2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入コスト低減と発電場所の選定・確保がカギ
~約6割の自治体が地域の特徴を生かした再生可能エネルギーとして「屋根置き太陽光発電」と回答~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、共同通信社の協力により、カーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)に向けた施策の動向に関する自治体アンケート調査を実施した。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの普及が不可欠だが、導入コストや発電場所の選定・確保が課題となっている。ここではその一部の分析結果を公表する。
地域の特徴を生かした再生可能エネルギーの有無及び再生可能エネルギーの普及に向けた課題
「脱炭素先行地域」に応募する意向及び再生可能エネルギー事業の「促進区域」を設ける意向
1.調査結果概要
本調査は共同通信社の協力により、2021年9月末までに2050年のカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)を表明している177自治体(24都道府県、153市区町村)に対してアンケート調査を実施し、再生可能エネルギーの普及に向けた自治体の方針や課題を分析した。
地域の特徴を生かした再生可能エネルギーの有無(複数回答)につき、回答数が多かったのは「屋根置き太陽光発電※1」60.5%、「野立て太陽光発電※2」42.4%、「バイオマス発電※3」36.7%であった。低コストや幅広い地域での導入の可能性を特徴とする太陽光発電やバイオマス発電などが回答の上位に来ている。
また、再生可能エネルギーの普及に向けた課題(複数回答)について、回答した177自治体の7割以上が、「発電設備の導入に係るコスト(84.2%)」「発電に適した場所の選定・確保(76.8%)」「蓄電設備の導入に係るコスト(74.6%)」を課題として挙げている。自治体は、再生可能エネルギーの利活用を進める上で発電設備や蓄電設備の導入コストを重視していることが示唆される。
本調査結果から、概して自治体でのコスト負担が課題であることから、今後、再生可能エネルギーを普及拡大していくには、設備の低コスト化や日本政府による導入支援策の拡充などが必要であるものと考える。
※1. 屋根置き太陽光発電の特徴 建物の屋根に太陽光パネルを設置して発電を行うため、市街地や住宅地など地域を問わず導入することができる。加えて、他の再生可能エネルギーと比べ導入コストや計画から発電開始に係る時間、運転管理の負担を抑えられる。
※2. 野立て太陽光発電の特徴 土地に太陽光パネルを設置して発電を行うため、適地の確保という課題がある。しかし、他の再生可能エネルギーと比べて低コストかつ短期で建設することができる。
※3. バイオマス発電の特徴 木質バイオマス発電の他に廃棄物(例:下水汚泥、食品廃棄物)を活用したバイオガス発電もあり、都市部や農村などで導入できる可能性がある。
2.注目トピック
「脱炭素先行地域」と再生可能エネルギー事業「促進区域」に対する自治体の意向
2021年6月の国・地方脱炭素実現会議において決定された「地域脱炭素ロードマップ」において、2030年度までに少なくとも100ヶ所の脱炭素先行地域※4をつくるとしていることから、本調査では脱炭素先行地域への応募の意向や再生可能エネルギー事業の促進区域※5の設定についての意向について尋ねた。
脱炭素先行地域への応募の意向(単数回答)について、対象外と回答した自治体を除く172自治体のうち、「ある」は22.7%、「応募するかどうか検討中」は53.5%、「ない」は23.8%であった。本調査結果では、脱炭素先行地域への応募の意向のある自治体が、施策の例として再生可能エネルギーの導入を挙げている。一方、応募の意向を検討中とした自治体の中には、その理由を「再生可能エネルギー事業の促進区域との関係性を検討中」としている例がある。脱炭素先行地域への応募の意向は、具体的な施策の実施・検討レベルによって変わる可能性があると考える。
また、市区町村に対しては、再生可能エネルギー事業の促進区域設定の意向(単数回答)について尋ねたところ、対象外と回答した自治体を除く150自治体のうち、「ある」は7.3%、「設けるかどうか検討中」は70.0%、「ない」は22.7%であった。新しく設けられる制度であることから、主な検討理由として「制度の詳細が不明」「知識・情報の不足」「関係者との調整が途中」などを挙げているところが多く、動きが鈍い可能性があることが示唆される。
※4. 脱炭素先行地域とは 地域特性に応じた手法を活用し、2030年度までに地域と暮らしに密接に関わる分野の温室効果ガスの削減に取り組み、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴う二酸化炭素排出については実質ゼロを実現し、そのほかの温室効果ガス排出削減についても日本全体の2030 年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現することとし、またそれらの実現の道筋を2025 年度までに立てていることが要件とされる地域である。
※5. 再生可能エネルギー事業の促進区域とは 災害時の電力供給などの地域貢献が見込める再生可能エネルギー事業を地域に呼び込む「促進区域」を市区町村が設けることができる制度で、2022年4月施行予定の改正地球温暖化対策推進法において創設される予定である。
調査要綱
1.調査期間: 2021年10月~11月 2.調査対象: 2021年9月末までに2050年のカーボンニュートラルを表明している177自治体(都道府県、市区町村) 3.調査方法: インターネット・メール・郵送による自治体アンケート |
<カーボンニュートラルに向けた施策に関する自治体アンケート調査とは> 本調査は共同通信社の協力により、2021年9月末までに2050年のカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)を表明している177自治体(24都道府県、153市区町村)を対象としたアンケートを実施し、再生可能エネルギーの普及に向けた自治体の方針や課題を調査した。また、脱炭素先行地域※4への応募や再生可能エネルギー事業の促進区域※5設定の意向についても、分析結果を公表する。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 自治体における再生可能エネルギーの普及促進策 |
出典資料について
資料名 | 2021 カーボンニュートラルに向けた自治体の施策の現状と将来展望 |
発刊日 | 2021年12月07日 |
体裁 | A4 322ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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