写真提供:ReWalk Ltd
(画像=写真提供:ReWalk Ltd)

売り上げ拡大のために新しいアイデアを求めている日本の中小企業は多いですが、実は、イスラエルには、様々な分野で企業が成長できる革新的なアイデアが眠っているのです。

ご存知ですか?損保ジャパン、三菱、トヨタ、デンソーなど日本の大手企業は、すでにイスラエルに進出しており、現地の担当者から得た最新情報を日本の本社へとフィードバックしています。日本とイスラエルの協力関係については後ほど詳しくご紹介しますが、これまでにも実績はいくつも挙げられています。

では、「中小企業が、大手のようにイスラエルで理想的な提携企業を見つけ出し、ビジネスを発展成長させるにはどうすればいいか?」

この質問に答えるためには、まず、いくつかの質問にステップを踏んで答えていく必要があります。

1. イスラエルのイノベーション力がどれほどなのか?

2. イスラエルと日本の結びつきについて?

3. イスラエルで調査を行う際のベストな方法は?

4. 日本にいたままで調査は可能なのか?

5. 業務提携する候補企業が見つかるまでの所要期間は?

6. イスラエルへの初回訪問ですべき事は何か?

7. イスラエルで業務提携候補企業と面会した後、どんなフォローが必要か?

イノベーションとイスラエル

イスラエルの新技術やイノベーション力に関する情報は、インターネット検索でたくさん手に入るので、ここでは要点だけをご紹介します。 イスラエルは、独創性を重視する国であり、約6,000社のスタートアップ企業が存在しています。その中でも「アーリーステージ」を超えた2,400社が注目するべき企業であると言えます。ハイテク企業でイノベーション力もあるスタートアップ企業は、イスラエル全土に分布しています。

イスラエル社会は、学校や軍隊でつながっていることが多く、その結びつきは強いです。一方ビジネスでは、形式張らないスタイルをとり、どんな人とつながるかを大切にすることで、目標を共有する結束力のあるチームを形成しています。また、文章でのやりとりではなく、電話でのやりとりがメインなので、物事が進むスピードが速いという特徴があります。イスラエルでは、うまくいかない事も、恥ずかしい事ではなく、 成功に至るための実績として前向きに評価されるのです。

日本とイスラエルのつながりについて

ビジネスにおける日本とイスラエルの関係は、日本・イスラエル商工会議所が設立された1954年から始まっています。それから61年後の2015年、安倍・ネタニヤフ両首脳(当時)が両国の経済交流活性化を発表。これをきっかけに、本格的な盛り上がりを見せはじめました。とはいえ、日本からの訪問客は伸び悩んでおり、2019年はわずか21,600人で、イスラエルへの全渡航者に占める割合は、わずか0.6%にしか過ぎません。ちなみに、同年イスラエルを訪れた中国人旅行者は、その5倍です。

ミーティングをする人々
(画像=ミーティングをする人々)

訪問者は少ないながらも、イスラエルに投資した日本企業の数は、2014年には26社でしたが、2019年には90社を超えており、250%増となっています。この年のハイテク企業への投資のうち、日本の企業や投資家が関与した投資は15億ドル相当でした。その中でも日本の産業界が高い関心を寄せている分野は、人工知能、サイバーセキュリティ、自動車、ビッグデータ、IoT、フィンテック、デジタルヘルスなどが主なものです。

提携企業を探す準備の段階

「自社の計画や目的を明確にすること」が、優良な提携企業を獲得するためには欠かせません。詳細を示した文書を準備(日本語と英語)し、企業が承認していれば、提携企業を探す際の基準として使えるのはもちろん、文書にまとめる過程で、自社の求めるものや相手企業に期待するものを正確に詳細に、イスラエル側、日本側の双方が把握できるようになります。

イスラエルの候補企業にこの文書を提示することで、良い提携先になれるかどうかを、相手が判断することもできます。この段階では、候補企業のバックグランドを詳しく知るべきであり、調査は綿密に行わなければいけません。よい結果を出すためにも、焦らず確実に進めて行くことが大切です。

イスラエル現地の調査パートナーを利用するメリット

日本企業の大多数は、インターネットで有望な技術提携企業を探しています。大使館の経済部やジェトロ、イスラエル・日本商工会議所など、政府機関やその協力団体が候補企業を推薦してくれることもあります。しかし、結果は期待外れに終わることが少なくありません。

その理由は、イスラエルでは伸び盛りで勢いのある企業ほど、重要な情報を公表していないため、重要な取引関係をインターネットで見つけることは容易ではないからです。この問題の解決は、企業探しのプロセスをイスラエル現地に移すことで、一気に道が開け、情報へのアクセスが容易になります。そうは言っても、さらにそこから自社の希望にあった価値のある情報が提供できる企業を見つけるには、長い時間と何本もの電話でのコンタクトなどが必要で、決断力と粘り強さが求められます。

日本の大手企業は、すでに情報収集のための窓口をイスラエル現地に確保しています。(Sompo Digital Lab、NTT Innovation Lab、Mitsubishi Innovation Center、Maruho Israel Innovation Lab、SBI JI Innovation Fund、Denso Israel Innovation Labなど)
中小企業でも、自社のニーズをきちんと理解していれば、現地での情報収集ができるパートナーを使うことで、大手企業と同様にイスラエル市場を集中的に調査できるのです。

業務提携する候補企業が見つかるまでの所要期間は?

イスラエル現地の調査パートナーに依頼し、十分な準備を行い、依頼企業から迅速なフィードバックを得られた場合、計画的に探せば、10~12週間程度で優良な候補の企業が見つかります。

このプロセスにおいては、多くのコミュニケーションが発生します。 たとえば、日本の依頼企業と調査パートナーとのやりとり、調査パートナーと候補企業とのやりとり、候補企業の選定、選別、候補企業からの詳細な情報の入手とその報告、ミーティングの設定などです。

イスラエルへの初回訪問ですべき事は何か?

エルアル航空の飛行機
(画像=エルアル航空の飛行機)

現状では、実際にイスラエルを訪問する前にZoom等でミーティングをするのが現実的です。オンラインのミーティングを利用して、調査パートナーが提案した候補企業が、自社の要望を満たしているか、同じ方向性を持ち合わせているかなどを確認していただくことができます。このオンラインのミーティングを重ねることで、イスラエル訪問が実現した際の成果が大きく変わります。

片道9,000kmの長距離を、多くの時間と費用のかけて行くからには、貴重な人脈を手に入れ、次のステップへのはっきりとした道筋をつけて帰国することが大切です。

実際のイスラエルへの訪問の際には、オンラインではできない事に重点を置くべきです。このような着実なステップを踏むことで、大企業でなくても、イスラエルの新技術やイノベーション力を自社に取り入れる事ができるのです。

イスラエルを初めて訪れた日本人の多くは、イスラエル社会が、開放的でかつ動きがダイナミックなこと、そして国民が親しみやすく、日本人に対して好意的な態度であることに驚かれます。イスラエルへ現地への訪問は、価値のある事ですし、機会があるごとに何度も繰り返し訪問していただきたいです。

帰国後のフォローアップ

イスラエル訪問で大きな成果を上げることができた、その後はどうすればいいかというと、そこから先も、現地の調査パートナーとの関係が重要になります。 イスラエルの調査パートナーは、詳細を確認し、より多くの情報を仕入れ、進捗状況を常に更新するための窓口として、大手企業の現地担当者と同じような役割を果たします。

日本とイスラエルの協力関係の例

過去6年間で、両国間には多くの協力関係が生まれ、様々な実績を上げています。

大手メカトロニクスメーカーの安川電機が出資したRewalk社は、脊髄損傷による下肢麻痺者の起立、歩行、方向転換、階段の昇降などをサポートするウェアラブルな歩行アシスト装置を開発しています。

住友商事は、イスラエルのハイテクベンチャー企業数社に出資しています。その中の一つOttopia社は、自動走行車両の遠隔操作ソフトウェアを開発しています。

豊田通商は、ソフトウェアを使う日本の自動車メーカー向けに、自動車向けソフトウェアの脆弱性を検出・解析するセキュリティサービスを提供するCybellum Technologies社と販売契約を締結しました。

三菱のCVC子会社は、2,000万ドルを調達し、B2Bオンライン決済および信用取引を行うFundbox社に出資しました。

三井グループは、アグリテック企業2社に出資しています。Kaiima社は食用・飼料用作物の生産性向上と、資源の効率的な利用を可能にするプラットフォームを育種家に提供しており、Phytechs社は作物の健康状態や植物の状態に関するデータを監視する植物センサーを開発しています。

上記は、すべて日本の大手企業の例ですが、中小企業も同じようにイスラエルのテクノロジー力を活用することが十分に可能です。

テキスト:Mike Druttman(Keyzuna創業者)

マイク・ドラットマン
(画像=マイク・ドラットマン)

マイク・ドラットマン

英国生まれ、英国育ち。成人後にイスラエルに移住。ビジネスのマッチングや英文コピーライターとして活動した後、日本に特別な愛着を感じ、イスラエル企業との関係構築で支援を必要としている日本企業をサポートするためにKeyzunaを設立。同社の設立者兼エグゼクティブ・マネージャーを務める。Webサイト:www.keyzuna.com