独占インタビュー|ロナ・デービス(グローバル広報&コミュニケーションズ統括・Wix グローバルミートアップ責任者・Wix Playground 統括)
1904年にニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源となり、国連によって1975年に3月8日が「国際女性デー(International Women’s Day)」として制定されました。国際女性デーは、すばらしい役割を担ってきた女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日です。
女性の社会参画が著しいイスラエルでは、その働き方に日本と大きな違いがありますが、その実態について、第三子の出産を終え、Wixイスラエル本社に職場復帰したばかりのRona Davis(ロナ・デービス)さんにお話しいただきました。
―――まずはご自分のキャリアについてお話しいただけますか。
Wixイスラエル本社でグローバル広報とコミュニケーションズ、グローバルミートアップ(※1)、 およびWix Playground(※2)を統括しており、ここで7年半勤務しています。以前はPR代理店でVPとして働いており、その時のクライアントのひとつがWixでした。前職ではかなり上の役職に就いていたにも関わらず、代理店での仕事は限定的なものでした。そんな中Wixの社内PRをやってもらえないかと連絡を貰い、ここで全く新しいキャリアを開始することになりました。入社時は子供は一人でしたが、入社後新たに二人の子供を授かり、先月産休から復帰したばかりです。
―――第三子の誕生おめでとうございます!イスラエルでの女性の活躍についてお話を伺わせてください。マネジメントレベルにおける女性社員の割合が、イスラエルでは30%を超えているのに対して、日本は10%未満と大きな差があります。これには国のサポート体制や法律など、何か特別な理由があるのでしょうか?
すでに全世界で、働く女性に対するサポートが始まっていると思います。女性が多様な力を持ち、多くの力をもたらすことを世界は既に理解していますから。
知識は男性ばかりがもたらすものではありませんし、男性は男性のことに精通していますが、女性は女性のことに精通しています。特にWixは女性の昇進にとても熱心に取り組んでおり、実際にグローバルマネージャーの45%が女性です。
働き手は人間でありプロフェッショナルなのですから、もはや働き手が男性であるか、女性であるかは問題ではないのです。ここでは子供を三人持つことは、マネージャー職に就くことの障害にはなりません。また失礼にあたりますから、誰も子供がいることや、妊娠について聞いたりもしません。Wixでは妊娠中の女性を採用しています。古い時代とは違い、今日、プロフェッショナルは非常に高い価値を持っているのです。
―――女性のマネージャーが45%というのは非常に高い割合ですね。またイスラエルは出生率も非常に高く、2019年には3.01人に達していますが、子育てと仕事の両立は決して簡単ではないと思います。Wixでは、子育てと仕事の両立を支援する特別なシステムなどはありますか?
Wixは子育てに限らず、社員が生活と仕事のバランスをとるためなら何でもしてくれます。例えばイスラエル人は8月が好きですが、社員の多くは子供を持っており、8月は学校が休みであるため、週末に家族と何をすべきか悩ましい月でもあります。その間は、毎週末Wixがすべての費用を助成し、家族全員が参加できる最高のサマーキャンプを主催してくれるんです。去年のある週末は、社員とその家族全員で恐竜博物館に行きました。またある週は、ポップコーンや飲み物つきの映画館でのアクティビティ。何より室内で暑くないですし、社員同士の子供がコミュニケーションが取れるもの最高です。
Wixは社員を信頼しています。ですから、子供のいる社員が就業時間中に、子供を迎えに行くことも可能です。その後まだ業務が残っていれば、パソコンデスクに戻り仕事を続けるだけの話。社員が期限内にちゃんと仕事を終わらせられることを会社は信じているからこそ、仕事と家族との時間のバランスのサポートのため、できるすべてのことをしてくれるのです。3人の子供の放課後の時間をマネジメントできるなら、自分自身がしなければならないことと仕事のバランスをマネジメントすることも可能だと思います。
―――日本では男性に対する育児休暇もあり、20年度に育児休業を取得した男性は12.65%で初めて1割を超え、過去最高を記録したものの、それでもまだ10%程度と非常に少なく、やはり子育ての比重としては女性が高くなっています。女性が社会で活躍するためには、国や家族の支援が不可欠化と思いますが、家庭や子育てと仕事の両立に悩む女性に対するアドバイスはありますか?
イスラエルでは母親が産休を取るか父親が取るかを選択できるようになっているため、産休を取る男性もいます。私が産休を取り職場復帰したのと同様、私の夫も産休を取れば政府から15週間の補助金が支給されます。当社でも6ヶ月以上の産休を取る人が多く、15週間を過ぎた場合は無給となりますが、休暇後も同じポジションの仕事に戻って働くことが可能です。もっと長い産休を望むとしても会社は許可してくれますが、私が今回3ヶ月半の産休で職場復帰したのは、早く戻って仕事がしたかったからです。
もっと多くの女性の社会参画を願うなら、育児へのサポートがなければ女性は働くことが出来ないのですから、政府のサポートが必要不可欠です。そうすれば会社があなたの仕事と生活のバランスを取ることをサポートしてくれます。幸運なことに、Wixを含めたイスラエル企業の殆どが、働く女性に限らず、すべての働く人の味方です。当社では、CEOですら週に2回、午後4時に子供を迎えに行っているんですよ。
日本にこのような制度があるのかはどうかわかりませんが、これが世界的な流れですし、いつか必ずこのような制度が採用されるべきだし、それが会社の義務であるとも思います。今日、多くの企業が社員の快適なライフバランスの実現のために投資しています。Wixはコロナ禍、社員に次のような内容のメールを送ってくれました。「会社はあなたがとても一生懸命働いていることを理解しています。だから休むときはちゃんと休んでください。休暇を取り、家族と一緒に楽しんでください。家族と、仕事と生活のバランスが取れていることを確認して欲しいからです。バランスを正しくとれば、働きすぎで燃え尽きてしまうことなく、はるかに幸せに、より効率よく働くことができるし、誰もがそうであるべきです。」
―――出産のサポート体制は、日本の体制と全く違うように感じられます。日本では、男性が産休を取る権利があることを知っていても、自分の周囲で産休をとった男性を知りませんし、むしろ忙しすぎて、休暇そのものを取らない人も多くいます。また日本では通常、出産後の最初の数年間は女性はフルタイムで働くことが現実的に不可能に近い状態です。沢山の優秀な女性が子供を持つ選択をしたため、キャリアを諦めなければならない自体に陥っています。女性の社会参画にはここも改善すべきだと思われますが。
イスラエルでも多くの場合は女性が産休を取ります。私の知っている数名の男性は産休取得の経験がありますが、男性の産休取得率が半分を超えるといったような現状ではありません、しかし、何年も時間をかけてより一般的になっていくと思います。このような流れによる変化も起こっています。例えば、昨日娘の友達の誕生会に参加したのですが、付き添いとして参加した父親が非常に多く、私も驚いたくらいです。
―――異なる文化やバックグラウンドを持つ人々が共通バリューを共有することは、思ったほど簡単ではないのではないかと思います。バリューの解釈不一致を防ぐためにWixはどのような努力をしているのでしょうか?
私たちは世界中すべての支社にWixの文化を取り入れたいと思っていると同時に、常に多文化を理解しようと意識しています。たとえば社内交流会を行うときには、日本や他のオフィスのある国での休日にも気を配る必要があります。長く一緒に働いている間、何年にもわたって互いに協力することを学びました。他人の文化を理解するようにすることは重要です。例えばイスラエル人は、騒がしくてときに失礼で、せっかちです。最初は驚くかもしれませんが、これが偽らざる私たちの文化で、私たちの姿です。それを理解し、実際に一緒に仕事に取り組むのには時間がかかります。私はさまざまな文化に携わってきましたし、文化を理解していなかったために失敗したこともありましたが、都度修正してここまで来ました。いつも社員の誰もが快適に過ごせるようにできればと思っています。
※1:Wix が各国で主催するユーザーカンファレンス
※2:クリエイター向けにデザインカルチャーや役立つ情報を伝えていく場所。オンラインの場だけでなく、ニューヨークではリアルな場も有している。