中国、教育課程に「習近平思想」で洗脳強化? 独裁主義国家への歩み止まらず
(画像=oxinoxi/stock.adobe.com)

中国教育省は2021年8月、国内の小学校から大学院までの教育課程において、習近平の共産主義思想を教える国家プログラムを導入すると発表した。ウイグルや香港での言論弾圧が国際問題として議論を呼ぶ中、教育面でも国家の思想統一がさらに進むことが予想される。

創立100年を迎えた中国共産党と、それを率いる習近平国家主席の「独立主義国家」への野望は、決して果てることがない。

教育課程に「習近平思想」採用

新年度(9月)に合わせて改訂された新しい教科書は、習近平思想がふんだんに盛り込まれた内容だ。習国家主席の政治的イデオロギーを義務教育から徹底して叩き込み、愛国心を養う意図である。政府が発表した新教育カリキュラムのガイダンスによると、小学校の教師には「党、国、社会主義を愛する種を若者の心に植え付ける」ことが求められる。

ガーディアン紙の報道によると、「教科書は習近平国家主席の力強い引用文と笑顔の写真が掲載されており、小学生向けに中国文明の功績や貧困削減、さらに新型コロナとの戦いにおける共産党の役割について教え込む章が設けられている」という。

「習近平思想」のベースは、2018年に発表された「最高指導者の政治哲学」で、共産主義の理想を強調する14の主要な原則で構成されたものだ。「完全かつ深い改革」「新たな発展のアイデアの追求」「人と自然の調和のとれた生活」「人民軍に対する党の絶対的権威」「一国二制度と祖国との統一」などを内包する。

これらを若者にも分かりやすく説くために、低学年の教科書では「習近平おじいさん」という呼び名を使い、親しみやすさを醸し出している。年長の子ども向けの教科書では、「現代社会主義大国」を実現するための道のりについて説く一方で、「強い国には強い軍隊が必要」「台湾独立勢力の分裂工作を打ち砕く」といった、自国の軍事力の重要性についても触れている。

独裁主義国家目指す 習近平の野望

教育省は声明の中で新カリキュラムの目的について、「(中国における)社会主義の構築者と後継者を、道徳的、知的、物理的、美的根拠を総合的に育成すること」と述べた。

しかし、習政権の真の狙いは、2022年の共産党大会での3期入りはもちろんのこと、企業から教育機関、文化施設まであらゆる分野において、中国共産党の役割を拡大することだと推測される。また、主要国が中国の包囲網を強化・拡大する中、思想教育を強化して国内における権力を一点に集中・強化させることで、「他国に決して屈することないリーダー」としての求心力を高める狙いもあるだろう。

今回の教育改革は、他国に驚きをもって受け止められている反面、ある程度予想通りの筋書きとの見方もある。2018年には習国家主席の思想が憲法に明記されたほか、任期制限が改正案により撤退されるなど、同氏の権力は拡大の勢いを増している。また、「習近平思想」は発表以来すでに一部の大学や課外活動を開催している政治青年団の間で導入されており、それほど目新しい動きではない。

中国の研究者アダム・ニィ氏は「中国は長い間、愛国心の育成と政治教育に注力してきたが、新しいカリキュラムはより大きなナショナリズムの感覚を植え付けることと同じくらい、習国家主席のカルト的支持を促進することが目的である」とフランス通信社に語った。

また、ジョージア工科大学国際問題科ワン・フェイリン教授は、教科書は「毛沢東のような強力な指導者の個人崇拝に賭けるという、共産党の努力の一例である」との見解を示した。

SNSでは否定的なコメントも

同国の過去を振り返ると、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平という5人の共産党指導者がそれぞれ独自の政治哲学をもっていたが、それを国民に強制するための政治的地位に上り詰めたのは、毛沢東と習国家主席のみだ。

しかし、毛沢東政権から40年が経過し、現在の中国は当時の社会背景から大きく変化を遂げたことを理由に、「現代社会において今回の教育改革はあまり歓迎されず、真剣に受けとめられない可能性もある」とフェイリン教授は分析している。

これを裏付けるかのように、SNS上では「洗脳は子供時代から始まる」「拒絶することはできるのか」といった、否定的なコメントを見かける。しかし、一部の保護者は不満を露わにしつつも、海外メディアの取材がトラブルにつながることを懸念して、固く口を閉ざしているという。

独裁主義国家への歩み、止まらず

7月1日に「100周年式典」が北京で開催され、習国家主席は1時間におよぶ演説を行った。その内容は、現代中国における共産党の役割の重要性を改めて強調し、「中国に対する虐待や抑圧、支配は決して許されない」と、米国を中心とする他国の圧力をけん制するものだった。

BBCの報道によると、同国の映画館では4月以降、週に2回以上プロパガンダ作品を放映することが義務付けられたほか、創立100周年を祝うドラマを1年で100本放送する計画があるなど、強制的な祝賀ムード一色だという。たとえ世界中を敵に回しても、共産党は最大の野望である独裁主義国家への歩みを止めることはないだろう。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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