雑収入,取り扱い,基本
(写真=PIXTA)

数ある勘定科目の中でも、その複雑さから特に曖昧になりやすい「雑収入」。雑収入は決算書の見た目に加えて、金融機関からの評価にも影響を及ぼす重要な勘定科目だ。概要の理解に自信がない経営者は、これを機に正しい基礎知識をしっかりと身につけていこう。

目次

  1. 雑収入とは?
    1. 雑収入と雑所得の違い
  2. 雑収入の範囲は?含まれる勘定科目の具体例
    1. 1.現金過不足
    2. 2.各種税金の還付金や還付加算金
    3. 3.営業活動以外で発生した地代や家賃
    4. 4.保険金
    5. 5.作業屑やスクラップの売却収入
    6. 6.アフィリエイト収入
  3. 雑収入の仕訳・会計処理の方法は?
    1. 1.現金過不足の仕訳
    2. 2.消費税の還付金に関する仕訳
    3. 3.その他の仕訳
  4. 雑収入の税法・税制上の取り扱いは?
    1. 不動産の賃貸に関するもの
    2. その他、不課税取引として認められているもの
  5. 雑収入の扱いにおいて、経営者が押さえておきたい3つのポイント
    1. 1. 補助科目や摘要を活用し、分かりやすく記載しよう
    2. 2.ただでさえ複雑であるため、余計なものを混入させない
    3. 3.売上高として計上したほうが、融資で有利になることも
  6. 複雑な勘定科目だからこそ、基礎的な部分から理解を

雑収入とは?

雑収入とは営業外収益のうち、どの勘定科目にも当てはまらないものの総称だ。金額が低いなどの理由で重要性が低い収益は、まとめて雑収入として処理されている。
この説明だけでは少し分かりづらいため、もう少し基礎的な部分から解説していこう。一般的な企業が経営をしていると、営業活動(本業)以外の部分で収益が発生することがある。これを「営業外収益」と言い、不動産を外部に貸し付けている場合や、銀行から利息を受け取る場合などがこれに該当する。
営業外収益はその内容によって、10種類以上の勘定科目に分けられている。

○営業外収益の勘定科目の一例
勘定科目 概要(各勘定科目に含まれるもの)
・受取地代 外部に土地を貸し付けている場合に発生する地代。
・受取手数料 斡旋や仲介、代理などを行った際に受け取る手数料。
・受取家賃 外部に建物を貸し付けている場合に発生する家賃。
・為替差益 外貨建ての債権・債務のうち、為替レートの変動によって生じた収益分。
・有価証券利息 国債や公社債などの有価証券から発生する受取利息。

上記のように営業外収益にはさまざまな勘定科目があるが、そのいずれにも該当しないものが雑収入だ。雑収入は「雑益」とも呼ばれており、たとえば法人税や都道府県民税の還付加算金などが含まれる。
そんな雑収入を計上する規則については、以下のように定められている。

・営業外収益のうち、その金額が営業外収益の総額の百分の十以下のもので、一括して表示することが適当であるもの

つまり、営業外収益のほかの勘定科目に当てはまらない収益であっても、一定以上の金額であれば雑収入には含まれないため注意しておきたい。このような収益については、売上高など別の勘定科目で処理をすることになる。

雑収入と雑所得の違い

雑収入とよく似た言葉に、「雑所得」と呼ばれるものがある。この2つは混同されがちだが、実際には全く異なるものであるため注意が必要だ。
上記で解説した通り、雑収入は企業の仕訳や財務諸表に用いる勘定科目のひとつ。それに対して雑所得は課税所得の一区分であり、主に個人事業主が確定申告の際に処理をするものである。
具体的な雑所得としては、作家以外の原稿料や印税、知人への貸付金利息などが挙げられるだろう。つまり、雑所得は企業の会計とは別の話になってくるため、法人の税務・会計に絞って学びたい場合には、一旦その範囲から雑所得を除外しても構わない。

雑収入の範囲は?含まれる勘定科目の具体例

前述の通り、雑収入には営業外収益の10%以下という基準があるため、雑収入として処理できる範囲は企業によって大きく異なる。ただし、雑収入に含まれやすい勘定科目にはある程度の傾向が見られるため、以下では雑収入の一例を見ていこう。

○雑収入に含まれる勘定科目の一例
・現金過不足
・各種税金の還付金や還付加算金
・保険会社の契約者配当金
・営業活動以外で発生した地代や家賃
・損害賠償金
・預かり保証金
・報償金
・保険金
・祝儀や祝い金
・作業屑やスクラップの売却収入
・アフィリエイト収入 など

上記が雑収入の一例となるが、中には扱いが難しいものや判断に迷いやすい勘定科目もある。そのため、以下では特に注意しておきたい勘定科目をピックアップして、その概要を詳しく解説していこう。

1.現金過不足

帳簿上の現金残高と実際の現金残高が一致しない場合には、その差額を「現金過不足」として処理をする。たとえば、伝票上のデータと手元の現金額を比べるレジ締めにおいて、不一致が発生したときに計上する勘定科目と考えれば分かりやすいだろう。
現金過不足の注意点は、あくまでも「一時的な勘定科目」である点だ。不一致の原因が判明したときには、後日正しい勘定科目に振り替える必要がある。
また、原因不明の現金過不足を抱えている状態で決算日が到来した場合には、その勘定を雑損失・雑収入に振り替える。つまり、現金過不足は決算がくる度に整理をする必要があるので、しっかりと覚えておこう。

2.各種税金の還付金や還付加算金

税金関連の収益のうち、特に消費税還付金は仕組みがやや複雑なので注意しておきたい。消費税の会計処理では決算時に仮払額・仮受額を相殺するが、このときに「仮払額>仮受額」となった場合には、その差額分は還付されるべき消費税といえる。
つまり、仮払額から仮受額を差し引いた金額は収益の一部とみなされるので、この差額分は雑収入勘定として処理される。

3.営業活動以外で発生した地代や家賃

地代収入や家賃収入については、以下のようにケースごとに処理方法が異なるので要注意だ。

発生する場面 金額 処理方法
・通常時の営業活動以外 営業外収益の10%以下 雑収入として計上
・通常時の営業活動以外 営業外収益の10%超 「受取賃貸料」や「受取家賃」など、独立した科目で計上
・通常時の営業活動内 金額に関わらず処理方法は固定 売上として計上

特に多くの不動産を所有している場合は、地代収入・家賃収入が多額にのぼる可能性がある。つまり、雑収入として処理できない恐れがあるので、営業外収益と収益額をしっかりと比較することが重要だ。

4.保険金

対象となる保険は「生命保険・損害保険」の2つに大きく分けられるが、中でも生命保険に関しては、以下のようにさまざまな保険金が雑収入に該当する。

・死亡保険金
・満期返戻金
・解約返戻金
・払済保険金

なお、会計の世界には「保険料」と呼ばれる勘定科目も存在するが、これは支払保険料を処理するための勘定科目。つまり、収益にあたる保険金を処理する勘定科目ではないため、間違えないようにしっかりと覚えておこう。

5.作業屑やスクラップの売却収入

作業屑とは、製品を製造する過程において発生する原材料の残り屑のこと。この残り屑のうち、売却価値・利用価値があるものは資産にみなされるので、収益として処理しなければならない。
製造過程において恒常的に発生する作業屑や、その資産価値が一定以上の作業屑については、売上高として処理することが原則だ。ただし、それ以外の作業屑に関しては営業外収益に計上、すなわち雑収入として処理することが認められている。

6.アフィリエイト収入

アフィリエイトとは、インターネット上に掲載する成功報酬型の広告のこと。たとえば、自社でアクセス数につながるようなホームページを開設し、そのページ上にアフィリエイト広告を掲載すれば、ウェブサイトの運営元は一定の収入を期待できる。
このときに発生するアフィリエイト収入は、少額であれば雑収入として処理することが可能だ。ただし、アフィリエイト収入が高額にのぼる場合や、事業としてアフィリエイトに取り組んでいる場合には、営業収益として売上に計上しなければならない。

ここまでを見て分かる通り、雑収入のルールは非常に細かく決められている。基本的には「営業外収益の10%以下」がひとつの目安となるが、中には少額であっても売上に計上される収益が存在するため注意しておきたい。
収益の分類でどうしても悩んでしまう場合には、税理士などの専門家に相談する方法がおすすめだ。雑収入はルールや仕組みがやや複雑であるため、必要に応じて専門家の力も借りながら正しい方法で処理していこう。

雑収入の仕訳・会計処理の方法は?

ここからは復習の意味合いも込めて、雑収入の会計処理の方法を見直していく。以下では、雑収入の仕訳・会計処理において、特に注意しておきたい勘定科目をまとめてみた。
例を用いて解説しているため、正しい処理方法を確認しながらさらに理解を深めていこう。

1.現金過不足の仕訳

決算時になっても現金過不足が生じている場合には、過剰分・不足分を正しい方法で処理しなければならない。では、仮に5,000円の現金過剰が発生したと考えて、実際の処理方法を確認していこう。
5,000円の現金過剰が見つかったタイミングでは、以下のように帳簿をつけているはずだ。

借方 貸方
現金 5,000円 現金過不足 5,000円

もし決算までに消耗品代が原因であったことが判明した場合には、上記の現金を「現金過不足」に、現金過不足を「消耗品代」に振り替えれば問題ない。しかし、万が一原因が分からなかったときには、以下のように帳簿を調整する必要がある。

借方 貸方
現金過不足 5,000円 雑益 5,000円

つまり、過剰金を現金過不足勘定の借方から、雑収入(雑益)の貸方へと振り替える作業を行っていく。ちなみに現金不足が発生した場合には、上記の借方と貸方が逆になり、さらに雑益を「雑損」に変える必要があるので注意しておこう。

2.消費税の還付金に関する仕訳

税込処理方式を採用しており、さらに消費税等の仮払額が仮受額よりも大きい場合は、その差額を資産として計上しなければならない。たとえば仮払額が20万円、仮受額が15万円であったと仮定すると、仕訳には以下のように記載する。

借方 貸方
未収消費税等 5万円 雑益 5万円

ここで注意しておきたいのは、仮払額・仮受額をそのまま記載してはいけない点だ。資産として計上するのはあくまでも差額なので、上記の例では「5万円(20万円-5万円)」と記載することが正しい。

3.その他の仕訳

特に注意したいのは上記の2つだが、その他の勘定科目についても基本的な会計処理・仕訳を理解しておくことが重要だ。そこで以下では、各ケースにわけて仕訳の方法を簡単にまとめてみた。

○10万円の保険金を受け取ったとき
借方 貸方
普通預金 10万円 雑益 10万円
○作業屑・スクラップを5,000円で売却したとき
借方 貸方
現金 5,000円 雑益 5,000円
○賃料(3万円)から水道光熱費(1万円)を差し引いた家賃収入を受けとったとき
借方 貸方
現金 2万円 雑益 3万円
水道光熱費 1万円

ちなみに、作業屑の売却代金や家賃収入を銀行振込で受け取る場合は、借方の現金を「普通預金」に書き換える必要がある。つまり、収益の受け取り方によっても正しい記載方法は変わってくるため、細かいポイントではあるが注意しておこう。

雑収入の税法・税制上の取り扱いは?

雑収入として扱われる収益は、原則として課税売上・課税取引に該当する。つまり、基本的には消費税が発生するものの、以下で挙げる2つの収益については例外(課税対象外)とされているため注意しておきたい。

不動産の賃貸に関するもの

地代収入や家賃収入など、不動産の賃貸によって発生する収益については、基本的に非課税取引として扱われている。ただし、貸付期間が1ヶ月に満たない場合は課税取引に含まれるので、短いスパンで契約・解約をしている企業は注意が必要だ。

その他、不課税取引として認められているもの

以下に該当する収益については、例外的に不課税取引(課税対象外)として認められている。

○不課税取引として扱われる収益
・法人税の還付金
・消費税の差額調整分(※税抜処理方式の場合)
・受取保険金
・損害賠償金
・祝儀や祝い金
・その他、寸志等の金銭収入

なお、消費税に関して税込処理方式を採用している場合には、消費税を費用として扱うことになるので、原則として課税取引に含まれてしまう。本記事でも軽く解説したが、消費税には「税込処理方式・税抜処理方式」の2つの処理方法があり、どちらを採用するのかによって扱いが大きく変わってくるため注意しておこう。

雑収入の扱いにおいて、経営者が押さえておきたい3つのポイント

ここまで雑収入の基礎知識を詳しく解説してきたが、他にも役に立つ知識がいくつかある。その中でも、以下では経営者が特に押さえておきたい3つのポイントをまとめた。
正しく処理することはもちろん、状況に合わせて雑収入を上手く扱うために、以下のポイントもしっかりと理解しておこう。

1. 補助科目や摘要を活用し、分かりやすく記載しよう

雑収入はその性質上、さまざまな収益が勘定科目として含まれてくる。今回紹介した以外にも勘定科目はいくつかあるため、内容を分かりやすく記載しておくことがベストだ。
具体的には、補助科目や摘要を活用する方法がある。たとえば、取引先を補助科目として設定したり、どこから入金されたのかを摘要に追記したりするだけでも、帳簿の見やすさは一気に変わってくるはずだ。
会計帳簿は単にお金の流れを記載するものではなく、時には会社の経営状況・財務状況を分析する際にも使用する重要なもの。だからこそ、いつ確認しても取引の内容を思い出せるように、補助科目・摘要を上手く活用していこう。

2.ただでさえ複雑であるため、余計なものを混入させない

雑収入は勘定科目の中でも特に複雑であるため、余計なものを混入させるべきではない。たとえば、仕入れの代金を多く支払ってしまっていた場合に、返金される金額を雑収入として計上するケースが見られる。
しかし、このようなお金は本来「費用の減額」として処理するべきであり、これを雑収入に含めると帳簿を複雑化させてしまう。雑収入に含まれる収益はもちろんだが、別の方法で処理できる収益にも着目し、できるだけシンプルな帳簿にすることを意識しよう。

3.売上高として計上したほうが、融資で有利になることも

実際に会計処理や仕訳を進めていると、ある収益に関して「売上高か雑収入のどちらに含めるべきか…」と悩んでしまうこともあるだろう。そのようなケースでは、基本的には売上高として計上することをおすすめする。
たとえば、以下の2つの決算書(※一部)を見比べてみてほしい。

決算書A 決算書B
・売上高 100,000 107,000
・営業利益 -5,000 2,000
・雑収入 10,000 3,000

決算書Aにおける雑収入のうち、7,000を売上高として計上したものが決算書Bだ。売上高が多いということは「本業での利益が増えている状態」を表すため、単純に決算書Bのほうが見栄えが良いと言えるだろう。
また、雑収入の一部を営業収益として計上したことで、営業利益がプラスになっている点にも注目したい。実はこの営業利益は、金融機関などから融資を受ける際にも重視されやすいポイントであり、営業利益が多いほど評価は高まっていく。
とは言え、無理に売上高として計上する行為は望ましくない。どうしても雑収入を売上高として計上したい場合には、「会社の目的」に該当する事業を追加して、正当な方法で計上できる状況を作っておくことが重要だ。

複雑な勘定科目だからこそ、基礎的な部分から理解を

中には、雑収入について「これまであまり深く考えてこなかった」と感じている経営者もいるだろう。しかし、雑収入の扱い方は企業にとって非常に重要なポイントであり、金融機関からの評価にも影響を及ぼす。そのため、やや専門的な分野ではあるものの、ある程度の知識は身につけておくことが必要だ。
ただし、雑収入は仕組みが複雑であるため、まずは基礎的な部分から理解を深めておきたい。すべての勘定科目を暗記することは現実的ではないので、会計・仕訳に関するルールや原則、基準などはしっかりと身につけておこう。

文・THE OWNER編集部