黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者は仕事柄、富裕層やお金持ちとお付き合いさせていただくことが多い。ビジネスやパーティーなどでお金持ちの家におじゃましてみると、ある面白い共通点がある。それは、彼らの自宅には驚くほどモノが少ないということだ。高級な家具や家電製品は見当たらず、仕事や日常生活を送る上での、必要最低限のモノしか置いていない。ある資産家は持っていた膨大な本を、業者に依頼してすべて電子書籍化してしまったのだという。

なぜお金持ちはミニマリストばかりなのだろうか?

モノを持つとモノに所有される

ミニマリスト
(画像=Photographee.eu / Shutterstock.com)

本質的には、人はモノを持てば持つほど、モノに所有されてしまう。多くの人は「自分がモノを所有している」という感覚を持っているが、実際にはその逆なのである。

例えば住宅や車などがその最たるものだろう。筆者が昔、会社員をやっている頃、同い年の同僚がマイホームを買い、周囲からおめでとうと言われていた。しかし彼は、「これでローンを返済する30年間、オレには見えない鎖が足につけられた」と自虐的に話していた。毎月、10万円ほどローン返済をすると言う。万が一にでも、返済が滞ってしまう事態は避けなければいけない。そうなると、今の会社を辞めて起業したり、資産運用を始めたり、転職をするなど、今の環境を変える行動はすべてリスクになってしまうというわけだ。

また、自動車なども同じく人間を所有するモノの代表格である。郊外に住んで自動車を持ってしまうと、駅チカの都心に住むという選択肢を取りづらくなる。自動車を持っているという状況と相反するからである。このようにモノを持つことで、そのモノ自体に人は支配されてしまう側面を持っているのだ。

お金は自由を得るためのツール

「お金=幸せ」ではないが、お金は人生の選択肢を広げて、束縛を解き放ち自由を得るためのツールであることは間違いない。子供によりよい教育環境を与えるために、お金の力で進学の選択肢を広げることもできるだろう。投資やネットビジネスから収益を得る資産を持つことで、好きな場所に住み、会社に縛られずに生活をすることも可能だ。筆者も起業や投資を経て東京から地方へ移住したが、収益源をインターネット上に持っていることで、地方移住による経済的デメリットは感じない。

そんな選択肢と自由を得るお金をお金持ちはたくさん持っていることになる。彼らは束縛を嫌い、自由を維持することを心から求め続ける人種である。そうでなければ、起業や投資をすることはないだろう。

お金を使ってモノを持たないミニマリスト生活を実現する

自由を愛するお金持ちは、モノを持たないためにお金を使う人も多い。

コンサルタントのC氏は、長くタワーマンションに住んでいたが、現在はホテルレジデンスに住まいを移した。これにより住居費は上がってしまったが、彼はよりミニマリストになった。ホテルレジデンスなので、掃除や家事、洗濯といったサービスを受けられることになったので、冷蔵庫や掃除機、洗濯機や乾燥機も手放すことができたと言う。食事はホテルや外食で済ませることにより、自炊や後片付け、食器棚も不要というライフスタイルである。モノを持たないことで得た時間を使って、彼は割高なライフスタイル以上のお金を得ている。

ミニマリストはモノを買わなくて済むので割安と思われがちだが、一切の家事から開放されるレベルとなると、実はお金を持っている人でなければ実現不可能なのだ。彼らがミニマリストを追求してでもモノを持とうとしないのは、モノを持つとモノに所有され、自由を奪われることを嫌うからである。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)