最近ではアライアンスによって課題を解決する企業が多く見られる。特に成長スピードやリソース不足、コスト面で悩みを抱えている場合はぜひ選択肢として検討したい。本記事でアライアンスの概要やポイントを理解し、自社に適しているか慎重に判断していこう。

目次

  1. 「アライアンス」の意味とは?類義語や関連ワードも合わせてチェック
    1. アライアンスの使い方の例
    2. アライアンスの類義語や関連ワード
    3. 請負、業務資本提携との違い
    4. アライアンスとM&Aの違い
  2. アライアンスの3つの種類
    1. 1.技術提携
    2. 2.生産提携
    3. 3.販売提携
  3. 企業がアライアンスを実施する目的とメリット
    1. 1.新しい製品やサービスを開発しやすくなる
    2. 2.スムーズなシェア拡大を目指せる
    3. 3.さまざまな経営コストの削減につながる
  4. アライアンスを実施するデメリットと注意点
    1. 1.成果が保証された契約ではない
    2. 2.情報漏えいのリスクが高まる
    3. 3.技術やノウハウが流出することも
  5. 事例から学ぶアライアンスを成功させるポイント
    1. 【事例1】業界内の課題解決を目的とした同業種でのアライアンス
    2. 【事例2】専門家を通して現地の市場調査を徹底
  6. アライアンスに関するQ&A
    1. Q.アライアンスとは?
    2. Q.アライアンス契約とはどのような契約?
    3. Q.アライアンスのメリットは?
    4. Q.アライアンスのデメリットは?
    5. Q.アライアンスとM&Aの違いは?
  7. パートナー探しと契約は慎重に進めよう
アライアンスの意味とは?実施する目的やメリット・デメリット、事例から学ぶ成功のポイントまで紹介
(画像=Monet/stock.adobe.com)

「アライアンス」の意味とは?類義語や関連ワードも合わせてチェック

ビジネスの場における「アライアンス(直訳:同盟、縁組)」とは、複数の企業が利益を生み出すために協力関係を築くことを指す。具体的なものとしては、技術提携や販売提携をイメージすると分かりやすいはずだ。

アライアンスは多くの企業から経営戦略として注目されており、最近では中小企業同士で実施する光景も珍しくなくなった。

アライアンスの使い方の例

アライアンスはさまざまな場面で使用されるため、以下では使い方の例をいくつか紹介しよう。

【例文1】最近では多くの企業がアライアンスを計画している。
【例文2】アライアンスを結んだことで、開発スピードが著しくアップした。
【例文3】シナジー効果を実現させるために、A社とB社はアライアンスを組んだ。
【例文4】十分な議論を重ねたことで、アライアンス全体がうまく機能した。
【例文5】自社に最適なアライアンス企業を募集した。

上記の【例文1】~【例文3】は、いずれも「提携」や「協力関係」の意味合いでアライアンスが使われている。一方で【例文4】や【例文5】のように、協力関係を結んだグループそのものをアライアンスと言うこともある。

アライアンスの類義語や関連ワード

アライアンスには多くの類義語や関連ワードがあるため、ほかの言葉と混同してしまうケースも少なくない。そこで以下では、特に押さえておきたい類義語や関連ワードをまとめた。

・アライアンスの類義語…同盟、連合、提携、協定、協力、協業、縁組など。
・アライアンスの言い換え…日本語では「企業同盟」や「企業提携」と訳すことが多い。

アライアンスの意味とは?実施する目的やメリット・デメリット、事例から学ぶ成功のポイントまで紹介

アライアンスはすでに浸透しているビジネス用語であり、日本でも1990年代後半から一般社会で使われ始めた。交渉の場で使用されることも多いため、特に関連ワードの意味はきちんと理解しておこう。

請負、業務資本提携との違い

アライアンスの関連ワードについては、「M&A」「請負」「業務資本提携」との違いも押さえておきたい。主な違いとしては、契約を結ぶ企業同士の関係性が挙げられる。元請けと下請けに分けられる請負には、企業間の上下関係が存在する。業務資本提携についても、基本的には株式交換や株式売買などによって提携が進められるため、親会社と子会社などの上下関係が生じてくる。

一方で、アライアンスの当事者同士は対等な協力関係(パートナー)にあたるため、資本力などに違いがあっても上下関係は存在しない。ただし、広義のアライアンスは「複数社が協力関係を築くこと」といった意味なので、場合によっては業務資本提携などもアライアンスに含まれることがある。

アライアンスとM&Aの違い

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsのことで、日本語で「合併と買収」を表す言葉だ。ある企業が他の企業を買収・売却したり、合併・分割したりすることを指す。M&Aには、大きく分けて「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの方法がある。

・株式譲渡
株式譲渡とは、売り手企業の株式を買収会社に譲渡する方法である。そのため売り手企業は、買収会社に合併されたり買収会社の子会社になったりすることが多い。

・事業譲渡
一方、事業譲渡は会社全体ではなく一部の事業のみを買収会社に譲渡する方法である。そのため売り手企業の本体は、そのまま独立して存続することになる。

アライアンスとM&Aの大きな違いは、その効果と資本の移動だ。それぞれの違いは、次のようになっている。

・効果の違い
アライアンスとM&Aは、どちらも実施することで経営基盤の強化やシェア拡大などの効果がある。それに加えてM&Aでは、売り手企業の後継者問題の解決といった効果ももたらす。

・資本の移動の違い
アライアンスは、資本移動を伴わない協力関係だが、M&Aは資本の移動を伴う協力関係である。またアライアンスは資本移動を伴わないため、当事者同士は対等な協力関係(パートナー)だ。一方でM&Aは、買収会社のほうが大きい力を持つことが多い。

アライアンスの3つの種類

アライアンスにはさまざまな形があるものの、大別すると以下の3つの形態に分けられる。

1.技術提携

アライアンスのうち、優秀な開発者や技術を共有することでイノベーションを生み出すものは技術提携と呼ばれる。自社に不足している経営資源をカバーできる方法なので、技術提携を結ぶと開発スピードが飛躍的にアップする可能性がある。

そのほか、他社の技術を吸収できる点や、開発リスクを分散できる点も技術提携の大きなメリットだ。ただし、相手側にもメリットがなければ契約には結びつかないので、技術提携を結ぶには高い技術やノウハウ、貴重な経営資源などが求められる。

2.生産提携

生産提携とは、生産性のアップを目的としてパートナー企業に製造工程の一部を委託するアライアンスのこと。不足した経営資源を補えるため、人材や高額な設備を入手できない企業にとっては貴重な経営戦略となり得る。

また、生産提携は受注側にもメリットがいくつかあり、設備稼働率が高まると売上の増加やコストダウンにつながる。ただし、発注側・受注側の連携がポイントになる手法なので、発注側が適切な指示を出せるようにしっかりと話し合うことが重要だ。

3.販売提携

3つ目の販売提携は、お互いの販売チャネルを共有し合う手法だ。例えば、日本企業が海外企業と販売提携を結ぶと、新たな市場をスムーズに開拓できる可能性が高まる。

ほかにもホームページやSNS、ECサイトを活用した販促活動など、販売提携にもさまざまな形がある。市場の開拓や拡大に役立つ手法なので、営業力や販促力が不足している企業はぜひ検討しておきたい。

企業がアライアンスを実施する目的とメリット

ここからは、企業がアライアンスを実施する主な目的とメリットを解説していく。以下の点に魅力を感じる企業は、積極的にアライアンスの計画を立てていこう。

1.新しい製品やサービスを開発しやすくなる

アライアンスを行う目的として最も多いのは、製品開発のスピードアップだ。相手企業を慎重にピックアップすれば、必要な設備や人的リソースをスムーズに獲得できるため、最近ではイノベーションを実現する手法として注目されている。

また、パートナーと共同開発の体制を整えることで、「生産性をさらに強化しよう」と考える経営者も多い。例えば、経験の少ない中小企業が大企業と提携を結ぶと、必要なノウハウを短期間で習得できる可能性がある。

2.スムーズなシェア拡大を目指せる

マーケットシェアを拡大させるために、地方企業や海外企業と販売提携を結ぶケースも多く見られる。特に海外企業との提携は、情報が不足しがちな海外進出の足がかりとなるので、アライアンスは企業のグローバル化にも役立つ戦略と言える。

ちなみに、株式の譲渡や交換が発生しないアライアンスは、業務資本提携や子会社化に比べると契約を解消しやすい。お互いにメリットがなければパートナー関係を解消できるため、もし海外進出などに失敗しても迅速に撤退できるだろう。

3.さまざまな経営コストの削減につながる

さまざまな経営コストを抑えられる点も、アライアンスの大きなメリットである。例えば、人的リソースが豊富な企業と提携を結ぶと、新たな人材を雇用するためのコストや、新入社員の教育コストなどを抑えられる。

ほかにも支店を構えるための費用や設備資金、販促費など、アライアンスによって軽減できるコストは少なくない。さらに、業務資本提携やM&Aより低コストで実現できる点も経営者にとっては大きなメリットになるだろう。

アライアンスを実施するデメリットと注意点

アライアンスには注意すべきリスクも潜んでいるため、安易に実施を決めることは危険だ。ここからはアライアンスのデメリットと注意点をまとめたので、計画を立てる前にしっかりとチェックしていこう。

1.成果が保証された契約ではない

アライアンスはあくまで協力関係を築くだけの契約なので、何かしらの成果が保証されるわけではない。共同開発などがスムーズに進まなければ、費やした時間やコストが無駄になる可能性も十分に考えられる。

また、パートナーに期待されている動きができなかった場合に、契約を解消されるリスクがある点も気をつけておきたいポイントだ。「双方のメリット」が前提になる戦略であるため、どちらか一方のメリットがなくなった時点で協力関係を築くことは難しくなる。

2.情報漏えいのリスクが高まる

企業間で顧客データやシステムを共有すると、必然的に情報漏えいのリスクが高まる。脆弱なセキュリティが原因で漏えいするケースも存在するため、パートナーに悪意がないからと言って安心はできない。

したがって、アライアンス契約を結ぶ前には、相手企業の信頼性とセキュリティ体制を細かくチェックしておく必要がある。

3.技術やノウハウが流出することも

技術やノウハウの流出リスクも、アライアンス契約を結ぶ前に注意しておきたいポイントだ。

共同開発によって他社との距離が近づくと、自社の技術などを盗用されてしまうかもしれない。パートナーのセキュリティが脆弱であれば、さらにその技術が外部に漏えいしてしまう恐れもある。

アライアンスの意味とは?実施する目的やメリット・デメリット、事例から学ぶ成功のポイントまで紹介

アライアンスには魅力的なメリットがある一方で、深刻なリスクもいくつか潜んでいる。中でも情報や技術の漏えいは大きなトラブルにつながりやすいため、契約に秘密保持条項を含めることは必須だ。

状況が変わればパートナーとの関係性にも変化が生じるため、仮に信用できる相手企業が見つかったとしても、秘密保持条項は契約に必ず含めるようにしよう。

事例から学ぶアライアンスを成功させるポイント

アライアンスによって自社がもつ課題を解決するには、相手企業を慎重に選ぶ必要がある。以下ではアライアンスの事例を2つまとめたので、自社のケースと照らし合わせながら成功のポイントを押さえていこう。

【事例1】業界内の課題解決を目的とした同業種でのアライアンス

建設業を営む「竹中工務店」と「鹿島」は、建設市場の縮小に備えることを目的として2020年1月に技術提携を発表した。いずれも業界内では大手にあたる企業だが、業務効率化や省人化を研究するために包括的な連携を組んでいる。

また、両社はほかの大手にも呼びかけをしており、2020年8月には「清水建設」も参画。このまま技術提携の規模が拡大し、各社がスムーズに情報共有できる環境が整えば、国内の建築業界は飛躍的にレベルアップするかもしれない。

ライバル企業との連携に抵抗をもつ経営者ももちろんいるが、同業種でのアライアンスは業界全体の課題解決につながる。また、組み合わせ次第では新たなイノベーションが生み出され、世界的な競争力を得られる可能性もあるだろう。

ただし、アライアンス契約を結んでも同業他社は競合にあたるので、協力し合う範囲は慎重に設定することが重要だ。

【事例2】専門家を通して現地の市場調査を徹底

中堅医療機器メーカーであるA社は、新規進出国における売上が低迷していた。そこでA社はコンサルタント会社を通して、現地にチャネルをもつ有力海外企業と販売提携を結んだ。

契約の締結後、A社は新たな代理店となるパートナーに販売先を委譲。低迷していた既存代理店には営業権を買い取ってもらい、販売チャネルをより強化することに成功した。

この事例が成功を収めた要因は、進出国の市場調査を徹底した点にある。有力かつ優良な代理店を見極めるために、A社はコンサルタント会社を利用しながら慎重に経営戦略を立てた。

パートナーの質はアライアンスの結果を大きく左右するので、もし相手探しに不安を感じている場合は、無理をせずに専門家を頼ることも検討しよう。

アライアンスに関するQ&A

Q.アライアンスとは?

A.アライアンスは、さまざまなシーンで使われる言葉である。ビジネスの場における「アライアンス」とは、複数の企業が経営基盤の強化やシェアの拡大などのメリットを生み出すために協力関係を築くことを指す。またアライアンスは、資本移動を伴わないことも特徴の一つだ。そのため当事者同士は、対等な協力関係(パートナー)となる。

アライアンスと比較される企業間の連携には「M&A」「請負」「業務資本提携」などがある。アライアンスとこれらの連携の違いは、契約を結ぶ企業同士の関係性だ。アライアンスは、当事者同士が対等であるのに対し、「M&A」「請負」「業務資本提携」ではどちらか一方の企業の力が強い傾向である。対等な関係を築くならば、アライアンスが最適だ。

なおアライアンスには、大別すると主に技術提携や生産連携、販売提携の3つの形態に分けられる。

Q.アライアンス契約とはどのような契約?

A.アライアンス契約とは、簡単にいうと複数の企業がアライアンスを組む際に取り交わす契約のこと。アライアンスは、お互いの企業にシェアの拡大などの多くのメリットを与えるために行うものであり、当事者それぞれにメリットがあるように行わないといけない。そのためアライアンス契約を交わす際には、どちらか一方にのみメリットがないかなどの確認が必要だ。

しかし「どこまでの業務を連携するのか」「どちらがどのような人材や資産を提供するのか」など細部にわたりさまざまな取り決めを行う必要がある。そこでアライアンスの取り決めを定め、法的な効力を持たせるために当事者同士でアライアンス契約を締結。アライアンスの契約書では「アライアンスの目的」「対象となる業務」「使用料」「守秘義務・秘密保持」「契約期間」などを定める。

Q.アライアンスのメリットは?

A.アライアンスの代表的なメリットは「新しい製品やサービスを開発しやすくなる」「スムーズなシェア拡大を目指せる」「さまざまな経営コストの削減につながる」の3つだ。

・新しい製品やサービスを開発しやすくなる
アライアンスを行えば、必要な設備や人的リソースをスムーズに獲得できる。例えば当事者同士が所有しているノウハウや技術を連携できるため、短期間で新しい製品やサービスが開発しやすくなる。

・スムーズなシェア拡大を目指せる
「得意とする分野が異なっている」「分野が同じでも事業展開している地域が異なる」といった場合などは、アライアンスをすることでスムーズなシェア拡大を目指すことが期待できる。例えば日本の企業が海外企業とアライアンスを行えば、海外進出の足がかりができ企業のグローバル化、海外へのスムーズなシェア拡大に役立つ。

・さまざまな経営コストの削減につながる
アライアンスでは、お互いの人材や設備などを提供する。そこで新たな人材を雇用するためのコストや、設備を購入するための資金、販促費などのコストを削減することが期待できるだろう。

Q.アライアンスのデメリットは?

A.アライアンスの代表的なデメリットは「成果が保証された契約ではない」「情報漏えいのリスクが高まる」「技術やノウハウが流出する可能性がある」の3つだ。

・成果が保証された契約ではない
アライアンスは、あくまで協力関係を築くための契約であり、成果が保証されたものではない。アライアンスが失敗したら費やした時間やコストが無駄になる可能性もある。

・情報漏えいのリスクが高まる
企業間でさまざまな情報を共有すると必然的に情報漏えいのリスクが高まる。パートナーに悪意がないからといっても安心できない。これらを踏まえてアライアンス契約を結ぶ前には、相手企業のセキュリティ体制などを確認しておく必要がある。

・技術やノウハウが流出する可能性がある
アライアンスでは、お互いにさまざまな技術やノウハウを提供し合うが、自社の技術などを盗用されてしまう可能性も出てくる。そのためアライアンス契約では、技術やノウハウの使用範囲なども決めておくことが必要だ。

Q.アライアンスとM&Aの違いは?

A.M&Aとは、合併と買収を表す言葉だ。ある企業がほかの企業を買収や売却をしたり、合併や分割したりすることを指す。アライアンスとM&Aの大きな違いは、その効果と資本の移動だ。それぞれの違いは、次のようになっている。

・効果の違い
アライアンスとM&Aは、どちらも実施することで経営基盤の強化などの多くの効果がある。またM&Aでは、売り手企業の後継者問題の解決ができる効果が期待できるだろう。

・資本の移動の違い
アライアンスは、資本移動を伴わない協力関係である一方、M&Aは資本の移動を伴う協力関係である。またアライアンスは資本移動を伴わないため、当事者同士は対等な協力関係であるが、M&Aでは買収会社のほうが大きい力を持つことが多い。

パートナー探しと契約は慎重に進めよう

アライアンスは企業のさまざまな課題を解決に導く手法であり、事業拡大やイノベーションによって大きなビジネスチャンスを得た例も少なくない。ただし、情報漏えいなどのリスクは軽視できないため、特に「パートナー探し」と「契約」は慎重に進めるべきだ。

業種によっては専門的な知識やスキルが必要になるので、もしこれらの工程で悩んだ場合は専門家への相談をおすすめする。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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