独占インタビュー | アナット・ティラ・チャーニー(アリスタゴラVC 共同経営者)


世界でのパンデミックが猖獗を極めた2020年秋、アリスタゴラVCという名のベンチャーキャピタルが、アナット・ティラ・チャーニー氏と3人の共同経営者によって立ち上げられました。それは日本の投資家たちに、イスラエル起業家のエコシステムに対する投資機会を紹介していくVCです。

中国、そしてシンガポールでの活動後、現在アナット氏は日本市場に焦点を当てた活動を行っています。その彼女に現在の胸中を語ってもらうと共に、ビジネスに対する考え方を取材しました。

アナット・ティラ・チャーニー氏。写真:ドロン・レッツェッター
(画像=アナット・ティラ・チャーニー氏。写真:ドロン・レッツェッター)

文化への情熱

アナット氏は、ヘブライ大学で法学を学んでいました。そして2年生の時、東アジアの専攻を取る決心をしたのです。

「常にアジア文化に魅了されてきたのです。それで、中国語学科を専攻すると共に、中国と日本の文化と歴史を学びました。」

他の文化にもっと触れてみたいという情熱から、卒業後彼女は北京にあるBLCU、北京語言大学に進学します。

「最初の目的は、自分の語学力を高める事でした。そうするためには、やはり中国に住むことが一番だと思ったのです。現地に住まずに流暢に外国語を操るようになるのはとても大変な事です。2つ目の目的は、アジアでの生活が実際どのようなものなのか、直に経験してみたかったのです。単なる旅行者としての中国の体験とは全く違います。」

彼女はまた、ビジネスインテリジェンス企業で働きました。その企業では、eコマースと携帯端末決済を中心にB2B市場の調査及び参入サポートを、中国進出を目論む国際的な企業に対して提供していました。

法律家からビジネスパーソンへ

イスラエルに戻ると、イスラエル最大手法律事務所の一つであるHFNに、アジア担当の弁護士として就職します。

「テルアビブが拠点でしたが、中国、そしてシンガポールの担当でした。その頃、中国の投資家からイスラエルの技術への投資が非常に大きくなっていたのです。」

「中国とシンガポール、そしてイスラエルを行き来する、そんな生活でした。地元の投資家たちと会合を重ね、彼らがどうのような投資戦略を持っているのか学びました。そんな中、自分が彼らの単なる法律顧問ではなく、アジアの投資家たちとイスラエル企業を結びつけるような存在になっていることに気付いたのです。」

その素晴らしい業績を通じ、彼女は全世界の異なる国々との取引をまとめるファシリテータの立場を手に入れていったのです。

約5年前、彼女はディスカウントキャピタルに、VPとして移っています。それは、今まで彼女が行ってきた事の延長でもありました。

「アジア関連案件を担当していました。シンガポール、そして日本市場への参入を目指すイスラエルの成長ステージのテクノロジー会社を支援していました。具体的には戦略を策定し、パートナーを選び、投資家を募る事でした。またシンガポールや日本の機関投資家たちに、イスラエルの先進技術企業への投資をアドバイスしていました。」

Aristagora VCの設立

彼女は、日本とイスラエルのビジネス取引が非常に大きな成長期を迎えている事に気付きます。彼女は、東京に拠点を置く投資運用会社、アリスタゴラ・アドバイザーズの篠田丈氏とパートナーシップを組み、彼とともに様々な投資案件を扱うようになっていきます。

Aristagora VC
(画像=Aristagora VC)

「私たちは、この機会を生かすために一緒にイスラエルテクノロジー企業に特化したベンチャーキャピタルを立ち上げる決心をしたのです。それは、一方では日本の投資家たちにはイスラエルの先進企業への投資機会を紹介し、他方ではイスラエルの企業にはその会社の成長期を支援する資金調達の機会を与えるものです。」

彼女は今、そのアリスタゴラVCの共同経営者になっています。

「アリスタゴラVCは、3人のイスラエル人経営者と、1人の日本人経営者によって業務を行なっています。私はその中で、このファンドの投資プロセスをリードする役割を担うと共に、このファンドの投資委員会のメンバーでもあります。」

また彼女は、そのマネジメントチームの紅一点です。特にアジアのビジネス社会では、まだまだ男性優位の社会構造が続いており、彼女の活躍は目立つ存在なのです。

「私は、家族を持つ事を決心した女性であり、同時に、ビジネスのプロとしての道を選んだ人間でもあります。男性ばかりの会議の中、ただ1人の女性、というような状況がありました。特に男性優位社会である投資金融業界ではもちろんです。そしてアジア市場で働いていると、私の発言が重要で、耳を傾けられ、私のプロとしての能力が常に試される状況にあるのです。でもそれは、私にとってはとても良い経験だと思っています。」

イスラエルの優位性

イスラエルにおいて、多くの先進技術は、主に軍事分野と学術研究の分野から来ており、その多くは長期的な開発視点に欠けるきらいがあります。

テルアビブ株式市場でのビジネス会議
(画像=テルアビブ株式市場でのビジネス会議)

「イスラエルと日本のコラボレーションを進める上では、革新的な面と、長期的な視点、その二つの間のバランスを保つことが非常に重要になります。私の日本での経験からお話しすると、状況をどのようにコントローするのか分かっている人間がそこにいるかいないかで、そのビジネスに非常に大きな違いが出てきます。」

「日本的には、日本の投資家が、まずシリコンバレーの先進技術に目が向いてしまうのはやむを得ないことでしょう。しかし、イスラエルにも、様々な先進技術を開発している企業があります。人口比でスタートアップ企業の数で、イスラエルは世界でトップです。」

イスラエルでは、毎年、1,000以上の新たなスタートアップ企業が設立されており、GDP比研究開発費は、世界でトップです。それに加え、シリコンバレーでのアーリーステージ・スタートアップ企業の評価額は、イスラエルよりはるかに高い水準にあります。従って、投資に対するリターンが大きくなる可能性は、イスラエルの方がはるかに高い、という事です。

アリスタゴラVC
https://aristagoravc.com/ja/