ドル)、2位が「中国」(2,520億ドル)。3位の「インド」以下は1,000億ドルを切り、「ロシア」、「イギリス」、「サウジアラビア」、「ドイツ」、「フランス」と続き、9位に日本が入っている。

もしも自民党内から出ているように日本の防衛費が倍増すると、日本の軍事支出はインドを抜いて世界第3位になるという。上記の「物件費」が、防衛予算全体に占める割合が一定とすると、防衛費が10兆円に膨らんだ時、物件費は6兆円に拡大する。そうなると、市場規模は百貨店業や自動車整備業などを上回ることになる。

軍需銘柄の筆頭格は三菱重工

市場規模が2倍になるとすると、投資(資産運用)面でもビジネス面でも気になるのは、防衛関連銘柄にどのような企業があるのかということだろう。ところが、軍需関連企業というのは、業界の性質上あまり表には出てこないため、広く知られていないことが多い。

2022年4月13日に岸信夫防衛相が防衛産業の国内大手15社と会合した際、その場に参加したのは、三菱重工業、川崎重工業、富士通、IHIなどだった。ここでは、それら企業の事業内容を紹介する。

まず、国内の軍需銘柄の筆頭格に挙げられるのが、総合重機で首位の三菱重工業である。2022年3月期の連結売上収益は3兆8,602億円で、このうち「航空・防衛・宇宙」分野の売り上げは7,742億円だった。

同社のウェブサイトによると、防衛分野では戦車、潜水艦や巡視船などの艦艇、戦闘機、ヘリコプター、地対空誘導弾システムなどを製造している。一般市民が「軍需」と聞いて真っ先に思い浮かべるようなものは、ほぼ製造している会社と言っても過言ではないだろう。

川崎重工業は、2022年3月期の連結売上高が1兆5,008億円の大企業で、防衛省向け製品を含む「航空宇宙システム事業」の売上高は2,982億円となっている。同社のホームページでは、防衛省向けの製品として、自衛隊が使う輸送機、哨戒機、中等練習機、ヘリコプターなどが写真付きで紹介されている。IHIは、2022年3月期の連結売上収益が1兆1,729億円。このうち、「航空・宇宙・防衛」部門の売り上げは2,652億円だった。

中小規模の防衛関連企業も各地に存在

もっとも、上記の企業は国内軍需産業に関わる巨大企業ばかりだ。こうした企業では防衛関連以外の事業の売り上げも莫大であることから、仮に国内の防衛市場が拡大しても、その影響は企業全体から見ればそれほど大きくならないだろう。

逆に、防衛産業に関わっていながらも事業規模が小さな会社は、市場拡大によるプラスの影響が大きい。そこで、今度は中小規模で防衛に関連する上場企業を見てみる。

石川県白山市に本社を置く「石川製作所」は、ダンボールを作る機械を製造する半面、戦時中に海軍兵器を製造していた経緯から、今も自衛隊向けに機雷を納入している。東京都あきる野市の「細谷火工」は自衛隊向けに照明弾や発煙筒を製造している。

これらの企業は、ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射など「有事」を臭わせる事態が発生すると、株価が大きく上下する傾向がある。なお、この2社は東証スタンダードに上場している。

東京都千代田区に本社がある「興研」は防塵・防毒マスク製造大手で、防衛省向けに独占供給している。「新明和工業」は兵庫県宝塚市に本社を置き、防衛省向けに救難飛行艇と部品を供給している。なお、興研は東証スタンダード、新明和工業は東証プライムに上場している。

防衛関連企業にとっては追い風か

このように、軍需産業に関連する企業は国内各地に存在しており、非常に裾野の広い業界と言える。

ロシアがウクライナに侵攻して以来、将来的に「中国が台湾に攻め入る」という事態を警戒する声が日本国内でも強くなっている。日本の周辺地域でそうした動きが活発になってくれば、さらに国内の軍需市場は拡大の道を歩む可能性もある。

それは、一般的にあまり歓迎するべき局面ではないだろうが、こと防衛関連企業にとっては業容拡大に向けた追い風と言うこともできる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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