初めて中間管理職を育てるときに気を付けたいポイント
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中間管理職の育成で壁にぶつかっているリーダーは多い。実際、私自身の経験でもコツをつかむまでにかなりの年月とエネルギーを費やしたと思っている。今回は、コロナ禍で在宅勤務も緩和され、部下との会話も増えていく中で、これから中間管理職育成に取り組む方々に気を付けていただきたいポイントを紹介する。

本物の「上司力」
大村 康雄(オオムラヤスオ)
株式会社エッジコネクション 代表取締役

延岡高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行。営業職として同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。 2007年、日本の営業マーケティング活動はもっと効率的にできるという思いから営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1200社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。

目次

  1. 中間管理職が必要になるタイミング
  2. “中間管理職の設置・育成=社長が考えること”ではない
  3. 天井を引き上げ、屋根裏部屋に中間管理職を住まわせる
  4. 最終ゴールは校長先生
  5. 中間管理職を育てるのではなく中間管理職という役職を作る
  6. 常に中間管理職の味方になる
  7. 中間管理職より上位にいる人への不満を公にすることを許さない

中間管理職が必要になるタイミング

そもそもどういう状況になったら中間管理職は必要になるのかご存じだろうか。

「目が行き届かなくなったら」

ということはわかっているだろうが、実際に目が行き届かなくなってから中間管理職を育成しては遅い。目が行き届かなくなっているのだから、トラブルが頻発してしまう。

よく言われているのは、一人の人間がマネジメントできる限界は5~7人ということである。加えて、プレイングマネージャーで現業も担当している場合、この人数はもっと少なくなるだろう。

よって、部下が5人になった段階で中間管理職を作る必要があると考えると、先手を打った組織創りができる。

逆を言うと、部下が5人に満たないのに中間管理職を創ろうとすることは、組織に無駄な階層ができる。現場の情報がスムーズに伝わらなくなったりして判断が遅れ、マネジメントにとってマイナスであることは認識しておく必要がある。

“中間管理職の設置・育成=社長が考えること”ではない

もしあなた自身が中間管理職である場合、新たな中間管理職の設置、育成を考えるのは自分の仕事ではないと思っているかもしれない。

それは違う。

なぜなら、自分が担当している組織が回らなくなり、トラブルが頻発したら咎められるのはあなただからだ。

中間管理職とは、社長の特権として作られていくものではなく、部下が5人になったら組織を引き続き滞りなく回すために必要なものと考え、率先的に社長に提案するスタンスでいてほしい。

天井を引き上げ、屋根裏部屋に中間管理職を住まわせる

では、いよいよ中間管理職を育成するポイントの説明に入ろう。これから説明するポイントを、順を追って実行していけば中間管理職の育成のイメージはだいぶ描いていただけると思う。

そもそも中間管理職を作るということは、組織が2階層から3階層になるということである。当然、スペースが必要だ。そのスペースを空けるにはどうすればいいかというと、天井が地面と離れなければならない。つまり、これまでのようにトップがすべてのメンバーと同じ距離感でコミュニケーションをとっていては中間管理職が活躍するスペースがないのだ。

どうするかというと、“中間管理職とのみコミュニケーションを取る”くらいの気概で、他の部下とは距離を取るのである。実際は、業務上でコミュニケーションを取らざるを得ないシーンも多々発生するだろう。よって、現実的には、「プライベートの時間は中間管理職としか過ごさない」という意識が実行に移しやすい。

よく飲みに行っていたアイツとも、もう飲みに行けなくなる。ということである。ランチもだ。

そこまでしなくても…と思うかもしれない。しかし、自分の部下が自分の上司と仲良くしていると、どう感じるだろうか?やきもちを焼くほど部下に愛情がある人は素晴らしいが、そこまでいかなくても、「あいつの面倒は上司が見てくれている。」という感覚は芽生えないだろうか。また、その部下が何か失敗をした際、「きちんと指導しときなさい」と言われたら、「いやいや、散々一緒に飲んでるんだから自分でやってくれよ」と思わないだろうか?

このように、中間管理職を任命したらそれ以外の部下とは距離を置き、天井が上がったかのように簡単にコミュニケーションが取れないようにしないと、中間管理職は活躍の場がなくなってしまうのである。

ポイント1:プライベートの時間は中間管理職とのみ使い、その他の部下と距離を置く。

最終ゴールは校長先生

では、中間管理職を置いた瞬間に威張り散らし、一気に周りをシャットダウンするのが正解かというと、もちろんそうではない。そんなことをしてしまうと一気にメンバーの離散を招くだろう。

ここで、お伝えしたいのが最終的な目指すべき姿を“校長先生”とすることである。

子供の頃に校長に呼び出されたら、怖いと感じるのではないだろうか?
実際に怒られたことがあるから怖かったかというと、そうではないはずだ。むしろ、実際に話をしてみると優しい印象を持ったことがある人の方が多いはず。

このような存在になることが最終ゴールなのである。

なぜ校長先生にこのような二面性のある印象を持ってしまうかというと、「よく知らない偉い人」だからだ。

偉い人に失礼をしてはいけないことは自然と学んでいく。よって、失礼がないようにしようと考えた延長線上に恐怖感が芽生える。いわゆる畏怖の念だ。しかし、その恐怖感は実際の校長先生の人柄とは無関係なものなので、話してみると優しく感じるのだ。これを最終ゴールと定めよう。

もちろん、簡単ではない。コミュニケーションの頻度を必要最低限にしていく。別室に自席を構えて物理的に距離を取る、などなど、取らねばならない施策は山ほどあるだろう。しかし、それらの施策を一つ一つやれば校長先生のようになれるはずというイメージを持つことで、自分の中に指針ができ、とっさの時の立ち居振る舞いで迷いが薄れるのではないだろうか。

ポイント2:子供の頃の校長先生をイメージして立ち居振る舞う。

中間管理職を育てるのではなく中間管理職という役職を作る

リーダーシップの取り方は千差万別である。そう聞いて、異論を唱える人はいないだろう。

しかし、中間管理職のリーダーシップには、不思議といろいろと口を出したくなるようである。

「なんであの場面でああいう行動を取った?」
「もっと、覇気を出さないと部下はついてこないぞ!」
などなど

中間管理職を育成しようと思うあまり、自分のリーダー像を押し付けてしまうのである。当然、これだと中間管理職になる人のポテンシャルは最大限に発揮されない。むしろ委縮して逆効果である。

よって、「中間管理職としての○○さんを育てる」ではなく、「○○さん以外が就任しても機能する新たな役職を作る」という考え方で向き合うといい。覇気があろうがなかろうが、やるべき仕事として規定された業務が行われていれば良しとするのだ。逆に、チームとしてこれはやってはいけないというNG規定を作ってもよい。

要は、これさえ守っていれば中間管理職としてOKというラインを決めていき、それ以外のことは口を出さないというスタンスがポイントである。

ポイント3:中間管理職に最低限行って欲しいことを決め、それ以外は口出ししない。

常に中間管理職の味方になる

中間管理職になりたての人は、当然、マネジメント経験もまだまだ未熟だ。部下とのトラブルも起こしてしまうだろう。そうすると、その部下があなたに対して、「○○さんにはついていけません。」などと相談してくることもあるかもしれない。

このような時、中間管理職の味方というスタンスを崩してはいけない。崩していいのは、その中間管理職が法令違反と会社全体の方針に反することをやっているときのみである。

このようなシチュエーションで部下側に寄り添ってしまうと、部下としては、「やはり自分の方が正しい」と認識し、ますます中間管理職には従わなくなってしまう。

「そんなことをしたのか。それは部下側も思うところがあるよな…。」と思ってしまうようなシチュエーションがあったとしても、そこはぐっと我慢。
「○○さんにも考えがあるんだろう。思うところがあるなら本人に直接聞いてみなさい。」と、部下側の味方にならないことを徹底してほしい。そうすることで、中間管理職からあなたへの信頼も高まり、結束は深まるはずだ。

もちろん、ほとぼりが冷めたら、中間管理職を個別に呼び出して指導することは必要である。

ポイント4:常に中間管理職の味方になり、安心してマネジメントできるようにしてあげる。

中間管理職より上位にいる人への不満を公にすることを許さない

部下:「うちの会社って、こういうところがダメですよね」
上司:「そうだな、俺もそう思う」

こんなやり取りが行われている会社は少なくない。

しかし、これをやってしまうと、部下は会社や上層部に対しての不満は正しいことなんだと認識し、他の部下にも不満が伝染していってしまう。上司が部下の不満に同調してしまったことで、その上司以下の組織が腐っていってしまうのだ。

中間管理職自らが、部下の前で上司や会社の方針への不満を吐露するのはもってのほか。

部下から話が上がってきたときも、まずは自分の説明で部下の不満を解消するように努めること。
自分も同じような不満を持っているときは、「その件については自分もいろいろ考えて、上司に掛け合ってみてるから少し待って。後、同調者が増えると収集つかなくなるから、俺にしか言わないように。」などと、受け入れつつも同調しないことが大事だ。

ポイント5:中間管理職以下の機能不全を防ぐため、上位層への不満は個別に巻き取り公にさせない。

以上が、主だった中間管理職を育成していくポイントである。参考にしていただけたら幸いである。