貨物量が徐々に回復し、2021年度の物流17業種総市場規模は前年度比7.7%増の21.5兆円の見込
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は物流17業種総市場を調査し、17業種別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
物流17業種総市場規模推移・予測
1.市場概況
2020年度の物流17業種総市場規模は、前年度比97.6%の20兆405億円と推計した。
国内(内需)関連物流では、EC市場や食品スーパー等の一部小売業態、医薬品・医療機器関連、半導体等のエレクトロニクス関連など、堅調に推移した分野もみられた。一方、コロナ禍により低迷した自動車産業等の国内主要産業向けの物流は、勢いに欠ける結果となった。
国際物流では、新型コロナウイルス感染拡大により、特に2020年度前半に世界的な経済活動の停滞がみられ、海上輸送・航空輸送ともに荷動きが大きく低迷した。その後、中国における生産活動や米国の消費回復などがみられ、荷動きは復活傾向に向かった。しかし、海上コンテナ輸送をはじめとしたコンテナ貨物の滞留や滞船、運航遅延が頻発し、荷動き回復の大きな足かせとなった。
2.注目トピック
持続可能な物流の構築に向けて
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。物流事業者においても、環境負荷軽減に関する取り組みが加速している。
また、引き続き物流業界においては人手不足も深刻な問題となっている。他産業に比べ、トラックドライバーは労働時間が長く、賃金が低い傾向があり、若年層の就労者数減少に加え、ドライバーの高齢化も進んでいる。さらに、労働基準法の改正により、時間外労働時間が年間960時間に制限される「2024年問題」が迫り、物流事業者にとって人材確保並びに効率化は最重要課題となっている。
このような状況のもと、国土交通省では2019年より「ホワイト物流」推進運動を始めた。いまや「物流」は社会全体の一部の重要な機能として、社会的にも注目される業界となっている。持続可能な物流を構築するためにも、物流事業者はもちろん、荷主事業者や消費者一人一人の理解と取り組みが重要である。
3.将来展望
2021年度の物流17業種総市場規模は、前年度比107.7%の21兆5,810億円を見込む。
EC市場の拡大を受け、引き続きラストワンマイルを中心とした物流業種の宅配便や軽貨物輸送などは堅調に推移する見込みである。また、産業向けの物流も2020年度に比べると回復する見込みであるほか、海上輸送・航空輸送の需給ひっ迫による輸送運賃の高騰も継続すると考える。
なお、前年度比7.7%増という大幅な市場拡大は輸送運賃の高騰に因る部分が大きく、物量や荷動きがコロナ禍以前の水準に回復することは想定していない。物流業種別では、海運や宅配便、航空貨物輸送、フォワーディング等が大幅に増加し、市場規模を押し上げる見込みである。
調査要綱
1.調査期間: 2022年1月~4月 2.調査対象: 国内有力物流事業者等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<物流17業種とは> 本調査における「物流17業種」とは、海運事業、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業、宅配便事業(国内)、特別積合せ貨物運送事業、普通倉庫事業、フォワーディング事業、一般港湾運送事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用貨物運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、バイク便輸送事業、納品代行事業、その他事業(トランクルームおよび周辺事業)を対象とする。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 空飛ぶクルマ機体のみ海運事業、3PL事業、宅配便事業(国内)、特別積合せ貨物運送事業、普通倉庫事業、フォワーディング事業、一般港湾運送事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用貨物運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、バイク便輸送事業、納品代行事業、その他事業(トランクルームおよび周辺事業) |
出典資料について
資料名 | 2022年版 物流市場の現状と将来展望 |
発刊日 | 2022年04月28日 |
体裁 | A4 312ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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